以前の記事で、資料を作る際にはオーディエンスの視点に立って作ることが重要であると書きました。もう少し具体的にいえば、相手が知りたいと思っている本質的な問いを理解して、それに答えるようにするということです。しかし、いったいどうすれば、そのようにできるのでしょうか?

まず思いつく手段としては、直接相手と会話しながら、あるいはいろいろと質問をして、相手の考えを理解するという方法です。もちろん、初期的にはこれが有効で、会話により相手の理解を深めることができます。

しかしこの方法だと、表層的に相手を理解できたとしても、相手が思っている「本質的な問い」を知るには限界があります。なぜか・・・?それは、話をしている相手自身、自分が何に課題意識を持っていて、何を知りたいと思っているのかを明確に理解していない可能性があるからです。

取りくんでいる仕事について、何が課題か、次に何をすべきかについて、案外理解できていないものです。作業やタスクのレベルで何をすべきかは分かっていたとしても、本質的な課題は何かと言われると、多くの場合「なんとなく」わかっていたとしても、明確にそれを言葉に落として書きなさいと言われると、詰まってしまいます。明確に言葉にできないということは、誰かと話をしていたとしても、「なんとなく」しか相手に伝えることはできません。

その時に、聞き手として心がけるべきことは、相手の言動を手掛かりに、相手が考えていることを想像し、それが正しいかどうか確かめるために、相手と対話するということです。

ここで、意識的に表現を使い分けました。「会話から理解」するのではなく、「想像したうえで対話」するのです。

相手との「対話」の中で、自分の仮説をぶつけていき(もちろん失礼のないやり方で)、相手がYesと言えば合意が形成されたということだし、Noと言えば自分の仮説を修正/進化させて、さらに相手にぶつけるということを繰り返すのす。

相手の言動から相手の考えを想像することは、まさしく仮説思考です。「こういう発言をするということは、きっとこういう課題意識があるからにちがいない」とか、「あの場面でのあの行動は、きっとこういう考えがあってのことだ」ということを、論理性(左脳)と感性(右脳)をフル回転して「想像」するのです。

こうやって、相手との対話を通じて相手の考えを明確化し、それに対する答えを持っていくことが、「コンサルティング」という仕事の本質だと思っています。