早稲田、明治神宮大会初優勝 | アマチュア野球をめぐる旅。

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高校野球を中心にアマチュア野球(ときどきプロ野球)の観戦記。

高校の部に引き続き行われた明治神宮野球大会・大学の部の決勝戦は早稲田大対東海大の間で行われた。

早稲田大は東京六大学野球連盟の代表としてストレートで明治神宮野球大会に出場。
東海大は関東5連盟(首都、千葉県大学、関甲新学生、東京新大学、神奈川大学)の代表校として出場。

上記の連盟から上位校同士のトーナメントで勝ち抜かなければ神宮には駒を進められない。
6月の全日本大学野球選手権大会が各リーグの優勝校で行われるのとは若干趣きの違う大会運営である。
大学球界屈指の名門・東海大も3年ぶり19回目の出場である。


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平日にも関わらず神宮球場には16000人が駆け付けた


早稲田大は大方の予想を裏切り、福井優也(4年・済美)を先発マウンドに送る。
ブルペンに斎藤佑樹(4年・早稲田実)の姿が無かった時点からは予想出来たが、意表を衝いた投手起用。

東海大は来年のドラフト一巡目候補、菅野智之(3年・東海大相模)に決勝戦のマウンドを託した。
菅野の魅力は球速表示に違わぬ威力ある最速157㌔を記録するストレートである。
この日は135球のうち21球が150㌔を超えた。気持ちの良い投球リズムが印象的な投手である。
ストレートの他に140㌔台の高速カットボール、スライダー、時折カーブも織り交ぜる。

巨人・原辰徳監督の甥っ子として注目を浴びたが、もはや枕詞が無くても十分に存在感のある投手に成長。



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ブルペンで投球練習を行う菅野


福井と菅野による期待通りの投手戦で試合は静かな立ち上がりを見せた。
二回、早稲田大は一死二塁の場面で、ショート松永弘樹(4年・広陵)が一塁への悪送球。
送球がファウルグランドを転がる間に先制点を許した。
松永の送球はハーフバウンドになってしまったが、一塁手が捕球すべき範疇であった。
普段は外野を守る土生翔平(3年・広陵)が不慣れな守備位置に入った為に招いた失策に映った。


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東海大の伊志嶺はロッテのドラフト一巡目


ストレートで押している菅野の投球に威勢を感じさせる序盤は東海大ペースで試合が進んだ。
菅野は先頭打者・土生の右前安打を被びた後は逆転を許す六回まで早稲田打線にヒットを許さなかった。

しかし、後半戦に差し掛かった六回裏、早稲田打線がついに菅野を捕らえる。
一死後、好投を続けていた福井の代打に杉山翔大(2年・東総工)を送ると中前安打で出塁。
一塁手・坂口真規(2年・智弁和歌山)の失策に四球が絡まり、東海大は二死満塁のピンチを招く。

菅野は山田敏貴(4年・早稲田実)に初球141㌔のカットボールを捕らえられ、二点適時打を浴びる。
早稲田大は千載一遇の好機を見事モノにして逆転に成功した。

鮮やか過ぎる逆転劇に東海大スタンドは声を失い、早稲田スタンドは「紺碧の空」が響き渡っていた。
対照的な両校スタンドの雰囲気はグランドの選手達の心理状況を投影している様な気がした。


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斎藤佑樹は最後を見事に締め括った


六回表、1-0とリードを許していた早稲田大は安打に四球、悪送球で一死二・三塁のピンチを迎える。
しかし、福井は大野裕太(4年・東海大甲府)にはボールになるスライダーを振らせて三振を奪う。
代打・鈴木翔(3年・春日部共栄)を二塁ゴロに抑えて、ピンチを脱した。

結果としては六回表と裏の攻防が試合を決定付けた。
チャンスをモノに出来なかった東海大、ピンチを脱した直後に四番の一打で逆転した早稲田。
斎藤佑樹のアマチュア野球、最後の華道を演出したのは福井のマウンド捌きと山田の勝負強さであった。

七回・八回は福井を救援した大石達也(4年・福岡大大濠)が三者連続を含む2イニングで5奪三振の圧巻の内容。
九回は斎藤が三人で締めて、早稲田大が明治神宮大会初優勝を飾った。


プロ野球12球団中ドラフト一巡目で指名を受けた選手が両校には四名在籍している。
斎藤世代が盛り上げた本年のアマチュア野球の最後を締め括るに相応しい対戦カードであった。


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斎藤を追い掛けた報道陣のカメラ


ちなみに、斎藤佑樹と菅野智之の両投手はともに中学校の軟式野球部出身である。
斎藤は生品中(群馬)時代、菅野も新町中(神奈川)時代に三年夏にともに関東大会で8強に進出。

中学時代からクラブで硬球を扱う事で高校野球への移行をスムースにしようという風潮が強い昨今。
甲子園出場校の選手名鑑においても硬式チームのクラブ名が記載されている場合を目にする。
妄信的に硬式クラブを過信する事なく、各自の適性に応じて進路を選んでみてはいかがだろうか。


最後は来年のドラフト一巡目候補、菅野に対するスカウトからの試合後のコメントで。


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中盤までは衝け入るスキを見せなかった菅野


中日・石井スカウト
 「来年の超目玉。テンポが速くて昔の江川みたい。今年の4年生に交じっても競合していた」

巨人・長谷川スカウト
 「今年のドラフトでも1位で指名されるような選手ですから」


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