八月や 浅間が嶽の 山すその その荒原に とこなつの咲く
―若山牧水
朝晩は心地よい涼風の吹く頃となりましたが、いかがお過ごしですか?
天現寺近くのビルの半地下に、キャンティーの流れをくむお洒落なイタリアン『Appia アッピア』があります。
野原では萩をはじめ、“秋の七草”が咲きはじめましたが、
掲句の“とこなつの咲く”の“とこなつ”とは、古くから「万葉集」にも詠まれている“秋の七草”のひとつ“ナデシコ”の花を指しますが、
この“ナデシコ”は、すでに現存する五風土記のうち唯一の完本「出雲国風土記」(733年)に、
仁多郡の諸山野に生える薬草草木の一つとして登場しており、このことから風土記が完成する以前から“ナデシコ”の名が、日本にあったことが伺われます。
その後の「万葉集」で“ナデシコ”は、山上憶良の“秋の七草の歌”に登場しますが、
“ナデシコ”の歌の25首中8首は、愛しい人の面影を“ナデシコ”に重ね合わせ、“美の対象”として詠まれていて、このことからから日本女性の“清楚な美”を讃えて、「大和撫子」と言う言葉が生まれたように思います。
また大和の国では、“ナデシコ”を敢えて、“ヤマトナデシコ”と言う謂れもありますが、
それは“石竹”と呼ばれる“カラナデシコ”の存在で、平安時代には、すでに紫式部や清少納言が・・・
「草の花は なでしこ 唐のはさらなり 大和のもいとめでたし うつくしきものはなでしこのはな―枕草子」
と、“カラナデシコ(セキチク)”と、“ヤマトナデシコ”を見分けていることが、書き残された文の中からわかりますが、この“カラナデシコ(唐撫子)”こそ、“とこなつ”のことで、
古歌などに詠われている“ナデシコ”とは、大抵はこの“カラナデシコ”です。
そして、その花言葉は、“純愛”“思慕”“貞節”と、まさに「大和撫子」そのものを表し、
また、その名の由来も、“可愛い子を撫でるような花”と言うことから、“撫でしこ”と呼ばれるようになりました。
『アッピア』の料理は、前菜やメインディッシュの食材がワゴンで運ばれてきて、自由に選ぶことができ、調理方法もリクエストに応じてくれます。
味付け・・・は、イタリアン・・・という感じより、日本人の好みの味付けで、素材を旨みを生かしてくれます・・・
由美ママ好みは、あっさりと“松茸”を焼いて、レモンをかけて・・・
『Appia アッピア』
*東京都港区南麻布4-11-35 tel03-3444-5801 18:00-25:00
久しくも にほふべきかな 秋なれど 猶とこなつの花といひつつ
―兼盛
今朝は、「大和撫子」のごとく、清楚ないでたちで、これから散歩に出かけますから、可憐に咲く“とこなつ”の花・・・を、野原にそっと愛でれるような風雅な一日をお迎え下さい。