人みなは萩を秋といふよし我は尾花がうれを秋とはいはん ―万葉集
日増しに夜が長くなり、秋風に「薄(すすき)」が揺れる様に秋の気配を感じる頃となりましたが、
シルバーウイークの最中はいかがお過ごしですか?
かの“白州次郎”が理事長だった名門コース『軽井沢ゴルフ倶楽部』
昭和の初め(昭和6年開場)からの歴史を誇る『軽井沢ゴルフ倶楽部』は、軽井沢にひっそりと佇み、俗世とはかけ離れた別世界の空間で、古より“軽井沢別荘族”優雅な遊び場です。
さて、秋には掲歌の万葉の歌のごとく、「薄」が野に群生し、大きな穂が風に揺られている・・・
そんな風雅な様が、古来より秋の光景のひとつですが、
「薄」は秋の七草の1つに数えられ、「万葉集」の中には、ススキ・をばな・かや・み草の名前で45首に登場し、
また穂が出始めたばかりの尾花は、“花すすき”や、“はだすすき”として詠まれています。http://www6.airnet.ne.jp/manyo/main/
この事からも、古くより「薄」は、秋を代表する風物詩として定着し、
さらに「薄」は「萩」よりも“秋らしい花”・・・と掲歌で詠まれていますが、
しかし、普段何気なく「薄」だと思いながら見遣る風景の中で、長い穂を風に揺らしているその草花は、
実は、同じ秋の代表的な風物として古くから和歌に詠まれている「荻(をぎ)」であることも多く、
余程注意深く見ないかぎり、「薄」と「荻」の違いが未だによく見分けられない程です。
ちなみに、この二つの見分け方は、先ず「荻」の特徴としては、「薄」にそっくりながらも湿地に群生し、
純白で花が大きいことで区別されますが、
その名は“風になびく姿が霊魂を招き寄せるように見える”ことから、
“おぐ”(招)が“おぎ”に変化したものといわれ、漢字の「荻」は漢名からの由来です。
また「野守鏡」という鎌倉時代成立の歌論書には、京極為兼のこんな1首もあり・・・
「荻の葉をよくよく見れば今ぞ知るただ大きなる薄なりけり」と、こんな奇妙な歌が詠まれる程に、
両者の姿は酷似していると思われます。
『軽井沢ゴルフ倶楽部』は、かつて“白洲次郎”が理事長を勤め、コースを愛し、マナーに厳しく、キャディーさんを大切にし、「プレイファスト!」を徹底したゴルフ場としても有名ですが、この名門倶楽部のシンボルマークは、“赤いリス”です。
ところで、両者の詠まれ方を比べてみますと・・・
「万葉集」の「荻」は“穂に出づ”という言葉を伴うものが多く、「薄」の特徴である“穂”に着目して、
そこから掛詞的に、“穂に出づ”を導かれ・・・「花薄穂に出づることもなきものをまだき吹きぬる秋の風かな」
(後撰集)と、心に秘めた想いを明らかにする恋歌で、「薄」が用いられる例が多く見出されます。
さらには、僅か1例のみですが「古今集」棟梁詠のように、“薄の穂”がゆったり風に揺れる有様を・・・
「招くとてたちもとまらぬ秋ゆゑにあはれかた寄る花薄かな」(拾遺集・好忠)と、
“人を招く袖・袂の動作”に見立てても詠まれています。
次に「荻」は、吹く風の“音”によって秋の訪れを感知する歌も多く、
この“音”とは、実は“穂”ではなく“葉”で、「荻」は未だ“穂”が伸びきっていない感じで詠まれており、
対して「薄」は、“穂”が伸びきった状態を詠われているものが殆んどで、
このように両者の詠まれ方は、実際の姿形の違いよりも、「荻」を吹く風は“葉”を鳴らし、秋の到来を感じさせるものとして詠まれ、
また「薄」が風になびく様は、手招きする袖に見立てられ、秋を見送る惜別の情を託するものという具合に詠まれ、こうして互いに“穂”を持ちながらも、その詠み方には大きな隔たりがありました。
http://www5.pobox.ne.jp/~kochou/koten/susukiogi.htm
浅間山、日本アルプスそして八ヶ岳を望む高台に広がる丘陵コース『大浅間GC』
『大浅間GC』は、浅間山を背に日本アルプスから八ヶ岳連峰の眺望が素晴らしい丘陵地に展開するゴルフクラブです。http://www.daiasama.co.jp/
荻の葉を吹き越す風の音たかみ穂に出て人に秋を知らする―藤原仲実
このシルバーウイークは、そんな“秋の風物詩”「荻」と「薄」の違いを見分けに野山に出かけ、秋の優雅な様を素肌で感じられるようなよき休日をお迎え下さい。