オバマのアメリカ ストライキ完全勝利も工場閉鎖の嵐 | 写真の広場-グローバルフォトエクスチェンジ情報室

オバマのアメリカ ストライキ完全勝利も工場閉鎖の嵐

オバマのアメリカ 現地からの報告

「ストライキに勝利し職場復帰、会社は10月工場閉鎖発表」

-労働者の正義実現より利潤追求優先の個人投資ファンド
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ストライキに突入してから9カ月。おそろいのTシャツを着て、初めて親会社であるBrynwood Partners 本社に抗議するステラドーロクッキー工場の労組員=5月11日、コネチカット州グリニッチ(Glbal Photo Excange)


昨年8月から賃金引下げなどの会社提案に抗議して、ストライキを続けていたステラドーロクッキー工場労働組合(正式名称はBCTGM  Local 50)が、米国東部時間7月6日から職場復帰するとの、連絡が支援者のメーリングリストで入ってきた。(前のブログ参照

Marty Goodma 7/6/09
The company relented and is allowing workers to return to work 9:30 AM Tuesday, as per court order! Congratulations Stella workers for staying strong all this time. You are an inspiration!
Mike Fillipou says Joyce Alston, Local 50 President, is asking that supporters join them at the plant (237th Broadway). Try to be there by 8:30 am Tuesday or as early as possible so we can talk to Alston about where to go from here before returning to work. Let's find out what she plans to do. If you're comming, bring flowers, confetti, boxes of candy, etc. if possible.
Alston will be meeting with workers to discuss L. 50 strategy. She says there may be a press conference in a couple of days. Lets listen to what the workers say about whats going on.
Speaking for myself, this is a great victory but one fraught with dangers. As I see it 1) going back means production resumes and the leverage that brings is gone. They can go out again but that's difficult - which the boss knows. 2) the company is threatening to close in October (!) - a pressure tactic to settle for less or true? 3) Many New York workers will believe the struggle is over. Its Not!! We must continue the boycott!

We will be with the Stella workers until the very end!

Let's get the word out. The struggle continues!

一方で、ニューヨークタイムズ は会社を実質的に所有するBrynwood Patneres (個人投資ファンド)が10月で、ニューヨーク・ブロンクスにある工場を閉鎖、どこかに移転する計画だと報じた。支援者に問い合わせたところ、事実だという。

支援者のひとりは、以下のように述べて、悔しさをあらわにしている。

「・・・素晴らしい労働者の闘いが、公正さと正義を維持することを求められたときに、個人資本家がどのように行動するのかへの理解を高めたことだけで終わることは悲しいことだ。」

Tony and all,

This took me by surprise even though it is so typical for runaway capital to use labor militancy as an excuse to flee. It is also capital's attempt to intimidate the NLRB, and, of course, the union local will be blamed for courageously defending the workers against super exploitation. This is always capital's ace- in-the-hole when their is no worker control or state intervention. Community responsibility means nothing to Brynwood. It is a sad ending to a good fight which only heightens workers' understanding of how private capital acts when challenged uphold equity and justice.

