第92回全国高等学校野球選手権大会は興南の春夏連覇でフィナーレを迎えた。
朝日放送の解説を担当した横浜・渡辺元智監督が、興南の強さを
「大平原で獲物を逃さぬライオンのようで、これほど強いチームは見たことがない」と絶賛していた。
「興南、圧巻の勝利で春夏連覇。“ガッツポーズ無し”が生んだ偉業。」(Number高校野球コラム)
http://number.bunshun.jp/articles/-/45190
さて、今年も印象に残るシーンや試合は数多くあったが、大会六日目、第二試合での
歳内宏明(聖光学院)対丸子達也(広陵)の対戦が印象に残っている。
有原航平・丸子達也という投打に牽引役を擁する優勝候補・広陵がどのように勝ち上がるのか?
四年連続出場の聖光学院との好試合を期待しつつも、大方の予想は広陵有利であったように思う。
試合は序盤から歳内がSFFを連投して広陵打線に的を絞らせず、素晴らしい投球を大観衆に披露する。
対する有原も春より力感の増したストレートを低めに集めて、期待通りの投球。
両者譲らずの投手戦が繰り広げられていく。
0-0の六回表・二死一塁二塁という得点機に歳内対丸子の第三打席を迎える。
歳内はカウント球であり勝負球でもあるSFFを初球、二球目と投げ込みツーナッシングに追い込む。
二塁への牽制でひと呼吸空けた後、三球目は三たびワンバウンドするSFFを投げる。
初球から三球続けてのSFF(2ストライク、1ボール)。
聖光バッテリーの徹底した攻めの姿勢が、逆説的に丸子の潜在能力を際立たせている気がした。
そこまでして執拗な組み立てをしなければ打ち取れない打者と見ていたのだろう。
そして、四球目も続けてSFFを投じる。
真ん中低めの甘いコースに丸子のバットが反応するが、ファールになる。
甲子園の初戦、優勝候補と目されたチームが0-0の均衡を破る絶好機という場面。
決めた球として使用される変化球を初球から四球連続投げ続けられるという非常事態。
並の好打者なら精神状態が乱され、生じた迷いが基でスイングを鈍らせる局面ではないだろうか。
そして、五球目も続けてSFFを投じる。
丸子のバットが真芯でSFFを捕らえると、打球はセンター前に抜けていく。
追い込まれた場面だけにSFFと他のボールを予測しながらの局面。
若干体勢を崩されながらも、中心軸を崩さない見事な技術とバットコントロール。
ただ、この場面もセンターまで抜けて行く打球の速さに驚いた。
根本の好返球が生んだクロスプレイであると同時に、演出は丸子の打球の速さであった。
根本の捕球場所は定位置から前進した場所ではあるが、それほど極端ではない。
崩された体勢からバットコントロールだけで鋭くセンターに弾き返した丸子の技術は圧巻である。
根本康一の見事なバックホームで聖光学院が失点を免れ、ベスト8に駆け上がる布石となった場面。
と同時に丸子の圧倒的なバッティング技術が垣間見えたシーンとして記憶しておきたい。
歳内と丸子は二年生であり、来年の活躍を期待させる選手。
歳内のSFFは予選から研究される事が予測され、丸子のマークは一層厳しくなるだろう。
彼らが上級生となりチームの中心になる聖光学院と広陵の秋季大会以降の活躍を楽しみにしたい。
「広陵史上最強の長距離砲」(弊ブログ・4月5日付け記事)
http://ameblo.jp/go-baseball-studium/entry-10500969449.html