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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)7月23日(土曜日)弐
          通算第4973号
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(休刊予告)小誌は明日7月24日から8月3日まで休刊となります。
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 中国国富ファンド、初の赤字を公表。ゾンビ経済が失速の始まり
 中央銀行は「利下げより減税のほうが効果的だ」と責任回避
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 米国では共和党大会が終幕し、ドナルド・トランプが正式に党候補に撰ばれた。
 オハイオ州クリーブランドで開催されていた共和党大会に主流派の有力者が欠席したため、「挙党態勢くめず、トランプ苦戦」と大手メディアが書いた。
 左翼ジャーナリストらはトランプが嫌いなのである。

 ところが会場では「アメリカをふたたび偉大な国に」と呼びかける横断幕、「USA」の大きな掛け声で、トランプ演説に参加者は熱狂した。保守本流の欠席など問題ではないという雰囲気だった。指名受諾演説はとうとう75分にもおよび、なんども拍手と歓声で中断。「長すぎる」と一部からは批判されたが、重要な内容を含んでいる。

 トランプは「アメリカン・ファースト」を強調し、グローバリズムを否定し、これに恩恵を受けている富裕層、大企業、大手マスコミがクリントンを後景から操っているのだとした。
 「クリントンは彼らの操り人形でしかない」と。

彼の指名受託演説はTPP反対、同盟国への防衛負担金要求。メキシコ国境の壁を築け、イスラム教徒の入国の厳格化、そして大幅減税、オバマケアの否定と、予想された通りの内容が並んだが、暴言は控えられ、幾分穏やかな表現となった。
TPP反対は、日本に不安感をあたえるため、日本のメディアの社説も批判的だった。

トランプ演説では、とりわけ政敵ヒラリー・クリントン女史への攻撃が凄まじく、彼女の国務長官時代から「死、破壊、テロリズム、衰弱」が始まったのだと総括し、ニクソンのような「法と秩序」の恢復を力説した。

日本のメディアがあまり書いていないが、もう二点、トランプは重要なことを言っている。
ひとつは中国である。知的財産権の侵害、模造品、為替操作など、名指しで中国を批判している。

もうひとつは金融政策で、「グラス・スティーガル法」の復活を主張していることだ。
メキシコの国境の壁ばかりか、銀行と証券にも「壁」を作る。これぞ「壁の街」(ウォール街)にふさわしい。
しかし、これで真っ向からトランプはウォール街を敵にまわしたのである。戦術としては中間層、貧困層、そして民主党支持者から、サンダース票をごっそりといただこうとするしたたかな選挙戦術である。だからLGBTを批判しなかった。現にクリントンとの差を10%から2・9%にまで縮めている。


 ▼中国でなにが起きたか

 さてトランプ報道に隠れてしまったが、中国では同日に、いくつもの重大ニュースがあった。

 第一に中国で開催されたIMF、世銀、WTOなど「六国際機関」トップとの会談におけるラガルド発言である。
このIMF専務理事は先週ワシントンで記者会見し、中国のGDP成長は「6・5%から6・6%に0・1%上昇するだろう」と述べたばかりだった。
そのうえでラガルドは訪中し、四川省での会議に臨み、李克強首相等と面談したあと、「中国経済は上向き出した。改革は軌道に乗っていることが確認できた」と記者会見した。

「えっ?」。いったい彼女は中国に蜃気楼でも見たのか?
 もっともラガルド自身、フランスで数々の疑惑の裁判が開始され、気もそぞろ、最後のリップサービスというわけだろうか。

 第二は中国が鳴り物入りで発足させた国富ファンドCICが、始めて赤字になったと報告されたことである。
 CICは当時豊富にあった外貨準備高から資本金3000億ドルを得て設立され、おもに海外企業の株式などに投資して配当を得てきた。2016年現在、CICは8138億ドルのファンドにまで成長した。

CICは、2015年決算で、海外投資からの利息、配当収入がネガティブに転落した。主因は原油、鉱物資源の下落と為替差益だと報告された。
他方、北米、欧州に多額の不動産投資を展開しており、今後の不動産不況でさらに損失がでると予測される。


 ▼ゾンビが死ぬことはあり得ないのか

第三は中央銀行「中国人民銀行」が路線転換を窺わせるような発言を繰り出したことだ。
すなわち「利下げより、減税のほうが景気浮揚に効果的だ」。

この発言は同行の統計部主任、シェンソンチェン(音訳不明)で、「設備投資など企業の投資マインドが減速しており、これ以上の通貨供給をつづけるより、減税による景気刺激のほうが効果的である」としたもの。周小川総裁が公言できない政策提言だが、人民銀行高層部の意見を代弁している。

中国経済はいうまでもなく、とうにゾンビ状態で過剰在庫はダンピング輸出、有り余る労働者は「一帯一路」(海と陸のシルクロード)プロジェクトで海外へ押しだそうとしており、国内的には株式と不動産相場を安定させるために「ヘリコプター・マネー」を撒き散らしてきた。
2016年上半期だけで7兆元(105兆円)、このペースだと年内に200兆円を突破する。

経済の原理からいえば人民元暴落が発生するが、ゾンビゆえに、それもない。
ということは、米国と欧州ならびに英国が、中国経済を破滅させないために舞台裏で手を組んでいるとして考えられないのである。

