わたし-では'自分が書いたものにほんとうに気づくのは、催眠状態から覚醒したあとですか?


ノストラダムス-そのとおりだ。

催眠状態にあるあいだは、書くために両手の自由はきくのだが、自分が何を書いているのかはわからない。鏡の向こうから来るエネルギーが手を導いているのではない。現実に戻ってきたときには、さっき見ていたことはわかるけれども、書いたことのほうはわかっていないのだ。


わたし-では'四行詩に入っている謎はあなたが催眠状態のあいだに入れたのですか?それとも覚醒してから入れたのでしょうか?


ノストラダムス-催眠状態のときだ。


わたし-すると'意識してああいう謎をこしらえたわけではない?


ノストラダムス-そうだ。もちろん普通の状態でも謎は作れるから私信ではよく使うが、催眠状態で作ったものの複雑さにははるかに及ばない

鏡から意識を戻すと'いつも謎の復雑さに感嘆してしまうよ。

そこに盛り込まれている意味のすべてても、意味の配列も'微妙な言いまわしも、みな自分が予見した状況から推察できるわけだからね。

しかし、意識状態にあるわたしの心とちがって'言葉を操って謎を作るのをもっと得意とする要素が、何かほかにもあるのだ。

催眠状態にあるとき、わたしは次から次へと数種類の場面を見るが、いざ目が覚めると詩が一篇しか書けていないことがある。こういう場合は'見てきた数種の別々の出来事がすべてその四行詩に結びつけられているのだ。


わたし-四行詩はひどく複雑で'常人の理解能力を超えていると思います。

謎解きの大名人ででもなければとても無理ですよ。


ノストラダムス-たしかにそうだ。だからこそ、この計画が大事なのだ。

人間たちがこれらの四行詩を解釈する助けになる存在との接触を回復するための計画なのだ。


 右の話は自動筆記の好例と思われる。


覚醒時にも催眠状態時にもこの自動筆記ができる人は多いが、この方式によってある個人にまったく未知の事柄がもたらされるという事例はよくある。

現在ではこれはたんにその人の潜在意識の働きによるものであって'別個の存在によって手が動かされているのではないというのが定説だが、ノストラダムスの場合は議論の余地がありそうだ。


わたし-歴史が進むあいだに、ノストラダムスの予言は自分のことを言っているのだと称しても意味をこじつけようとした支配者がいろいろありましたね。


ノストラダムス-ああ。(くっくっと笑って)支配者のいるところでは珍しくない駆け引きだ。


わたし-謎や、アナグラムや、言葉に別の意味が込められていることによっても'問題が生じているのですよ。


ノストラダムス-この計画を始められてよかったと思う理由の一つはそれなのだよ。


そのとおりだった。始めたのはノストラダムスだ。エレーナを通して初めて彼が話しかけてきたときにはひどく驚いたものだ。


ノストラダムス-驚くのはわかっていたが、このような対話に偏見を抱いていないから好都合だとも知っていた。


わたし-・ええ、好奇心が強いから、こんな幾全は見逃しません。


ノストラダムス-好奇心の強い人間ならいつでも歓迎だ。自信家だとすでに充分知っているから、周囲に塀をめぐらしてよしとしている。しかし、好奇心の強い人間ならこう言う。

「自分はかなり知っているが'つねに学ぶことはある。だから知りたいのだ」と。


わたし-理解してくれているのですね。でも'どぅして現代にあなたの四行詩を翻訳するのがそんなに重要なのです?


ノストラダムス-言葉が誤っていたら、予言など意味がない。正確でなければ、人々を助けるために役立てないのだ。


わたし-おっしゃるとおりです。あまりにも難解だから'事が起きたあとで理解される四行詩が多いのですが'それでは遅すぎます。


ノストラダムス-問題は'一つにはわたしが述べようとしていることが人知をはるかに超えていることだ。そのため実際に目の当たりにするまでそれが認識できないのだ。


わたし-ええ。でも、それは聖書にも当てはまります。彼らが見たことはむずかしすぎて理解できなかったため、象徴を用いて書かなければならなかった。疲れてきたらそう言ってくださいね。


ノストラダムス-もうしばらくは持ちこたえられるだろう。

対話の連絡がこの前はど明瞭でないので、どの程度続けられるか。

だがこれは大事な仕事だから、必要ならば少々の無理はかまわない。


わたし-体を酷使しないようにしてください。それが心配なのです。


ノストラダムス-この接触回線を作ったのは、わたしの体に永続的な害を及ばせないためでもあるのだ。この方法ならわたしの体の負担が過度になりはじめると、研究室まで引き戻され'二、三日ほど頭痛とめまいがするだけですむのだ。あなたの時代との接触方法はこれ以外にもあるが、体に害がな-、曲解したりせずに知識を扱う仕事をやれる相手と確実に連絡がとれることが大事だからね。


わたし-そうですね。間違いが生じては困るし、霊媒をないがしろにする人たちもいるので'わたしも気をつけているのです。


ノストラダムス-そのとおり。有能な霊媒は貴重だから'大事にしてやらねばならないよ。


わたし-こういう内容を書くにも、できるだけあなたの趣旨に忠実にとも相当に慎重にしています。


ノストラダムス-感謝する。面倒もあるだろうが、しかしあなたは明らかに今の人生に入る以前にこの件を引き受けると承諾しているのだ。承諾したからこそ、あなたの保護に必要な宇宙エネルギ- がどんなときにもあなたを援護しているのだ。


わたし-大丈夫です。ここまで来たら'好奇心が強すぎてもう中途で放棄はできませんから。