【ショート】「喫茶店」 | 〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

〈 追 憶 の 向 こ う 側 〉

筆者のリアル体験物語。「社内恋愛」を題材にした私小説をメインに、創作小説、詩を綴っています。忘れられない恋、片思い、裏切り、絶望、裏の顔―― 全てが入った、小説ブログです。


::: 追憶の向こう側 :::



駅前の、いつもの喫茶店。

会社と家の間にある、オアシスだ。


親友は、バナナジュースがお気に入り。

甘すぎず、果肉がゴロゴロ。食感が良い。

影響からか、私まで虜になってしまった。


道路が見下ろせる窓際に座り、楽しくお喋り。

何時間話しても、足りないくらい。


…ふと、店内の奥に、ある人を見つけた。

席が壁に隠れていて、全然気付かなかった。


大好きな人が、煙草を燻らせながら珈琲を飲んでいる。


大人っぽくて、見とれてしまう。


「 行ってきなよ 」

親友の声に、我に返った。

切なく見つめた、私の気持ちを解ってくれる人。


「 うん。じゃあ…少しだけ、行ってくるね 」

微笑み頷いた親友に、同じように返して席を立った。



一歩、二歩と、彼に近づく。

「 何してんの? 」

遠慮気味に、そろりと声を掛けた。

私が見ても解らない書類に、目を落としていた彼。

眉を寄せ、難しい顔をしたまま、顔を上げる。


「 え、あれ? 何でいるの? 」

「 友達とお茶してるの 」


私が目を向ける方へ、彼が身体を乗り出す。

親友が微笑んで会釈をすると、彼も返した。


テーブルに、サンドウィッチを発見。

美味しそうな、ミックスサンド。


「 美味しそ~。一個ちょうだい? 」

「 ダメだよ。晩メシなんだから 」

「 …あっ、そーか 」

「 お前、家に帰ったらメシ食うんだろ? 太るぞ 」

「 んもー… 」


唇を尖らせ、ショックを受けたという表情で彼を見る。

クスクスと、彼が笑った。

眉間からは、皺が消えている。

いつもの、優しい笑顔に戻っていた。


「 一個なら、いいぞ 」

「 ホント!? わーい! いただきます 」


パクッ。

美味しそうに頬張る私に、少し離れた場所から声が上がった。


「 ずるーい! 」


親友が、つまらなそうにこちらを見ている。

彼と目を合わせ、笑った。


緩やかに流れた、優しい時間。

いつまでも続けば良いと思っていた。

それは無理だと知りながら、願っていた。



落ち着いた雰囲気の、渋めな喫茶店。

ふいに想い出し、心の奥が熱く疼く。


戻れない、懐かしく遠い日々に、想いを馳せた。




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最後まで読んでくださり、ありがとうございます。(*・ω・)*-ω-)) ペコリ
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