7月15日にズッカーマンの弾くベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のコンサート(広上淳一/京響)に行くはずだったのだが、所用により行くことができなかった。
ズッカーマンというと、五嶋みどりと共演したバッハのヴァイオリン協奏曲集や、ブーレーズとのベルクのヴァイオリン協奏曲などの録音をよく聴いている。
実演を聴くのは初めてで、楽しみにしていたのだが、残念だった。
その代わりと言ってはナンだが、ズッカーマン/バレンボイム/シカゴ響によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の録音(NML/Apple Music)を聴いてみた。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
ヴァイオリン協奏曲の王者とも称されるこの曲には、それこそ100年近くも前から数多くの録音がなされている。
それも、クライスラー、シゲティ、ハイフェッツ、オイストラフ、メニューイン、シェリング、パールマンなど、錚々たる巨匠たちによる録音が残されており、私はこのいずれも好きである。
この曲を聴くとなると、どの録音を聴くべきか、いつも迷う。
そこで、カデンツァで決めることも多い。
第1楽章のカデンツァは、クライスラー作のものが有名であり、よく弾かれる。
しかし、ベートーヴェンがこの曲をピアノ協奏曲に編曲する際につけた自作のカデンツァをもとにしたものか、あるいはヨーゼフ・ヨアヒム作のもの、この2種のカデンツァが、冒頭の同音連打音型をよく活かしたベートーヴェンらしい展開になっているような気がして、私は好きである。
前者のカデンツァを用いた録音で、「これ!」といったものを私はまだ見つけられていないけれども、後者のカデンツァを用いた
シゲティ/ワルター/ブリティッシュ響盤
シェリング/ハイティンク/コンセルトヘボウ管盤
あたりを聴くことが多い。
で、ズッカーマン盤。
彼の演奏は、上記の巨匠たちに比べると、やや伸びやかさが減退しているというか、堅実で少しおとなしい感じの演奏となっているけれども、よりすっきりした端正な様式感があり、音程の安定度も向上しているような印象を受けた。
実演で聴いたなら、おそらくさらに良いと感じただろう。
ただ、全ての音が完璧にコントロールされているかというと、そういうわけではなく、音程がやや不安定だったり、あるいはちょっとざらっとした音色になってしまったりするような箇所も、ところどころ聴かれた。
五嶋みどり、アリーナ・イブラギモヴァ、ユリア・フィッシャーといった現代のトップクラスのヴァイオリニストたちほどの完成度には至っておらず、過渡的な印象を受けた(ただし彼女たちはこの曲をまだ録音していない。録音が待たれる)。
ただ、ズッカーマンも、録音当時(1977年)としてはトップクラスの完成度だったのだろうし、現代のヴァイオリニストよりはヴィブラートのしっかりかかった柔らかめの音なので聴きやすいという良さがある。
ちなみに、彼の弾くカデンツァは、クライスラー作のもの。
なお、この録音ではバレンボイムの指揮が意外に良い。
私は、ピアニストとしてのバレンボイムは好きだが、指揮者としての彼は演奏が鈍重だったり、あるいはテンポの変化が不自然だったりして、あまり好きになれないことが多かった。
しかし、この演奏はベートーヴェンらしい力強さがあって(ややマッチョすぎるかなと思う箇所もあるけれど)、それでいて重すぎず、テンポも自然で、とても良いと感じた。
指揮者バレンボイムの実演も、いつか聴いてみたいものである。
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