 しかしゾンビを延命させればさせるほどに、バブル破裂となると、未曾有の災禍が国際的にふりかかることになるだろう。おそらく2008年のリーマンショックを超える、空前の市場崩落となる。
 日本に備えはあるのか?
      ○○○み○▽○や○□▽ざ○○○き○□▽
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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW
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 金正恩は馬鹿でも狂信者でもない。宿命の派閥闘争に打ち勝ち、
  党大会を36年ぶりに開催にこぎ着け「勝利者の大会」と位置づけた

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菅沼光弘、(構成 但馬オサム)『北朝鮮発 世界核戦争の危機』(ビジネス社)
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 日本人の安全保障感覚は、ひとことでいうと鈍感そのもの。目の前の核兵器に深刻な脅威を感じないうえ、平和とはヘイワヘイワヘイワと念仏を唱えていさえすれば達成できると信じ込んでいるのが大多数。さきの参院選挙でも驚ろくべきことに国防議論を提議したのは西村真悟氏いがい、ほとんどいなかった。しかも西村氏は落選した。

 北朝鮮は死にものぐるいで核兵器を開発し、それを搭載するミサイルを何回か発射実権を繰り返し成功させた。
 とくに「ムスタン」の標的は日本とグアムだ。これこそが金正恩が世界を愚弄し、生き残りを賭けた決死の戦術であると菅沼氏は言う。
 日本の対北朝鮮観といえば貧しい国、おかしな指導者がいて、人民は飢えているが、核開発に血眼。そして日本人の感覚では拉致問題が、核問題の前にある。この構造が北朝鮮の戦略を誤解する。

基本的に北の奧の御殿で何がおきているのか。正確な情報がなにもない国のことを斜めから読んだり、北の新聞だけをたよりに雑音のような解説記事がめにつく。
 これでは何も分からない。

 フルシチョフのスターリン批判は極秘のなかで進行したが、ドイツの諜報機関がいちはやく嗅ぎつけた。重要な路線転換だった。
 中ソ対立は長く西側に伏せられていたが、最初にふたつの共産主義国家の友誼関係が破綻していることを西側の諜報機関が見抜いた。キッシンジャーはポーランドで北京の代理人との秘密交渉をはじめ、パキスタンを活用してひそかに北京へ渡った。
 金正恩の戦略戦術は、日本の「専門家」らの分析では頼りない上、見当外れが多い。
ならば、いかにして把握するべきか。

韓国の情報機関は頼りなく、米国は偵察衛星で核兵器実験の事前予測はできるが、平壌の奧で密かに立案されている金正恩の思考、秘密文書はわからない。
機密の一部を中国が把握していると考えられるが、それを中国はアメリカに提供することはない。
したがって諜報機関も情報組織もない日本は、国際的諜報線の蚊帳の外、そもそも隣国が核兵器を開発し、日本に照準をあわせているというのに、鈍感な国民は「安保法制は戦争に繋がる」などと、北朝鮮や中国が聞いたら小躍りするようなプロパガンダを信仰しているのだから、「○○につけるクスリはない」のである。

 菅沼氏は36年ぶりに開催された党大会の意味を考える。
 本当に何が決められ、いかなる人脈が失脚し、どういう派閥が権力を固めたのか、また長老が生き残ったものの、じつは中央委員の54%が若返っている新事態に注目し、金正恩は瞠目に値する指導者ではないのか、と言う。
 キイワードは「勝利者」である。
党大会ならびにその前後の報告書、発言にでてくる語彙のなかに、見逃せない言葉を菅沼氏のするどい眼光は見つけだした。

 つまり、スターリンが激烈なトロッキスト追い落としの後の党大会で「勝利者の大会」と言ったように、独裁体制が固まった事実を示唆するキイワードはここにある。
 このたびの第七回党大会は、前回との比較や中国共産党の比較を論じる人が多いが、そうではなく、第四回大会との比較が必要だと言う。
 理由は「ソ連から帰国したまだ若い金正日は、いかにソ連の後ろ盾があったとはいえ、自分よりも革命の経歴も段違いな『国内派』の有力者たちと戦わなければならなかった。また、国内派を倒した後も『ソ連派』との権力闘争は続き、それに勝利し、『満州派』と『甲山派』による権力の獲得に成功した暁に開催されたのが第四回労働党大会だった」からである。
 すなわち金正恩は「先軍政治」を主導した長老達、ついで中国派との党内権力闘争に勝利した。多くの側近らの失脚は、こうした文脈でよみとくと謎だった奧の闇が浮かび上がっている。
 独自な視点からの北朝鮮論である。
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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)トルコの軍事クーデターの失敗ですが、アメリカがクーデター側の背後にいたとは考えられませんか?
  (GH生、茨城)


(宮崎正弘のコメント)あのクーデターの失敗によって、逆に最大の受益者はエルドアン大統領だった。
反対派をほぼ根こそぎ、失脚へ追い込み、数千人を拘束したわけですから。しかしエルドアンは危機を予知していた。その情報は誰がもたらしたか謎です。反対派というのは、不思議なことに親米派でもあり、イスラム世俗化路線ですから、エルドアンの急進的なイスラム化路線にはアメリカは反対の立場でしょう。
トルコのイスラム路線は、従来のケマル・アタチュルク以来の近代化路線否定につながりかねず欧米が警戒します。//