1. Start Me Up ステージ上の公団アパートの真ん中のどでかいスクリーンに、ビッグ・バンを描いた映像が映し出される。ア・ビガー・バンだと言いたいのだろう。ひょっとしたら、アルバム・タイトルは、この映像の準備ができた時点で決まったのかもしれない。アルバム・リリースと同時にツアーがはじまったんだから、十分考えられることだと思う。 その映像が終わったところで、問答無用のStart Me Upのイントロが鳴り響くゴージャスな演出。会場も怒号のごとき歓声である。 ここで22日とはセットリストがちがうことを宣言していたわけで、22日も来た人は、喜びもひとしおだったことだろう。 シャランラ氏は「うおっ、ミックもキースもカッコいい!」とつぶやいていた。これはむろん、当人たちがカッコいいということなんだけど、多分に衣装にたいする賛辞もふくまれている。ミックもキースもシンプルなジャケット姿で(ミックのジャケットは金色だけどね!)、以前のツアーの過剰な衣装(シャランラ氏いわく、「成金のネグリジェ姿」)よりずっと良かった。ひいき目抜きで、前回のツアーより若く見えたよ。
2. It's Only Rock And Roll キースがチャック・ベリーふうのお得意のフレーズをビシビシ決める。このあたりで、「あれ? ストーンズは前回よりだいぶノッてるんじゃないか?」と思いはじめた。すくなくとも、キースはこんなにノッてなかったぜ、前回は。
3. Oh No Not You Again 「ツギハ、シンキョク、デス」 というミックのつたない日本語MCではじまったナンバー。さすがシンキョクだけあって、ちょっとグダグダな演奏だった。新作にはもっとラクに演奏できる曲もあるのに、あえてこれをやるってのは、これを聴いて欲しいってことなんだろうなあ。
6. Worried About You 今回もっとも嬉しかった曲。個人的には、ハイライトはここだった。 ステージ前方にオルガンが設置されて、ミックがイントロを弾きはじめたのだが、当初、何をやるのかまったくわからなかった。この曲だ、とわかったときの驚きと喜びはとうてい一言では述べられません。 ミックは70年代中盤からおかしなファルセットで歌うようになっていて、「愚か者の涙」や「エモーショナル・レスキュー」が有名だが、この曲もその変態ファルセット曲のひとつ。『刺青の男』収録のナンバーである。たぶん、変態ファルセット曲ではいちばん好きな曲だろう。 ミックが裏声で「ベイベェ~!」と絶叫したときは、鳥肌が立ちました。
7. Ain't Too Proud To Beg 『イッツ・オンリー・ロックンロール』所収のテンプテーションズのカヴァー。通好みなセレクションだ。他人の曲だと気分もちがうんだろう。バンドはとても楽しそうに演奏していた。
10. This Place Is Empty 11. Happy ミック・ジャガーが退場、お色直し。キースのボーカル・ナンバー2曲。This Place Is Emptyは新作に入っているしんみりしたバラードだ。シャランラ氏が「キース、ボブ・ディランみてえだな」と言っていたのが印象的だった。
12. Miss You アリーナの真ん中にあるセカンド・ステージに移動して数曲を演奏する構成は、前々回の「ブリッジス・トゥ・バビロン・ツアー」から取り入れられた趣向だった。当時は、ツアータイトルどおり、コンサート会場に橋(ブリッジ)をかける、というのがウリだったのである。 以前はその橋の上をセカンド・ステージまでメンバーがぞろぞろ歩いていたのだが、なんと今回は、演奏中のメンバーを乗っけたまま、ステージが動き出してアリーナ中央に移動、セカンド・ステージが展開されるという物凄い仕掛け。ストーンズが巨大なベルトコンベアに乗ってるわけである。こりゃカネかかるわ。
13. Rough Justice 14. You Got Me Rocking セカンド・ステージの下にいた連中が心の底からうらやましかった。だってさ、やつらが支払ったカネは、俺たちと同じ1万8千円なんだぜ? なのにやつらはミックのツバが飛んでくるライヴハウス状態を体験できている。くそー、いいなあ。 Rough Justiceは新曲なのだが、先に演奏されたOh No Not You Againよりずっとこなれていた。何十年も演奏している他の曲と比べても遜色なかったと思う。たぶん、今後もやり続けるんじゃないかね、この曲は。
15. Honky Tonk Women ふたたび移動しながらの演奏。移動中、ファースト・ステージ後方から花柄の巨大なベロが出現する。
16. Sympathy For The Devil ミックが公団アパート、じゃなかった高層ビルの中央、スクリーンの真ん前に登場し、背景のスクリーンでサイケなライト・ショーが演じられる。たぶん、ストーンズ側が考えるショーのハイライトは、前曲の花柄巨大ベロとこの曲なんだろう。 もっとも、すでに述べたとおり、私みたいなスレたファンはそんなギミックより、通好みな曲をふつうに演奏してくれた方がハイライトになるんだけどね。1万8千円払って東京ドームに馳せ参じる連中ってのは、たいがいそうなんじゃないのか。 でもね、そこでそういう「スレたファン」に合わせたら負けなんだよ。そう思った。
17. Jumpin' Jack Flash 18. Brown Sugar まあ、これで盛り上がらないはずはない。怒濤のロックンロール攻撃である。 62歳のミック・ジャガーは、広いステージを歌いながら端から端まで走っていたぜ。 「俺、あのステージ1回走っただけで息切れるよ」 とはシャランラ氏の言葉だが、私も同様である。
19. You Can't Always Get What You Want 20. Satisfaction ここからアンコールである。 「You Can't~」は以前のツアーとアレンジが変わっていた。おそらくは何千回も演奏しただろう曲のアレンジを今でも変えているストーンズは、本当に偉いと思った。 平均年齢60歳以上で、まだバンドが進化し成長しているって、とんでもないことだよ。
あまり語られないことだけれど、JBはメッセージ・メイカーであり、アフロ・アメリカンのオピニオン・リーダーだった人なのである。 有名なヒット曲「Say It Loud, I'm Black And I'm Proud/誇りを持って『俺は黒人だ!』と叫べ!」をはじめとして、彼のメッセージは、多くの黒人聴衆を鼓舞してきた。「Payback」「Hell」「Reality」など、メッセージ色の濃いアルバムにも、名作は多い。