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クイズ大会「天9」の感想(その1 「大阪秋の陣」勝利へのポイント)

「天9」というクイズ大会に参加した方に広く読んでもらいたい文章を書いたので、突然ですが、8年間停止していたブログを更新します。

天9 (livedoor.blog)

 

天2、天5の時も書いたOBA−Qチームの作戦記録です。

【クイズ回顧】OBA-Q「天2」作戦記録(2007.1.13) | 霞が関公務員の日常 (ameblo.jp)

クイズ大会「天5」の感想(その1.各ラウンドの出場者の選択) | 霞が関公務員の日常 (ameblo.jp)

 

今回は私は現場に行っていないので「OBA−Q 天9『想像』作戦記録」と名付けました。

私はクイズは弱いので出場はしないのですが、複雑なルールで勝つための作戦を考えるのは好きで、OBA−Q全体としても、そういう企画の方が力を発揮できます。

 

なので、最も複雑な第2ラウンドの丁コース「大阪秋の陣」という企画に絞り込んで、勝つための策を徹底的に考え抜いて「作戦の書」と名付けた文章を書いて出場メンバーに託した、というのが私の役回りです。

 

その「作戦の書」の内容と、当日の現場でどうなったかの顛末を記していきたいと思います。

なお、その書いた作戦がどの程度取り入れられたのか、私は知りません。なので、私が考えた部分ではない、実際に現場で起きたことについては、すべて私の想像です。

 

「大阪秋の陣」のルールは、こちらをご覧ください。
https://www.dropbox.com/s/2pkjtbl9mbs3drr/ten9rule.pdf?dl=0

 

最初に、この文章を書くことにした理由を書いておきます。

私はクイズ界に知り合いが少なく、クイズの作戦論を深く交わせそうな知り合いが、同チームの上野と玉Qの市川君の2人しかいないことを、いつも寂しく思っています。

 

この文章を読んだ方の中から、クイズの作戦論というものに興味がある、あるいは自分も得意だという人の輪が広がっていくといいなぁ、などと考えました。(←そういう方がおられたら、このブログにコメントいただくか、OBA−Qのどなたかに伝えてもらえるとうれしいです。)

 

話が長くなるので、8回シリーズぐらいに分けて書いていきます。

少し時間がかかるかもしれませんが、気長にお待ちください。

 

また、「大阪秋の陣」で対戦した3チーム、MQC、シンサクール蒲田、東大寺学園のことにも言及しており、気を悪くされる記述があるかもしれません。なるべく気をつけたつもりですが、ご容赦ください。

市川君も再三再四登場し、やや失礼なことも書く予定がありますが、ごめんなさい。あらかじめ謝っておきます。

上野は30回ぐらい登場し、超失礼なことを書きまくりますが、まあ別にいいよね。

 

 

 

OBA−Q 天9『想像』作戦記録

 

作:想像上の作戦参謀 黒川陽一郎

 

1.「大阪秋の陣」勝利へのポイント

 

(1)作戦全体の2本の軸

大阪と堺の両方を取れば勝つことと、片方も取れなければ負けることは、ほぼ決まっている。

したがって、「大阪と堺のどちらかを取れば勝てる」形がベスト、「堺では勝てないが大阪を取れば勝てる」のがセカンドベスト。

 

我々の実力からして、堺を取れば勝てるベストの形は作れないと考えた。

したがって、中盤までに「大阪を取れば勝てる」形を作ること、その形を作れたとして最終盤に大阪を取る確率を最も高める機動をすること、というのが作戦全体の2本の大きな軸となる。

 

むろん、大阪と堺の両方を取らないと勝てない場合や、堺を取れば勝てる場合も考えたが、それらの場合の最終盤の機動は、それほど複雑なものではない。

大阪だけを狙って取る場合に限り、他チームの動向を考え合わせた複雑な機動が最終盤に必要になるので、そこを重点的に考えた。

 

