絆~十八話~
3日後。
遊園地デートは実現した。
さくらちゃんが頼み込んでくれたみたいで・・・。
陵とは一緒の部屋だけど、
なんか待ち合わせしたくなって、ロビーで待っててって伝えといた。
『最後のデートかもしれない』
不吉な予感が心の隅にあったから・・・。
こうしたのかもしれないけど。
行くと、既に陵は待ってて。
あたしが近づくと、にっこり笑って手を差し出した。
「行きましょう?
未来さん」
「うん」
平日だからか人は少なくて。
ちょっとした貸しきり状態?
「少ないねー」
「そうですね・・・
でも迷子になる心配はないですよね^^」
「あたし迷子になんないよ!」
「ふふ。
人が多かったらずっと手を繋いでいられたんですけど」
パッと離れる陵の手。
未来さん、手をつなぐの恥ずかしいんでしょう?
と言わんばかりの眼差し。
~分かってるくせに!
あたしから手をつなぎたいって言わなきゃしてくれない気だな・・・!
陵の服のすそを掴んで、
「あたしと手をつないでください・・・っ/////」
俯いちゃったけど、言えた。
でも・・・
何この、結婚してください的な感じ!
しかも無言だし!
そろっと見てみると、
ほんのり頬を赤く染めた陵が。
あたしと目が合うと、
「僕のほうこそ、よろしくお願いします。
花嫁さん♪」
あ゛ー!
最後の一言余計!!
あたし、プロポーズしてないからね!?
でも、ぎゅっと握られた手を見ると。
そんな考えは消えて。
幸せいっぱいだった。
でも、幸せな時間は長く続かないもので。
あっという間に帰る時間になった。
門限守るっていう条件で来てるんだもん。
破れないよね・・・。
そんなことを思いながら観覧車に乗って。
それはいいけどあたし・・・。
高所恐怖症だってば!
陵、分かってるくせに選んだよね!
もう乗ってしまったから引き返せないけど・・・。
外を眺めてると。
パシャリと音がして。
「・・・ん?
なんか撮った?」
「いいえ?
あっ二人で記念に撮りましょう?」
二人ならいいけど・・・。
てか、ホントに撮ってないよね!?
前にいた陵があたしの隣に並んで。
スマホを掲げる。
「・・・写り綺麗?」
「はい、未来さん綺麗です^^」
「いや、あたしじゃなくて・・・」
まぁいっか。
ブレてないか心配したんだけどな。
でも、暑いなーって思って。
持参した未桜の扇子で煽ぐ。
ぎょっとした陵が、
「未来さん、それ一応大事なものですからね!?」
「えー?
陵も煽いであげよっか?」
返事を待たずに、ふわーっと風を送る。
それに合わせて、今様を口ずさむ。
なんか、未桜の扇子持ってると本能的に詠ってしまうんだよね・・・。
詠い終わって、
「涼しい?」
「はい・・・
とても未来さんが美しくて「もう言うな!////」
綺麗だとか美しいとか・・・
心臓持たない!
「今は舞えないけど・・・
早く治して舞えるように頑張るね」
「楽しみにしていますよ」
微笑んで言う陵は、すごい大人で。
あたしなんかより、ずっと。
・・・おし!
ちょっとだけ悪戯してやる!!
「この声も舞いも全て、
あなただけに捧げますー」
陵の息を呑む気配がして。
ぱっと手を放す。
「覚えてる?」
「ーはい。
嶺羽が未桜を抱k「言わなくていいから!!////」
分かってるならいいの!
でも、覚えててくれたのは凄い嬉しい・・・/////
「未桜の気持ち以上に、陵のこと大好きだから。
だから・・・あたしの声も何もかも全部あげる」
「・・・プロポーズですか?」
「・・・っ
考えてなかった」
未来さんらしいです、そう言って微笑む陵はやっぱり大人で。
いっつも翻弄される。
でも、大好きな大好きな人だから・・・
そう思えるんだからね・・・?
陵side
元気そうに悪戯っぽいことまで仕掛けてくるのに。
彼女は病気で。
放っておいたら壊れてしまいそうだから、皆放っておけない。
未来さんの魅力に惹きつけられる。
未桜から受け継いだのは、治癒の力だけじゃなかったんですね・・・。
ふふっと笑う僕に気づかず、外を眺めだす未来さん。
幸せなのに。
必ず別れはやってくる。
仕方の無いことだとしても、不公平だー・・・
ふと、医師の言葉が頭をよぎった。
未来さんには決して言えない、あの悪魔の言葉。
『余命はもって、あと1年ー・・・』