エマニュエル・スチュワート氏が語るヘビー級史 PART3 | Go↑kunの海外ボクシング記♪

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ボクシング…勝者と敗者のあまりにクッキリとしたコントラスト…。魅力的な選手達のバックグラウンド、ボクシングビジネスの側面、プロモーター達の思惑、選手の声、あまり入ってこない海外ボクシング情報を書きたいと思います!宜しくお願い致します!

スチュワートさんが語るヘビー級史…結構興味深い内容で良かったです^^
さっ…3rd & ファイナルってことで張り切っていきます。

【以下ニュアンス訳文】※誤字脱字誤訳ご容赦下さい。

Question(以下Q"):
もしソニー・リストンがもっと早くフロイド・パターソンに挑んでいて、モハメド・アリという存在がなかったとしたら…ソニー・リストンはどの様な評価になるでしょうか

エマニュエル・スチュワート(以下E.M.):
私が十代の頃にソニー・リストンを観て衝撃を受けたのを覚えているよ。ヘビー級のトップ10リストを次々と下していって王者になった様な印象だったね。1957年位から3年間、彼は本当に支配的だった。信じられない程のパンチ力を両拳に持っていたんだ。彼がタイトルを獲った時は既に全盛期を過ぎていたとも思う、タイトルを獲ったら集中力を失ってお金持ちの中年の様になってしまったからね。57年~59年の間、彼はボクシング史上に残る凄いファイターだったと思う。速くて良い動きだったな…アマチュアのバックグラウンドもあって誰とでも戦う。もし58年とか59年にアリ…当時はカシアス・クレイか、と戦っていたら分からないね。それでもアリが有利かも知れないけど想像出来ないな。リストンはそれ位強かった。クリーブランド・ウィリアムス戦なんて…オー・マイ・ゴッド…そりゃ凄かったよ。アリでも当時ならリストンが勝ってたかもね。

Q:
1920年代のジャック・デンプシーはボクシングというスポーツの地位を高めたと思います。野球で言えばベーブ・ルースの様な存在だったと思うのですが。デンプシーの功績は、対戦相手を選び過ぎたというところで減点になりますか?

E.S.:
そうだな…。デンプシーの名前は確かにオールタイムグレートの中には出てこないよね、でも彼はアメリカの民族的ヒーローって感じだからな。確かに思い出せる試合ってのが少ないよね。ジーン・タニー戦は彼は負けたけども一番印象深いかな。あの試合で彼の人気が出たっていうのも皮肉なもんだけどね。あの試合の後彼はニューヨークに住む様になって名声を手に入れたと思うんだ。レストランを経営してね。彼もどちらかと言うとボクシングを引退した後により有名になった選手だと思う。タニー戦があってのキャリアだよ。そしてそのあとジェス・ウィラードをKOする有名な試合もあったよね。ボクシング史に残る凄惨な試合だった。6回も7回もダウンさせてね。あの試合が有名になった理由は彼が小さい男だったからだ。小さい男が大男を何度も倒したことが皆をびっくりさせたんだろうね。それに当時のヘビー級王者ってのはアメリカ大統領並みの特別な存在だったんだ。他のスポーツでもそれこそベーブ・ルース以外はそれ程人気があって有名な選手はいなかっただろうしね。いずれにせよ負けたタニー戦で彼は愛される存在になったことは間違いないと思っているよ。

Q:
フロイド・パターソンのことはファイターとしてどの様に観てますか?

E.S.:
フロイド・パターソンは良いファイターだったよ。特にスピードに優れていたと思う。でもオールタイムグレートとは呼べない。何故なら彼は打たれ弱かったからね。だから彼の矛先は常に良い対戦相手にばかり向けられていたと思う。カス・ダマトのマネージメントによってね。ソニー・リストンとは交わらなかったし。スピードとコンビネーションは凄かったけど、彼の時代に最高の対戦相手と戦ったかと言えばそうではないだろう。まぁそんなに数はいなかったけど。あるい意味、現在のボクシング界と似ているかも知れないね。そして彼の人気は、彼がニューヨーカーだったことも影響しているはずだよ。ニューヨークは当時ボクシングの首都みたいなところだったから。そして誰でも話かけられる様な彼の性格も好かれる理由だった。ニューヨーカーのナイスガイだったから、人気があり高い評価を得ているんだろう。

Q:
アーチー・ムーアの様にヘビー級でそこそこ成功したと言えるファイターはどうでしょう。彼は実際2度のタイトルマッチに敗れていますが…。ムーアが別の時代にいたらどうだったでしょう?


E.S.:
アーチー・ムーアはどの時代でも良いファイターだっただろう。彼は頭が良く用心深いファイターだったよ。そんなにサイズも大きくなかったのにペース配分も見事だったし勝負所を見極める力もあったよね。どの時代にいたってきっと通用したさ。若くてとてつもないスピードだったパターソンに負けたり、マルシアノに負けたりしてるけど…普通に考えても彼は優れたヘビー級だっただろう。4

Q:
アンドリュー・ゴロタはA級の才能を持ちながらA級レベルのファイターと呼べない典型かと思っております。ゴロタの様なファイターは別の時代にいればより成功したと思いますか?