大阪だけを狙って取る場合のポイントは、何問目以降の正解で大阪に入るか。

早すぎれば別のチームに上書きされ、さらに上書きするには2問の正解が必要となり苦しくなる。

遅すぎれば正解できず、大阪に入ることができず負ける。

そのバランスは何問目ですか、ということ。

 

詳しくは「作戦の書」に譲るが、基本は57問目以降の正解で大阪に入るべきという結論を出した。

ただ、他チームがどこにいるかで、54〜56問目で入るべき局面もある。例えば、他3チームが大阪にいる状態で大阪に入れば、どこかのチームが2問正解するまで大阪を維持できるので、早めに入ることが正着となる。

 

 

(2)スタート地点の選択

1つはっきりしていることは、柏原は不利ということ。

一見有利に見え、私も最初はそう考えたが、考えを重ねるうちに、4チーム中ただ1チームの勝利チームになれる確率は最も低い、ということが明確になった。

 

面積最大の河内長野は奪われると想定すると、北方を東大阪まで、南方を和泉(1つは岬に奪われるので実質は岸和田)まで押さえた上で、南東方面を手数をかけて埋める必要があり、その実現はなかなか難しい。

これはOBA−Qに限らず、全チームに共通だと思う。

 

次に、島本もあまり選びたくない。これも意外かもしれないが、柏原の機動に左右されすぎる。

柏原の初手が羽曳野であるならば、島本は比較的有利。しかし、私の分析(作戦の書で書きます)によると、柏原にとってのベストの序盤の機動は、八尾→東大阪→大阪→堺。

これは防ぎようがなく、これをやられると「大阪を取れば勝てる」形を作るのは困難。

 

また、OBA−Q特有の事情もある。

島本が取れそうな北東部は小さな市町村が数多くあり、全部取るまでに手数がかかる。

OBA−Qには強いメンバーもいるが、平均値としては強いチームではなく、正解数は平均より少ないと見込まれ、手数が不足する可能性があった。

 

残った能勢と岬の共通する強みは、手数が少なくて済むこと。能勢も岬も最低7問の正解で勝てる可能性がある。

7問はあまり現実的ではないにしても、この両者が勝つ場合、9〜10手あたりが標準。一方、柏原は13手、島本は12手が必要になる可能性が高い。

 

能勢と岬は好みの問題。私は能勢が好みで、能勢をスタート地点とすべきと強く主張した。私の挙げる能勢のよいところは4つ。

1つ目は、岬と比べると封鎖されるリスクが小さいこと。岬はほぼ1/2の確率で柏原に封鎖され、勝負権を失う。

2つ目は、奪い返しにあうリスクが小さいこと。柏原は河内長野を、岬は和泉を奪われるリスクを常に考える必要があるが、能勢が大阪・堺に接するのは豊中と吹田。まず奪われることはない。

 

3つ目は、秘策、高槻奪い返しの存在。奪い返しは、基本的に大阪・堺に接する市町村に対して用いられる。それは再度奪われるリスクがあることを意味し、使うタイミングが非常に難しい。

しかし能勢には、面積が2番目に大きく、大阪・堺に接していないため再度の奪い返しに遭いにくい、高槻を奪える可能性がある。

その条件は摂津を取ること。摂津は高槻と大阪を1手でつなぐ唯一の市。島本の2手目より先に3手目を取ることが必要になるが、OBA−Qは第1セットに春日・関口仁の2人を投入するので、その可能性は十分にある。

 

4つ目は、メンバーに失礼なので言わなかったが、第2セットの弱さを心配した。

岬は5手目で岸和田に出るまでが重要だが、4手目あたりでセットが代わり、春日・関口仁が下がり、代わったメンバーが5手目を取れないことを心配した。

一方、能勢で重要なのは摂津が取れるかどうかの3手目までと最終盤。第2セットはマイペースでゆっくり取れる。

 

ただ、メンバーの多くは岬を主張した。岬のよいところは3つ。

1つ目は、機動に迷うことがなく、クイズに集中できる。

2つ目は、能勢・島本のように、相手に3連答されてすぐ失格するリスクがない。

3つ目は、和泉に出られさえすれば、それなりの利を持って最終盤の勝負に参加できる。

他にもあったと思うが、私の意見ではないので説明は難しい。

 

