メンタルヘルス予防論 -三次予防編4 | 毎日が実験。人の気持ちがわかる人になるブログ

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人の気持ちがわかるようになりたい人に教えています。
趣味はビールを飲むことと、和服を着ることと、自分の子を観察すること。
聴くチカラ検定の開発担当。

「ストレス耐性の向上」

さて、うつは再発しやすい病気だと冒頭に申しましたが、職場環境だけを整備すれば万全というとそうではありません。
本人が努力して、ストレス耐性を向上させることも大切です。
物の見方・考え方はひとそれぞれ尊重されるべきですが、うつやパニック障害などの神経症に関しては「なりやすい性格」というのはあります。

同じ人でも人生の中で、体調や状況でポジティブなときもあるでしょうしネガティブな部分が強く出るときもありますから、正確には、性格そのものというよりもその時の傾向といったほうがよいのかもしれません。
うつなどになりやすい要素というのは、一言でいうと、ネガティブにとらえる傾向のことです。
うつになると、これが加速して視野が狭くなり「絶対に自分が悪い」「絶対にあの人が悪い」と悪いところばかりが見えてきてますますつらくなります。

また「言いたいことが言えない」「我慢しやすい」「一人でしょいこむ」というのも危険要素です。
これらは日本人にはよく当てはまる気質なので、日本のうつ発症や自殺率は長年世界でも高水準を維持しています。

ネガティブにとらえる傾向について、少し詳しく見てみましょう。
人は誰でも多かれ少なかれ、非合理的で自分を苦しめる考えを持っています。ここでは認知療法という心理技法で説明されている非合理的思考の例をあげてみます。

・すべきだ、~しなければならない思考
自分自身や他社、外の出来事に対して、かたくなに基準を指示したり、実際には無理なくらいにコントロールできるはずだと思いこんで、命令的な考えをもつこと。
・全か無か(白黒、絶対的)思考
複雑な、あるいは連続的な結果を、訳もなく両極端に分けてしまうこと。(例:「これは成功するか完全に失敗するかのどちらかだ」)
・過剰な一般化
1回だけ、あるいはごくわずかな経験で得られた事実から、より広い意味をもつまちがった結論にいたってしまうこと。明らかに否定的な出来事や経験の印象が極端に増幅されてしまうことを「破局的思考」ともいう。(例:「もしパニック発作がきたら私はすべてのコントロールを失って気が狂ってしまう[あるいは死んでしま]」)
・感情的決めつけ
感情状態だけにもとづいて結論ないし推論してしまうこと。(例:「私はこう感じた、だから私はこうなのである」)
・心の先読み
他人の考え・意図・あるいは動機に対して、否定的に推論すること。
・ラベリング
人あるいは物事の好ましくない特徴によって、その人や物事を決めつけてしまうこと。(例:「私はバレエにまちがって選ばれてしまった、だから私はまちがった人間だ」)
・個人化
ある出来事・状況・行動などに際して、それが特別に、あるいは個人的に、自分の否定的な面を示していると考えてしまうこと。
・選択的否定的焦点化(心のフィルター)
ほかに中立的あるいは肯定的な情報があるのに、それを思い出したり見定めることをしないで、望ましくない、あるいは否定的な出来事・記憶・暗示などにばかりに焦点をあててしまうこと。
・認知的逃避
快くない考え・感じ・出来事などを、途方もなく克服できないものだと誤認して、積極的に抑圧したり避けたりすること。

この中の多くが当てはまる場合、その考えを持った時に修正するトレーニングは、メンタル不全の再発予防に役立ちます。
周囲と本人との関係がうまくいっており、信頼できるサポートが得られているなら、周囲からの働きかけで時間をかけて改善していくことも可能でしょう。
身近な人間関係に頼ることが難しければ、カウンセリング等の専門機関もいいでしょう。非合理的な考え方を修正するための認知療法については、少数ですが病院でプログラムをもっているところもあります。
またこれらはセルフトレーニングも可能です。本を読んだり、インターネットで無料で公開されているサービスを活用することもできるので、代表的なものを文末に紹介しておきます。
いずれにしても、本人の「改善したい」という意欲が最初の一歩として最も重要です。周囲は、その意欲を持つところまではサポートできると望ましいですね。


もうちょっとつづきます。