昔のテレビ番組好きの自分にとって、好きな昔のドラマを挙げるならば、まずは『俺たちは天使だ!』。第1回はこれについて語っていきたい。

このドラマは、1995年のLD、2001年のDVD、2010年のBDとソフトが出る度に買い換えているほどに好きだというか、もう愛している(笑)。もちろん、初ソフト化される1995年以前の、関東地区で最後の再放送となった1988年深夜の「ナイトスクリーン」枠から遡り、1980年にやった初めての再放送まで機会があれば常に観続けてた記憶がある。なお、1979年の本放送時は、裏番組のNHK大河ドラマ『草燃える』を当時一家に3台もテレビがあったというのに全部のテレビで観ていたので観られなかった。なぜ、そんなことをしていたのか?、それがNHK大河ドラマだから・・・。

1979年4月期のテレビにおけるアクション&刑事ドラマ一覧

月曜日 テレ朝●『鉄道公安官』、フジ『大空港』、東京12●『ザ・スーパーガール』
火曜日 日テレ『大都会 PARTⅢ』、東京12●『おやこ刑事』
水曜日 TBS『明日の刑事』、テレ朝『特捜最前線』
木曜日 なし
金曜日 日テレ『太陽にほえろ!』、TBS『七人の刑事』
土曜日 TBS『Gメン'75』、日テレ●『熱中時代 刑事編』
日曜日 日テレ●『俺たちは天使だ!』、フジ●『刑事鉄平』

●印は1979年4月からの新番組

『ザ・スーパーガール』と『俺たちは天使だ!』以外はすべて刑事ドラマ。なんと週11作品が列挙されているだけではなく、民放5局すべてで放送している。この状態は、1980年3月期まで続くことから、まさにこの手のドラマのピークと言えよう。そういった中で『俺たちは天使だ!』は作られた。

『俺たちは天使だ!』の制作までの流れは、やはり『太陽にほえろ!』ありきとして、そこから前年1978年4月の火曜9時枠『大追跡』で沖雅也と柴田恭兵、長谷直美が初共演し、続く10月からの『姿三四郎』では、勝野洋主演で、沖雅也は勝野のライバルであり、ヒロインの竹下景子を奪おうとするなど、めずらしく敵役を演じる。こちらにも柴田恭兵、長谷直美が出ていて、さらに『太陽にほえろ!』つながりで山さん役の露口茂も出ている。

そして1979年4月から『俺たちは天使だ!』が始まるのだが、当初は新選組を舞台にした幕末青春物ドラマが予定されていた。コメディー要素を鑑みると後年の1996年に同じ日本テレビ系で放送される浜田雅功主演の『竜馬におまかせ!』のような作りになったのだろうか。しかし、時代劇はNGとなり制作は頓挫。でも、キャストのスケジュール押さえていたので、急遽現代劇に変更した次第。この理由としては、『姿三四郎』は明治時代を舞台にしていたから、今度は幕末にしようとするも、裏番組に同じ時代劇のNHK『草燃える』、テレビ朝日『伝七捕物帳』があったりしてバッティングしまって恐れたのだろうか。ちなみに、この時期のテレビドラマにおける時代劇は、刑事ドラマの制作本数を超える週14作品が居並ぶなど、アクション&刑事ドラマだけではなくテレビドラマ全体が花盛りの時代であった。

『TVガイド』1979年4月6日号「ジャンル別4月新番組全紹介」より

『俺たちは天使だ!』15日 日曜夜8:00
すごいダンディー・ボーイという設定の沖雅也。約四十着の豪華なスーツをとっかえひっかえ毎回最低二着は披露する。すべて、イブ・サンローランとの衣装タイアップ。一着平均、二十万円から三十万円ナリ。中には五十万円を超える物もある。「俺の出演料で何着?買えるかな」とつい、ぼやきも・・・。(以上、原文通り)

沖雅也は『俺たちは天使だ!』が終了する1979年秋からは、当時の流行語、“翔んでる女”をテーマにした『体験時代』で、主人公・相本久美子の相手役のミニコミ誌記者を麻生雅人のノリのままで演じた後、1980年春に『太陽にほえろ!』に復帰する。

当時、『太陽にほえろ!』は裏番組のTBS『3年B組 金八先生』(第1シリーズ)の人気に圧されていて落ち目になっていたため、テコ入れとして、殉職ではなくて他の警察署へ転属となっていた人気のスコッチ刑事を3年ぶりに復帰させたのである(なお、復帰までの間、二回スコッチ刑事役でゲスト出演している)。神田正輝、渡辺徹、三田村邦彦などが加入してアイドル路線のミワカントリオが形成されるまで、腐ったミカン攻撃で桜中学シリーズに苦戦を強いられるものの、沖の復帰はまずはその反撃の狼煙となったのは言うまでもない。

こう振り返ってみると、やはり1979年秋から翌1980年春にかけての沖のキャリアは、東京12チャンネルだったからか、主役に中途半端な人気の相本久美子を抜擢したからか、当時一番テレビなんて見ない女子大生の共感を集めたかったからか、低視聴率で打ち切りになった『体験時代』なんかに使われるよりも、『俺たちは天使だ!』のドラマの勢いそのままに映画版作って使われた方が良かったのではないかと想う。

と言うのは、沖雅也扮する麻生雅人は元刑事で、政界の黒幕への強引な捜査の行き過ぎで辞職に追い込まれて探偵家業に転じたという設定。第6話では、その因縁持つ政界の黒幕と再び対決し、結局は痛み分けで勝負が付かないままになったものの、一話完結の『俺たちは天使だ!』は11月に大団円な最終回を迎えた。

もちろん、PART 2を期待する声は当時からあったが、残念ながらそれに至らなかった。主だった原因は、このドラマ花盛りの時代、さらにレギュラーキャストの誰もが売れっ子だっただけに、同じ面子が再び揃えられなかったことである。

現在のように、テレビドラマから転じた映画版が作られることがほぼ皆無であったが、ただ自分は多少なりとも雰囲気が違ってくるPART 2にするよりは、仇敵である政界の黒幕との決着付ける『俺たちは天使だ! THE MOVIE』作って、それで華々しく最後にしてほしかったナァ。



俺たちは天使だ! Vol.2 [Blu-ray]/沖雅也,多岐川裕美,渡辺篤史
¥7,350
Amazon.co.jp

俺たちは天使だ! Vol.3 [Blu-ray]/沖雅也,多岐川裕美,渡辺篤史
¥6,300
Amazon.co.jp