選べる立場なら能勢か岬、おそらくは岬を選ぶことになるだろう。私はただの想像上の存在。現実への影響力は強くないのです。

岬を選ぶ場合に備え、1点だけ、最終セットの機動担当者、上野に伝えておく。岬の最終盤は、最も難解になることが約束されている、と。

 

岬の場合、単純に大阪を取れば勝てる展開にはならない。大阪を取った上で、堺をどこが取るかで勝敗が分かれる。最終盤、堺をどこが取りそうかで刻々と機動の方針を変えなければならない。

岬を選ぶならそのつもりで、ということを言ったつもり。

再開しま~す♪

さて、9か月もごぶさたしましたが、突然ですがひっそりと再開します。


長らくサボっていた理由は、私は気分屋なので「書く気分じゃなかったから」ということに尽きるのですが、あえてもっともらしい理由をつけるならば、実は結婚することになりまして、その準備で忙しかったから。

←「気分屋」のイメージ画像


書いてみて改めて思いましたが、うん、この理由は嘘ですね。
単に「書く気分じゃなかったから」の方が、自分の感覚に近いです。


この間、書きたいことはいろいろたまっていました。
消費税の増税や軽減税率について、最近の安倍政権の動きについて、ソチ五輪について、私も多少関わっている福島の放射線健康管理の問題について。


ただ、こういう堅い話を書くほどのエネルギーはまだたまっていません。
こういう話題はもう少し後にさせていただいて、しばらくは私事の話を書きつつ、堅い話を書けるエネルギーをためていくことにします。


とりあえずは、私の友人お待ちかね?の、結婚にまつわる話を数回。
次に、私の最大の趣味であるマラソンの話を数回。


その間に折々のニュースの話もはさみつつ、消費税の軽減税率か、福島県の放射線健康管理について連載するのを、当面の目標にしようかと思います。


結婚式を5月に控えているので、本当に書けるか自信はありませんが、何か再開したくなったので、軽い気持ちでとりあえず再開します。
今日はこんなところで。

ハズレ馬券は経費! でも、どういうときに?

 さて、またしてもかなり旧聞に属する話。
 5月23日の「ハズレ馬券は経費」という大阪地裁判決について(←いつの話だ)。

霞が関公務員の日常 ←「判決」のイメージ画像

 この件については、昨年秋、2つのエントリーを書いているので、参考に。
 ハズレ馬券は経費だ!
 ハズレ馬券は経費であるべきだ! けれども……(前回の補足)

 新聞とかの見出しだけだと、一般的にハズレ馬券が経費として認められた(当たりとハズレの損益通算ができる)ように見えますが、そういう判決ではありません。
 今回の裁判の被告である会社員男性の特殊な買い方に限って、認められたものです(さらには控訴されてるので、確定もしてませんが)。


 判決要旨 の重要部分を抜粋すると、


〇 原則として、馬券購入行為については、所得源泉としての継続性、恒常性が認められず、当該行為から生じた所得は一時所得に該当する。

〇 被告人の本件馬券購入行為は、一般的な馬券購入行為と異なり、その回数、金額が極めて多数、多額に達しており、その態様も機械的、網羅的なものであり、かつ、過去の競馬データの詳細な分析結果等に基づく、利益を得ることに特化したものであって、実際にも多額の利益を生じさせている。また、そのような本件馬券購入行為の形態は客観性を有している。そして、本件馬券購入行為は娯楽の域にとどまるものとはいい難い。

〇 被告人の本件馬券購入行為は、一連の行為として見れば恒常的に所得を生じさせ得るものであって、その払戻金については、その所得が質的に変化して源泉性を認めるに足りる程度の継続性、恒常性を獲得したものということができるから、所得源泉性を有する
ものと認めるのが相当である。

