第二章 (直感)は災害予知に利用できるか
イギリス・ウェールズ地方のアバーファンという村に'エリル・メイ・ジョ-ンズという少女が暮らしていました。
エリルは'一九六六年十月二十日の朝、母親に次のように語ったそうです。
「学校の夢を見たの。
でも、なにもかも黒いもので覆われていたわ」
エリルがロにしたことは、のちに述べるように、翌日には現実となりました。
イギリス南部で隠居生活を送っていたアレキサンダー・ベンという男性も、しばらく前から強い予感に見舞われていました。
ベンは妻に
「近くでとてつもなく恐ろしいことが起きる」
と語っていたそうです。
日がたつごとに予感はますます現実的に感じられるようになったので,アマチュア画家だったベンは'ついに黒い大地に人の頭が埋まっている絵を措きました。
十月十九日水曜日の夜には、イギリス各地で大勢の人が同じような悪夢を見ました。
ある女性は'深い暗闇のなかで息ができなくなる夢を、また別の女性は'山の一部が崩れて大音響とともに斜面をすべり落ちてくる夢を見たと言います。
二十日木曜日の夜、プリマス在住のC・ミルデュー夫人は、宗教的行事に参加していたときに幻視を体験しました。
幻視は奇妙な内容で'映画のように進行したそうです。
夫人が目にしたのは、谷間に建つ学校で'前髪の長い少年がおびえている光景と'石炭の土砂に埋められた人々を助けようとする男たちに向かって'山から新たな土砂が襲いかかってくる光景でした。
ひとりの男は先端がとがった奇妙な帽子をかぶっていたそうです。
二十一日金曜日の夜明け前、ロンドンの南にあるプライトンという街に住むシビル・ブラウンは、恐ろしい夢から目覚めました。
それは'せま苦しい公衆電話ボックスのなかで子供がおびえて悲鳴をあげているというものでした。
また、別の子供も大量の黒い物体に容赦なく追いかけられ'こちらに向かって駆けてきていたそうです。
ちょうど同じころ、ロンドンでもひとりの女性が、_部屋の壁が崩れ落ちてくるような夢を見て、重苦しい感覚から息苦しさにあえいでいました。
またイギリスの北部では'ある老人が夢で「ABERFAN&」というきらきら光る文字を見てへとても気になったと語っています。
二十一日朝九時を過ぎたころへ少女エリルは友達といっしょに小学校に登校しました。
学校のすぐとなりにはアバーファンの村を見下ろす山がそびえていて、頂上には炭鉱で採掘された石炭のぼた山が一八〇メートル以上も積み上げられていました。
ぼた山は'数日前に降った大雨のなごりできらきらと輝いていたそうです。
九時十五分,午前の祈りの時間が終わると、子供たちはめいめいの教室に戻って点呼を待っていました。
ちょうど同じ時間、学校からそれほど遠-ないところにある飛行機工場で秘書をしているモニカ・マクピーンはとてつもなく恐ろしいことが起きるという予感にいきなり襲われました。
黒い山が動きだし'子供たちを生き埋めにするという恐ろしい映像が脳裏をよぎったのです。
それは現実となりました。
大雨の影響で崩れやすくなっていた数百万トンのぼた山が崩れだし,山の斜面をすべりながら雪だるま式にふくらみ、高さ一二メートルにもおよぶ黒い大波となって,住宅や樹木をことごとくなぎ倒しながら学校に襲いかかったのです。
この事故で、少女エリルを含む百人以上の生徒が黒い物体によって生き埋めとなりました。
エリルの夢と同じように'学校そのものが1瞬にして失われたのです。
救助隊は遺体を掘り返そうと日夜を問わず作業を続けましたが'犠牲者は最終的に百四十四人(大人二十八人'子供百十六人)にものぼりました。
このニュースはイギリス全土において週末を通して報じられ'事故を予知していた人々の耳にも届きました。
ミルデュー夫人は日曜日にテレビでニュースを見て、穴を掘っている場所が幻視で見た光景とそっくりであるのを確認しました。
恐怖に駆られた様子の前髪の長い子供や、先端のとがった奇妙な帽子をかぶった男も映像に出てきたそうです。
それはまるで、夫人がニュースを前もって見ていたかのようでした。
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