クオンツの面接 | 海外ポスドクの就職活動日記

海外ポスドクの就職活動日記

高学歴・高年齢・海外… 
2009年、
3Kのハンディと不況にアグレッシブにチャレンジする
海外PDの新卒(?)就活記録

「修士くらいが一番いいんだけどね…」

僕の履歴書を見ながら、
仕事を中断して慌ただしく出てきた面接官が初めに言った言葉だ。

来たなにひひ

フックにはカウンターパンチで応えてやろう。
そう思って、少し笑って
「そうかもしれません。」
と僕は答えた。

院生が企業にとって好ましいのは分かっている。
だけど、ポスドクには別のアドバンテージがたくさんある。


面接官はそれ以上は問おうとはしなかった。
僕の出方を窺っていたんじゃないだろうかと思う。
だって、向こうだって博士の利点くらい知っているはず。
逆に、博士に対する偏見を取り除くためにも
穏和に素直に真摯に紳士に振る舞えば、何も問題はない。


博士卒で就職した友人から聞いた話なのだけど、
「うちのドクちゃんもね~、
すぐ辞めちゃったりしたけど君は大丈夫?」

なんて面接官に言われたそうだ。

実際、博士にはちょっと“個性的”な人も多いのだから、
企業は偏見を持つな云々よりも、
あなたが穏和で素直に学ぼうとする人間であることを伝えられると、
博士に対する偏見を逆手に取ってよい印象を与えられるかも知れない。
自分をアピールするのはそれからでもいいのだし。

***
そんな感じで、今日は面接対策について考えてみます。

まず、一般的な面接で聞かれることは、
・DODA面接対策
・マイナビ国際派就職
・モルガン・スタンレーの新卒採用サイト
・UBSの新卒採用サイト
とか見れば分かるけど基本は大体どれも同じなので
あらかじめある程度考えておくといいと思う。

それよりも是非お勧めしたいことは、
本命の企業の前に他の会社の面接で練習しておく
ことです。
とにかく実戦が何よりも訓練になるし、
慣れてしまえば基本的なことはスラスラ言葉が出るようになります。
実体験として。
僕がまず新卒として活動したのもその辺にも理由があります。

面接対策として文章を覚えていっても、
堅くなって面白くない=インパクトがない、ので
僕はあまりよくないんじゃないかと思う。
まずは慣らすつもりでとにかくGO!


面接というと、鋭い質問で根掘り葉掘り聞かれるイメージもあるけど、
「会話」なんだから、業務や会社の雰囲気を理解するために
社員さんの話を聞くことも、アピールと同じくらい重要なこと。

会話を楽しむつもりで向かえばお互いに打ち解けて話せるはず。
僕も内定した企業では7回も面接があったけど、
話をよく聞くことを心がけたので特に困ったことはなかったな。

ただし、
クオンツとしての素質を試す一次面接では結構厳しい質問もきた
ので、その辺を紹介していきます。


クオンツの面接なんだけど、
やっぱり
①金融工学についての学習状況(何を読んだか)
②金融工学についての質問
③プレゼン・コミュニケーション能力(研究などの説明)
④数学の基礎的なテスト(数理系博士なら余裕)
⑤博士のキャリア(研究)がどう生かせるか
⑥プログラム経験
⑦英語力

などについてそれなりに深く問われた。

①、②にいて、
僕は金融工学入門の専門書を2,3冊読んだ程度だったけど、
概念の理解度や簡単な計算をチェックされた。

金融工学が専門でもない限り
それほど知識が要求されることはないだろうけど、
・自分できちんと考えているか(覚えているだけではなく)
・批判的な見方を持っているか
・冷静に考えて答えようとしているか、

などを見ているのが分かった。

だから、クオンツの中途採用では、
当然だけどある程度専門的な質問があると思って
準備していった方がいい。
過去の記事
「BS方程式の解き方」
「BS方程式をイメージする方法」
も参考にしてね。

金融工学のテーマとしてあり得るのは、
・ブラック・ショールズ方程式
・CAPM理論
・ポートフォリオ

とかじゃないかな。


③について、意外に塾講師のアルバイト経験が好印象だったようだ。
とはいえ、
「研究内容を説明して」と言われて
実際にやってみせて納得させるわけだから、
議論の厳密性よりも相手の視点に立った例などを使って
意義や魅力、イメージをつかんでもらうことに専念した。

④はびっくりするくらい簡単だったんだけど、
「0点で帰る人も多い」
とのことだった。文系の人とかも法務関係で受けるからかな。

線形代数、組み合わせ・確率、
特に微分方程式の基礎(ホントに基礎)は
ちょっと復習しとくのも悪くないね。

⑤は何度も書いてきたから省略。研究分野がばれるし。
難しく考え込むよりもキャッチーに分かりやすく話すとよし。
「ポスドクのビジネス感覚」

⑥、⑦だけど、
「研究で使ってマス!」
でいきおいで乗り切った。
TOEIC受けてないし、実はプログラムはそんなに得意じゃない…。


あと、
株取引とかの経験があった方がいいのか?
というのもあるけど、僕は就活を始めてから
いちおう練習程度に口座を開設して運用していた。
あったほうが、本だけ読むよりずっと勉強になるのは確か。

実際、
「個人で金融取引などはしていますか?」
と聞かれたので、
「はい。練習のためにやっています。」

「運用成績はどうですか?」

「ロングしたまま動けなくなって、損してます。」
と正直に答えたところ、
ちょっと笑って和やかに
「はは。会社では個人取引は規制されるから、
自己運用が好きな人にはこの仕事は向いていない。
と言われた。

ああ、正直に答えてよかったな、と思った。


ただし、こういうのは部門にもよると思う。
その昔、よりフロントに近い部門に内定した先輩は、
個人取引で儲けている話や取引への関心が好印象だったようだ、
と話していた。

だから、別に一概には言えないので、
自分の考え方や行動を正直に伝えたらそれでよいのではないだろうか。

***
結局、内定までに7回の面接があった。
厳しいつっこみが来たのは一次面接だけで、
質問にてきぱき答えて褒められたりしたので
その時点でかなり内定を確信していた。

そして、残り6回の面接は、
部門や人事の社員さんとのお話に費やされた。

OB訪問をした先輩からアドバイスされていたことなんだけど、
「相手の話をよく聞くように」
簡単なんだけど、難しいこと。

アピールに必死になっても会話のキャッチボールは生まれない。
思ったことを尋ねてお互いに相手を理解するために、面接はある。

何度も何度も、多忙な仕事の時間を割いて面接行う理由は、
ミスマッチを防ぐこと、
問題のある(常識のない)人を入れないこと

が一番大きいと思う。


そういう相手の一番の恐れを和らげながら、
会話を楽しむことができたら内定はそう遠くないはず。