中野ブロードウェイにある古書店「まんだらけ」で、1体25万円する鉄人28号のブリキのおもちゃが盗まれたとか。この値段がまず、俺にとっては「?」なのだが、まあ、趣味の世界だからねえ。


んで、店の側がどうしたかと言うと、犯人らしき人物が写ってる防犯カメラの画像をサイト上に公開して、


品物を返さないと、モザイク(顔が分からないようにしてあったんだね)を外しますよ


と呼びかけた。

今日の午前0時がその期限だったのだけど、警視庁からの「中止要請」を受けて、見合わせたそうだ。

俺だったら、


「んなこと言うんなら、4週間以内に犯人逮捕できない場合、今度こそ公開しますぜサツの旦那」


とかなんとか、逆に警察にプレッシャーかけてやるけどな。


冗談はさておき、ネットでもこの処置は賛否両論を呼んでいるが、今朝の『とくダネ』で見た限りでは、70%以上の人が、顔写真の公開は「妥当だと思う」と考えているそうだ。


書店にとって、万引きの被害というのは、本当に深刻だからねえ。


話を分かりやすくするために、1冊1000円の本があるとしようか。

安倍ネトウヨ政権が消費税値上げしやがったけど、そこはひとまず置いて、この1000円の本だけどね。紙代、印刷経費、あと編集から流通までのもろもろの経費を積み上げると、原価がおおむね500円かかってるわけ。

原価率50%という時点でもう、おいしい商売と言うにはほど遠いのでね。薄利多売と言われる定食屋さんやファミレスのメニューの原価率って、30%くらいなものだから。


んで、1000円の定価に対して500円が原価。あとの500円を、著者、出版社、取次(流通業者。トーハンとかね)、そして書店で分け取りすることになるわけ。

著者はまあ、印税と言われるごとく、印刷した部数に応じて報酬が受け取れるのだけど、書店の場合、1000円の本を1冊売っても、200円儲かるだけなんだよ。

これが、金払わないで持って行かれてみい。

つまり万引きだけど、同じ本をあと4冊売って、ようやく損害がペイできるという話でね。

やる方は、さしたる罪悪感もないのかも知れないが、出版業界で飯を食ってる人間としては、だ。


これを鬼畜の所行と言わずして、なんと言う!


という話なんだよ。


ではなぜ、今回の「まんだらけ」の処置に、賛成できないか。

理由は簡単で、


犯人らしき人物


なんという段階では、映像を公開しちゃ駄目だって。もしも冤罪だったらどうするんだよ。

冤罪でなかったとしても、犯人が未成年だったら、また別の問題が生じるわけで。


それに、こういう処置をとることで、万引きに対する抑止力になることを期待してたとしたら、それもそれで問題だと思う。

今のネット社会では、誰かを陥れるためのニセの密告とか、犯人が特定された場合のいわつるネットリンチとか、日常茶飯事だからね。


書店で万引きするバカも、ネットで「こいつ万引き犯だ!」などと晒し者にして喜ぶバカも、知性と品性において大差ない、と言うべきでね。TVでよく、万引き現場を押さえられて、呆れかえる言いわかしたり、逆ギレする奴が映るじゃない。ネットリンチに加わる奴の場合、これ以上に


正しいことをしてる俺、カッコイイ


くらいに思ってるから、余計に始末が悪いと言うべきか。


じゃあ、どうすればいいんだ、という話だけど、これはもう、警察が頑張るしかないのでね。

法の規制をちらつかせて、映像公開を中止させた責任を取って、なにがなんでも犯人を検挙し、盗品を取り戻してもらおうじゃないか。

これがもし、できなければ、


税金泥棒は、万引きよりタチが悪い


ということになるよ。

これはまあ、林信吾流の捜査関係者へのエールということで。