ステラドーロクッキー(Stella D'oro )はイタリア人移民の夫婦が、ニューヨークの低所得層地域ブロンクスに1932年創業。アメリカのクッキーにしてはめずらしく甘さをおさえた品のいい味で、価格は少し高めだがニューヨーカーに評判のブランドだった。
転機が訪れたのは、1992年。大手菓子メーカーのナビスコが夫妻から買収。2000年にナビスコは大手メーカーのクラフトと合併。
大きな利潤を生み出さないことから、2006年に買収時の10分の1の価格で、コネティカット州グリニッチに本社を持つ、個人投資ファンドBrynwood Partners に売却された。経営はステラドーロクッキー会社が行っている。
売却時に維持されていた3年契約が切れるのを前にして、昨年5月ステラドーロの会社側は、賃金の大幅な引き下げと労働条件を改悪した新契約を提案。労働組合となんどか話し合いがもたれたが、会社側は賃下げの根拠となる財務状況の開示を拒否。一方的に話し合いを打ち切った。これに対して、組合側は生活費の高いニューヨークでは、提示された賃金で生活できないとしてストライキに突入。
労働者の多くはラティーノの移民で、20年以上ステラクッキー工場で働いていた。定年とともに年金支給を目前にしていた。
その後、会社側はストライキ破りの労働者を臨時で雇用。クッキーの生産を続けていたが、組合側はクッキーを販売する大手スーパーなどに販売中止を働きかけるとともに、不買運動を続けていた。
組合側の訴えを受けたNLRB (全国労働関係委員会)ニューヨーク地域事務所は昨年9月から精力的に捜査を開始、今年3月になって会社側を提訴。6月30日に判決がでた。
組合の求めに応じて、賃下げの根拠となる財務報告を全面開示せずに、一方的に話し合いを打ち切ったのは「不当労働行為(Unfair Labor Practice)」という労働側全面勝訴の判決が下るとともに、会社側に現労働契約にもとづいて労働者の職場復帰を命令した。また、裁判所の作成した謝罪文にサインして、会社内に張り出すことを命じていた。
わたしは、ブロードウェーの北から南まで歩いて撮影取材している途中、偶然ストライキのピケットに出会い、今年の2月から取材を続けてきていた。オバマのアメリカで進行する貧富の格差の象徴的な出来事のように思えたからだ。
1人の脱落者を出すこともなく、整然とストライキを続けるステラドーロの労働者に地域住民や大手労働組合の支援の輪がひろがっていた。事実、ピケットラインを張る労働者のそばを通り過ぎる消防車やトラック運転手が、クラクションを鳴らして連帯の意志を表明する場面をわたしはなんども目撃している。
5月30日、ハーレム川沿いのショッピングモールから、ブロードウェー沿いに大規模はデモ行われたときには、道路のうえの高架橋を走る地下鉄1号線の運転手が汽笛を鳴らしながら、運転席から手を振ったのには驚かされた。
24時間のピケット態勢が、のちに朝6時から夜の10時までに短縮されたものの、シフトを組みピケットラインを維持。出勤簿をつけるなど、労働者の規律もしっかりとしていた。取材中にピケットラインに置き忘れた雨傘を、次回の取材時に労働者が渡してくれた。思わず涙が出そうになった。泥棒やスリが横行するニューヨークでは考えられないことだ。

個人投資会社がステラドーロを買収したのは、組合をつぶし、労働条件を引き下げることで、会社の価値を高め、会社をふたたび売り飛ばすこと。組合との話し合いの中でも、公然とその目的を組合員の前でも口にしていた。
Brynwood Partners の本社はブロンクスからフリーウェーで30分ほどの、コネチカット州グリニッチにある。全米で最も裕福なところで、住宅も最低で5億円するといわれている。
ステラの組合員がバスをチャーターして本社にむかい、初めて抗議行動のときに本社を見た。ニューヨークから郊外に向かうメトロノースの駅が道を隔てた前にあり、フリーウェーのインターからも至近の距離にあった。
初めて自分たちを苦しめている個人投資ファンドを前に、ためらい気味の労働者の抗議の声に耳を傾けることもなく、社員たちはゆっくりと庭で昼食をとっていた。何ともやりきれない気持になった。

写真の広場-グローバルフォトエクスチェンジ情報室
ニューヨークからはるばる抗議にやってきたステラドーロクッキー工場の組合員をしりめに、会社の庭で昼食をとる個人投資ファンドBrynwood Partnerの社員たち=5月11日、コネチカチット州グリニッチ
(Gliobal Photo Exchange)
組合の指導的メンバー、マイク・フィリポによれば、リストラの矛先まずクッキーの運搬を担当していたチームスター労働組合に。
所属する組合員運転手20人あまりが割り増し退職金をもらって、解雇退職。うち2,3人が個人のトラック輸送業者としてあらたに会社と契約、トラック持込で同じ業務を続けてきたという。
今回の労働組合の苦い勝利は、ブッシュ政権下でなんども敗訴していた労働側が、オバマ政権誕生を追い風に初めてNLRBの裁判で勝利した画期的なものだった。
また今回の裁判を担当したリーチNRLB次席検事は個人投資ファンドの不当労働行為に対して、労働者が訴え出た全国でも最初のケースで、歴史的重要性を持つとわたしのインタビューに答えてくれた。
会社側は上訴することができたが、ワシントンのNLRBの理事会メンバーは大統領の指名で決まる。上訴しても勝ち目がないことを見越し、復職」許可と工場閉鎖決定を下したと見られる。
敗訴にともなう工場閉鎖は、資産家階級がオバマ政権の労働者よりの姿勢に警告を発したという観測も一部で流れている。