E.S.:
ゴロタはどの時代にいっても駄目だと思うよ。彼は内面的に勝者ではなかった、チャンピオンは必ず内なる力を持ってるものだ。全てのヘビー級王者達、今まで話をしてきた王者達もそうだけど…フレイジャー、アリ、マルシアノ…彼らは本当にタフで強いファイターなんだ。マルシアノのところで話をしたけど、彼はムーア戦でもウォルコット戦でもノックアウト負け寸前からカムバックして勝ってるんだよ。そういったタフはハートがチャンピオンには必要なんだけど、ゴロタはルーザーだ。マイケル・グラント戦やリディック・ボウ戦でも、ゴロタにとっては勝てた試合だったはずだったけど、試合がラフな展開になって彼は投げ出した。わざとローブローを繰り出したりしてね。マイク・タイソン戦だって酷いもんだった。彼の様なハートではどの時代であったとしても絶対に成功は出来ないよ。絶対にね。

Q:
ビタリ・クリチコは数年のブランクを経て再起して再び王者になっています。ビタリ・クリチコは偉大な王者と呼ばれる様になるでしょうか?時間は足りるでしょうか?

E.S.:
十分な時間はなさそうだね。彼がいつも我々に言うのが、彼の最も有名な試合はレノックス・ルイス戦の敗北だってことさ。あの試合以上のものは残念ながら見せれてないのが現状だと思う。周りにビッグネームもいないし、対戦相手に恵まれていないこともあるけどね。今のままでは偉大な王者として語り継がれるのは難しいだろうし、時間もそんなに残されていないよね。ビッグマッチとしては…デビッド・ヘイ戦かニコライ・ワルーエフ戦位かな。これらが実現すれば彼のキャリアにおいては良い試合になるだろうけど、これ位の相手じゃ少なくとも後2年以上現役でKO勝ちを続ける必要があるだろう。偉大と呼ばれるにはね。

Q:
エマニュエルさん、貴方が現在トレーニングをしているウラジミール・クリチコはどうでしょうか?

E.S.:
そうだね…。前戦でKO出来たことで人々ももしかしたらウラジミールは結構やるんじゃないかと気付いてくれたかも知れないね。インターネットなんかで彼への書き込みを読むと、慎重過ぎるとか、試合がつまらないとか…色々言われている様だけど、ウラジミールのパンチ力を再認識し始めている感じもするんだ。まぁまだ彼はボーダーライン上だよ。彼のパンチ力は実際凄まじいものがあるんだ。続けていければ彼には偉大と呼ばれる可能性はあるかもね。まだ全然駄目だけど。ここでも不幸なことに本当の意味でのスーパーファイトは組めない状況だけど、支配的な強さを後2年か3年続けていければ、偉大なファイターの一人として呼ばれる日が来るかも知れない。ジョージ・フォアマンの様なファイターが現代にいればねぇ…。デビッド・ヘイ戦で印象的なKO勝ちが出来れば評価は上がるだろうね。それでも他の時代の偉大な選手達と比べると対戦相手という意味では恵まれないから、後10度でも12度でも防衛を重ねることが大事だ。偉大なトップ10になりたいのであればね。人々が彼を観る目が少しずつ変わってきている様に思うんだ。

Q:
エマニュエルさん、今仰ったことに通じていると思いますが、現代のヘビー級は弱体化していますよね。この様な冬の時代は過去にもあったのでしょうか?ファン達の目を再びヘビー級に向けるには何をしたら良いでしょうか?

E.S.:
こんなに弱体化したヘビー級は初めてかも知れないね。特に問題だと思うのが、アマチュア出身者が出てこないことなんだよ。クリチコが96年のアマ王者だったはずで、それ以降は誰もいないだろ?キューバとかロシアからも誰も出てこない。リストン、アリ、フォアマン、ボウ、ルイス…彼らは強いアマチュアボクサーでもあったからね。過去にも…遡れば、ジョー・ルイスの時代は彼のライバルは見当たらなかったし、タイソンの時代だって、ルイスにさえそれ程強力なライバルはいなかったと思う。それでも今よりはましだよね。今最も期待されてるのがデビッド・ヘイなんだろうけど、彼はリング内ではなくて外で騒いでいるだけだからね。だから特効薬はないだろう。最低5年はかかるんじゃないかな。

Q:
エマニュエルさん、貴方は数多くのヘビー級ファイターをトレーニングしてますが、誰か特にトレーナーを務めてみたいファイターはいますか?

E.S.:
多くのファイターに関われてきたからね。レノックスやウラジミールとも一緒に仕事をしたいと思っていて実現したわけだし…。そうだなぁ…ラリー・ホームズ、そしてジョージ・フォアマンかな。思い浮かぶのはその2人だよ。

Q:
エマニュエルさん、貴方とお話出来たことを本当に嬉しく思います。最後に何かファン達に言いたいことはありますか?

E.S.:
ボクシングを引き続きサポートして下さい。国際的にも人気が上がってきたと思うしこれから間違いなくより良い時代が戻ってくると思います。今日はヘビー級の話ばかりでしたが、ヘビー級で最もエキサイティングなトークは過去の話ばかりです。現在のことはあまりないですが、今後変わっていくと思います。だから我々のサポートをお願いします。

Q:
エマニュエルさん、ありがとう御座いました。感謝致します。

E.S.
ありがとう。

以上

若干端折りましたが…ニュアンスは伝わりますよね^^

では、明日から又仕事頑張りましょう♪

チャオチャオ♪♪