1984年12月12日、「水曜ロードショー」枠においてのテレフィーチャー作品は、当時“ロス疑惑”として連日ワイドーショーやら週刊誌を賑わせていた事件のアメリカ側の担当捜査官、ジミー佐古田の自伝的小説を原作にした、草刈正雄主演の『ロス市警アジア特捜隊』からスタートする。


この作品は、当時『太陽にほえろ!』を制作している東宝が手がけた。監督は個人的に刑事ドラマをハードに撮らせたらピカイチだと思う澤田幸弘、脚本は共同で小川英と氏の弟子である杉昌英という『太陽にほえろ!』のおなじみの手法、音楽は大野克夫、そして共演者に死んだはずだよぉゴリさんと、結構『太陽にほえろ!』度が高い。


カーチェイスや派手な銃撃戦をふんだんに盛り込んだ作品ではあったが、じつは時代に逆行したものであった。80年代半ばは軽薄短小の時代と言われ、バラエティ番組が闊歩していて、70年代後半にあれだけ流行っていたアクション&刑事ドラマは激減していたからだ。


1984年10月期のテレビにおけるアクション&刑事ドラマ一覧

月曜日 なし
火曜日 なし
水曜日 テレ朝『特捜最前線』
木曜日 なし
金曜日 日テレ『太陽にほえろ!』、●テレ朝『ザ・ハングマン4』
土曜日 なし
日曜日 ●テレ朝『私鉄沿線97分署』

●印は1984年秋からの新番組


唯一の非刑事もののアクションドラマである『ザ・ハングマン4』は、名高達郎が要望したハングガンというガンアクションを取り入れたりして奮闘していたものの、他の刑事ドラマは、=アクションとはいかなくなってきている。


『西部警察 PARTⅢ』の後番組である『私鉄沿線97分署』は、ご近所で起きる下着泥棒の捜査をコニタンと新沼謙治が1時間かけてのんびりとすすめるような番組だったし、『太陽にほえろ!』は新刑事に『西部警察 PARTⅢ』が終わってあぶれた石原良純をコネで拾ってきたが、新鮮みはないわ、眉毛だわ、それからコンピュータ捜査要員という設定も手伝って憧れの対象にもならなかった。


そして、この頃は『特捜最前線』は視聴率的には黄金期迎えていたけど、扱う題材は東北出身者による衝動殺人やコンピューターが演歌歌うかどうかを捜査するとか、この『ロス市警アジア特捜隊』とバッティングしていた日のサブタイトルなんて、独占市場のレイプネタでずばり「女性の犯罪体験手記より レイプ・白いハンカチの秘密」と、なかなかお子様には敷居が高かった。


それでもやはり、刑事ドラマといえばカーチェイスや派手な銃撃戦が炸裂するものを求める声は多々あり、映画的な作品ということで、そういったものに応えた作品になったのであろう。この後、一時的ではあるが、1985年4月期からはアクション&刑事ドラマは増えてはいる。


1985年4月期のテレビにおけるアクション&刑事ドラマ一覧

月曜日 なし
火曜日 なし
水曜日 テレ朝『特捜最前線』
木曜日 
金曜日 日テレ『太陽にほえろ!』、●テレ朝『特命刑事 ザ・コップ』
土曜日 ●TBS『スーパーポリス』
日曜日 テレ朝『私鉄沿線97分署』、●日テレ『刑事物語'85』


●印は1985年4月からの新番組


さて、件のテレフィーチャー作品に話は戻すとして、放送4ヶ月前の「TVガイド」1984年8月17日号の記事によれば、具体化している作品として、すでに制作が開始されていたこの『ロス市警アジア特捜隊』のほかに、アニメによる横山光輝原作『三国志』(1985年3月20日放送)と『大江戸神仙伝』が挙げられていて、面白いのはその『大江戸神仙伝』が、監督・藤田敏八だったものの、主演はこの段階では、なんと藤竜也だったのである。


藤田敏八と藤竜也と言えば、日活がロマンポルノに移行する前の末期に撮っていた『野良猫ロック』シリーズで度々組んだ関係であるからして、そこらへんから持ち上がったのだろうか。しかし、結局は主演の速見洋介役は、滝田栄になっていく。たしかに、藤竜也も速見洋介も女にモテまくるけど、やはりイメージとしては滝田栄が似合うような気がする。


次回はようやく『大江戸神仙伝』自体のことが書けるかな。