〇 被告人の本件馬券購入方法からすれば、本件においては、外れ馬券を含めた全馬券の購入費用は、当たり馬券による払戻金を得るための投下資本に当たり、外れ馬券の購入費用と払戻金との間には費用収益の対応関係があるというべきである。



 とてもクリアな論旨ですね。わかりやすい。


 この人の馬券購入の方法が通常のものではなく、「回数、金額が極めて多数、多額」「態様が機械的、網羅的」「過去の競馬データの詳細な分析結果等に基づき、利益を得ることに特化」という条件がそろっているから、もはや娯楽の域ではなく、馬券購入額の全体が経費として認められるというわけですね。



 また、とても興味深い新聞記事を見つけました。
 「認められた『馬券のプロ』競馬払戻金課税で判決 」(2013年5月29日日経新聞)という記事。すごく深く掘り下げて取材しています。


 私の感想はというと、一競馬ファンとしては、経費と認められてよかったね、というもの。
 一方、行政官としての私の感想は、仮にこの判決が確定したら、ハズレ馬券が経費と認められる基準を決めなきゃいけないけど難しいだろうねぇ、というもの。


 行政官は、両端に白と黒があり、その間にグレーのグラデーションがある場合、全体を見渡してグレーのどの部分でラインを引くのが妥当かを常に考えます。


 ラインの引き方は、個々の案件の色が白黒どっちに近いかだけでは決まりません。
 色だけ見ればあるラインで白黒つけられそうに見えても、多数の類似する案件が存在するど真ん中でぶった切ると、関係者の不公平感が高まって納得が得られません。


 個々の案件の色に加えて、全体としてどこで切るのが全員の納得性が高いかが、大きな判断要素となります。


 今回の件は、そういった面で非常に難しくて、困ります。
 「回数、金額が極めて多数、多額」とありますが、100回ならよくて99回ならダメなんでしょうか。1億円ならよくて9999万円ならダメなんでしょうか。


 「態様が機械的、網羅的」「過去の競馬データの詳細な分析結果等に基づき、利益を得ることに特化」も、うまく切れそうなラインがちょっと見当たらない。


 確かに、今回の会社員男性の事例に限れば、ハズレ馬券を経費とした方が法的正義にかなっているのはわかる。
 しかし一方で、この判決では、通常はハズレ馬券は経費とならず、この会社員男性は例外ケースだと言っている。


 となると必然的に、その中間のどこかで、ハズレ馬券を経費と認める・認めないのラインを引かなきゃいけない。
 でも、あまりに微妙すぎて引けそうなラインが見当たらない。だから、一律に経費と認めない方が全体としてはうまく回るのになぁ、裁判官は全体を見ずにその案件だけ見ればいいから気楽だねぇ、と自分が担当者なら愚痴りたくなりそうです。


 たぶん、裁判官から見れば逆なのでしょうね。
 行政官は、個々の案件を深く掘り下げて何が法的正義かを考えなくても、どこかそれっぽいところでライン引きゃいいんだから気楽だねぇ、という感じでしょうか。



 本件に限らず、これまでいろいろな裁判の判決を見てきて、行政官と裁判官の考え方の違いは面白いなぁ、とずっと思ってきました。


 一言で言えば、行政官は、個々の案件ごとの法的正義を深くは掘り下げず、システム全体が円滑に動くことを優先する。
 裁判官は、システム全体のことはあまり考えず、個々の案件について何が法的正義かを深く掘り下げる


 行政官の目から見ると、「勘弁してくれよ。視野が狭すぎるよ。全体のことを考えなきゃいけないこっちの身にもなってくれ」と言いたくなる判決もあります。


 でも、たぶんそういう考え方は間違っていて、個々の案件について裁判官が深く掘り下げて法的正義にかなった判断を下し、そうやって積み重ねられた「法的正義にかなった判断群」を分析・整理して、行政官がそれを一般化したラインを引く
 それが、あるべき行政と司法の関係なのでしょうね。