7月16日にNAACP の100周年の総会に出席するオバマは、今回のストライキも工場閉鎖のニュースも知らないと思う。しかし、今回の個人投資ファンドの決定は回りまわってオバマ政権の足元をおびやかしていくことに気づかされるときがやってくるに違いない。
(Global Photo Exchange 菅谷洋司)

メモ:
・しっかりと取材していた保守系紙ニューヨークポストの報道 によれば、リーチ次席検事は、工場閉鎖はバーゲニングのための戦術であり違法。閉鎖すれば再開をNLRBが命令することがあると報じた。
事実とすれば、今現在行われている工場前集会での会社の説明が注目される。しかし、この報道は誤報。リーチ次席検事に、メールで直接問い合わせたところ、"I was seriously misquoted "と述べ、電話取材した記者に記事訂正を求める手紙を送った。)
左右を問わずステラドーロ労組にシンパシーを持つブルーワーカーに気をつかったようだ。
6月28日の記事以来、30日の判決にも沈黙していたディリーニューズ が組合の職場復帰で7月8日に初めて記事を書いた。写真説明で、支援者の2人の女を組合員とまちがえているのは、ほとんど記者が現場取材をしていないからだろう。
日本でもケーブルテレビ朝日ニュースターで見ることができる

ひとこと:
・日本でいえば、千住あたりの有名和菓子店が、大手の菓子メーカーに買収され、大してもうからないので、お菓子を作ったこともない投資ファンドに売られたようなもの。日本でもありうる話だと思った。
ちなみにステラドーロ労組の上部団体BCTGMはパン職人、ケーキ職人、タバコ製造労働者、製粉業労働組合が合併して、現在の組織になった。その再編過程は業種の境を越えて、買収合併が行われた食品産業の展開と連動している。

・つたない会社の決算などで帰国中のわたしは明日朝の工場前集会にいけない。花束が組合員に渡されるらしい。残念だ。
日本のメディアが報道することはないだろう。だが、じわじわとストライキの苦い勝利がアメリカ社会に影響を与えていくに違いない。

にアクセス。
CASE/JDNumber 02-CA-38960/JD(NY)-26-09を探すこと。
日々、他の判決が出ているのでどんどん下に移動する。

復職現場からの速報:
写真の広場-グローバルフォトエクスチェンジ情報室
復職のため、工場前に集まったステラドーロ労組の組合員。後方はブロードウェーの上を走る地下鉄1号線の高架橋=7月7日午前8時過ぎ
photo by Marty Goodman
10カ月以上のストライキの後、職場復帰するステラドーロ労組の様子と写真を支援者の1人であるマーティーが送ってくれた。
90日以内にブロンクスにある工場の敷地を売り、どこかに移転すると会社側は声明を出しているが、それでも組合員はそれまで入ることのできなかった慣れ親しんだ工場に笑顔で入っていったという。
マーティーによれば、7月17日にも工場移転反対で支援者と労組員の集会が開かれる予定。不買運動は中止されたが、職を確保するための闘争は終わっていない。
写真の広場-グローバルフォトエクスチェンジ情報室
これまでストライキ参加者には閉ざされていた工場正門でチェックを受けるリーダーのマイク・フィリポさん(左から2人目)とBCTGM Local 50の専従委員長ジョイス・オーストンさん(右)=ニューヨーク・ブロンクス 7月7日午前9時30分
photo by Marty Goodman
現場の様子を原文で一部引用する。
Marty Goodman 7/7/09

BRIEF SUMMARY

Striking Stella D'Oro workers went back to work today ending the strike of 10 months. Thier strength was phenominal. They went back because the company complied yesterday with an NLRB ruling.

People seem to be glad to be back at work and remain strong. They will work under the old contract and must negotiate a new one. Without a strike, that will be difficult. Solidarity is definately needed more now than ever.

Also, the company bosses sent out a release yesterday saying that they want to sell the building and relocate in '90 days. We are preparing to launch a struggle against that. It will certainly be used to squeeze concessions. Its a big threat that we must struggle against.

The union, workers and supporters will devise a strategy to continue the struggle against the closure and for a new contract. The union wants to hold a big rally. The support Committee has discussed a July 17 rally. Apparently the boycott is off, says the union.