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求められる政治的指導力
温室効果ガスによる気象変動はわたしにとってもっとも大きな懸念事項だが、政治家にとってもそうであってほしいものだ。
アメリカ政府は、今後、環境や国内問題の政治的方針を変えるよう、他の国々から強く圧力を受けるだろう。
ブラジルや日本とともに世界の環境問題に取り組み、指導的役割を果たすよう努力すべきである。
事実、指導力不足は、温室効果ガスの排出を止められないでいる大きな原因だ。
アメリカは排出を止めるどころか、CO2排出の五パーセント削減を定めた京都議定書に反対の立場をとっている。
また日本でも、前年より汚染は三パーセント増え、ブラジルでは伐採
や焼き畑が頻繁におこなわれている。
わたしは過去の手紙のなかで、つぎのように訴えている。
「いかなる気象変動であれ、その原因となる汚染を引き起こす当事国に対して、世界の国々は化石燃料の消費を大幅に削減するよう要求すべきだ」
CO2排出問題の解決を妨げる要因はもちろん指導力不足だけではない。
産業によって気象変動が引き起こされたということは、解決に向けた動きは経済にブレーキをかける可能性がある、ということでもあり、たいへんデリケートな問題だといえる。
化石燃料輸出にたよっているOPEC(石油輸出機構)の個々が抵抗を示していることからも、それはわかるだろう。
国際的な環境政治を入念に実行していく手腕が求められているのである。
ひとつ間違えば、環境問題の議論は国際的な混乱を引き起こし、アメリカ対欧州連合、あるいは、先進国対発展途上国といった対立が起きる可能性がある。
とくに発展途上国は、環境問題の議論は、先進国による経済発展への介入だと誤解するおそれさえある。
このほか、化石燃料に代わるクリーンなエネルギーを発見し、エネルギー効率を最大限にまで上げる技術革新も望まれている。
経済的な動機だけではおそらく実現しないだろう。
企業は潜在的な利益が大きいと確信できなければ、研究投資を積極的におこなわないからだ。
政府主導の研究は費用がかさみ柔軟性に欠くが、無策のままでは被害はよけいに広がってしまう。
困難がいかに大きかろうと、まだ希望がある。
わたしがそう思うのは、ひとつには、CO2排出問題の解決に向けて、アメリカ、ブラジル、日本が指導的役割を果たす可能性があると見ているからだ。
毎年排出されるC02の半分以上に責任を負っている、アメリカ、欧州連合、中国という三つの大勢力を、排出制限の模範的政策に巻き込めば問題解決は容易になる。
これに加え、ロシア連邦、日本、インドも交えた環境協定を取り交わせば、全排出量の三分の二削減を達成することも夢ではなくなる。
地政学とエネルギー
人類はエネルギー効率を向上させようと努力を積み重ねているが、エネルギーの稔消費量はこれから一四年のあいだに六五パーセントほども増加する。増加分の大半は石油の消費によるものだ。
再生可能エネルギー(水素、太陽光など)は、二〇二三年になっても、
エネルギー全供給量の一〇パーセントにも満たない。
中国、ロシア、インドは原子力発電を増やそうと計画しているが、核廃棄物の保管には危険がともなうため、世界的に見れば、おそらく一〇年先には利用が減少する。
二〇二一年以降になると、エネルギー不足によって大規模な停電が頻繁に発生するようになる。
世界の国々のうちでも、とくに中国とインドの経済成長が大停電を引き起こす大きな要因となるだろう。
二〇二三年まで経済成長を持続させるために、中国ではエネルギー消費を二〇〇パーセント、インドでは三五〇パーセントも増やさなくてはならないのである。
しかし、中国とインドは国内にエネルギーを行き渡らせる手段を持たないため、つねに外国に依存することになる。
外交や防衛手段(とくに海軍力)の拡張は、エネルギー需要を考慮しながら入念に推し進めなければならない。
中国ではつねにエネルギー需要が発生するため、アフリカ、ラテンアメリカ、中東などの国々は、今日より活発な役割を果たさなければならなくなるだろう。
エネルギー生産国への依存度が増すことで、中国はアメリカの圧力に弱くなる。中国の政府機関は、アメリカのエネルギー政策は北京に攻撃的だと思うようになるだろう。
このように、石油は地球規模の気象変化の決定的要因でありつづけるだけでなく、大国同士の新たな対立を引き起こすことにもなる。
エネルギー需要が引き起こす激しい競争は、石油供給のいちじるしい阻害をともなうことにもなる。消費に厳しい制約を課さなければ、戦争の火種になるだろう。
一方、原子力発電をおこなっている国々も警戒が必要である。地球温暖化による熱波と、太陽の表面爆発による影響で放射能漏れが発生し、国家規模の危機が訪れるからだ。
ヨーロッパの洪水
ヨーロッパは頻繁に洪水に見舞われるようになり、イタリアでは水によってベニスがまるごと消滅する。
フランスにも大きな災害が襲いかかる。光の街パリは、歴史的な建造物
や記念物、博物館、教会などが立ち並ぶ美しい都市だが、同国で最大の被害を受けるだろう。
二〇二五年七月一六日、セーヌ川の水位が上昇し、シャンゼリゼ大通り、凱旋門、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂、エッフェル塔が水浸しになる。こうしてパリは、都市そのものが「自然の虜囚」となる。
大災害を回避するためにすべきこと
ここでは、わたしの提案を述べておく。メタンや煤め排出量削減を地球的規模で実行し、二〇〇九年の終わりまでに二酸化炭素レベルを最低でも六〇パーセント減少させること。
それから、代替燃料に対して税の優遇策を施行し、公共輸送機関の改良と拡張をおこなうこと。
さらに、環境保護に向けた法の整備をすること。すみやかに植林を推し進め、災害予報システムの開発に投資することも大事である。
もちろん、これだけでは十分ではない。わたしたちはいつも、政府が国民の安全のために何かしてくれると思っているが、自然と人の健康を害する問題の大半は、自ら選んだ生活様式に原因があるのだ。
ひとりひとりが世界の混乱に責を負っている。たとえば、アメリカでは、二酸化炭素(温室効果ガス)の排出量の六五パーセントは、個人が通勤や週末旅行に用いている乗用車からきている。
環境を荒廃させる勢力と戦うのと同じくらい、日々の生活習慣を変えるこ
とも大事なのである。
地球の環境を改善するためにだれもができること/すべきことは、つぎのとおりだ。
・水を節約すること
・汚染をこれ以上引き起こさず、植林をおこなうこと
・ゴミの分別をきちんとおこない、川を汚さないこと
・むやみに金もうけにまい進しないこと(地球を犠牲にしてまで金を稼ぐ意味はない)
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