同じお題で「鯉」の話2 | ドアを開けろ

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前回の続き。


靱帯断絶の大怪我をして、日赤原爆病院に入院して手術の日を待っていた。


そんな朝、看護師さんが「銀蔵さん悌毛(ていもう)しますよ」と言って剃刀と石鹸を持って病室にやってきた。


悌毛・・とは何ですか@@!


文字通り毛を剃るのである。


その前に、ギブスを切断する。


サンダーと呼ばれる工具でギブスを切るのであるが、看護師さんが慣れてないのか恐ろしく怖い。


「工具の扱いは慣れてますから自分でやります!」と言ったが聞き入れてもらえず為すがままにされる。


もうちょっとでお漏らししそうなくらい怖かった。


無事にギブスが外れると泡泡を立てて悌毛が始まる。


足首から股間の付け根までツルッツルにされる。


股間を剃られなくて良かった。


そうこうしている内に時間がやって来て、数人の看護師さんに抱えられ、ストレッチャーに乗せられる。


もう逃げることも隠れることも出来ない。


白い天井のボードを眺めている内に手術室に到着する。


テレビでよく観る手術室と同じで、上からはシャンデリアの親玉みたいな照明がブラ下がっていた。


名前を確認されると麻酔科の先生が「ハイ、数を数えてくださいね~」と、言われるままに5つも数える間もなく意識は銀河の彼方に飛び去った。


よく、「まな板の鯉」と表現されるが、まさしく鯉の状態である。


残念なことに鯉になった事はないが、まな板の上で捌かれる鯉の気持ちがよく分かった。


「どうにでもしやがれ!!」って心境である。


3ヶ月の入院中、同じ部位を2回手術し、数年後に半月板を傷めてまた手術。


交通事故で首を傷めてまた手術とオレの体は「鯉の洗い」のごとく斬り刻まれた。それでも生きている。


オレは鯉の気持ちが分かる唯一の人間かも知れない。



以上「同じお題で鯉の話」でした。