 そういったことをまた考えさせられた、今回の判決でした。



【補足】
 なお、実際には、仮に今回の判決が確定しても、税務当局はハズレ馬券が経費と認められる・認められないのラインは厳密には引かないと思います。


 当たり馬券への課税はレアケースなので、あらかじめラインを厳密に引いておかなくても、混乱は生じにくいので。
 事例が少ないのに無理やりラインを引くと、変なものになってかえって混乱を招いてしまいます。


 課税するのは、だいたいは今回と似たPATでの大量・継続購入でしょうから、それは基本的にはハズレ馬券を経費と認める運用をするでしょう。
 ただ、似ていない案件(一発で大量に儲けて勝ち逃げしたとか、暴力団の資金源になったとか)が出たときに備えて、経費と認めない可能性は残しておくでしょう。

復興庁幹部暴言事件の本質「関東からの自主避難を推奨すべきか?」

 もうだいぶ旧聞に属する話になりましたが、前回の「復興庁の幹部がツイッターで暴言 」の件の続編を。


 この件は、政府側は個人の資質の問題として幕引きを図り、政府に批判的な側は被災者に寄り添わない政府の姿勢の現れとして批判する、という構図になっています。


 どちらもそれなりには正しくて、たとえ愚痴とはいえ「左翼のクソども」なんて言う人の資質に問題があるのは間違いないし、そういう愚痴が出ることが、復興庁や政府のある種の本音の現れであることもまた、間違いありません。

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霞が関公務員の日常 ←「左翼のクソども」のイメージ画像


 ただ、復興庁や政府が「福島」「被災地」「被災者」全体を軽んじているかのような構図で報じられることには、違和感があります。


 今回の件は、「子ども・被災者支援法」という、復興政策の中でもかなり特殊な法律に関連して生じたもの。

 この「子ども・被災者支援法」の内容と、それを巡る関係者の意見の相違を知らなくては、今回の件の本質は理解できないのです。


 今回は、そういった話をしてみたいと思います。
 あまり詳しくは知らないので、ざっくり大つかみの話になりますが、全体の構図を理解する程度には役立つと思います。



 「子ども・被災者支援法」の概要は、「子ども・被災者支援法市民会議 」という団体が作成したリーフレットがわかりやすいので、それを貼り付けておきます。
 まさに〇〇参事官が「左翼のクソども」と呼んだ人たちですが、法律の紹介そのものは中立的で、偏ったところは感じられません。


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 まず「支援対象地域」を指定して、そこに住む人は、住み続けることも避難することも選択でき、どちらの場合でも支援を受けられることになります。
 避難する場合に受けられる支援は、住宅の確保、家族離ればなれになった場合の旅費の補助、健康診断の実施、医療費の減免など。


 本当に健康影響が心配される人が対象になるならば、支援の内容は妥当な内容が多いですが、問題は「支援対象地域」がどの範囲になるかということ。


 「支援対象地域」は、法律上「放射線量が一定の基準以上である地域」と定義されています。
 そして、この「一定の基準」として、この市民団体らは「1ミリシーベルト/年以上」を主張しています。


 「1ミリシーベルト/年以上」とはどこか。
 だいたい、次の地図の「0.25(マイクロシーベルト/時)」というラインで示された、黄緑色より濃い色のところになります。


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 福島県だけでなく、栃木県や群馬県の北部、千葉県の柏・松戸周辺、茨城県の土浦・取手周辺、岩手県の一関周辺も入ることになります。


 つまり、この市民団体の主張に沿うならば、福島に加え、栃木、群馬、千葉、茨城、岩手の一部でも、汚染された土地だから避難できますとアナウンスし、全住民に被ばくに関する健康診断の受診を呼びかけ、引っ越す人には住宅や旅費の支援(月数万円程度?)をすることになります。


 一方で、国の意見は、そのような支援は「1(マイクロシーベルト/時)」というラインで示された、オレンジ色の範囲まででいいじゃないかというものです。
 年に換算すると、だいたい5ミリシーベルト/年。地域で言うと、福島県の浜通りと中通りの一部に収まります。


 なお、このような地域にいても、実際に5ミリシーベルト/年まで被ばくするわけではありません

 1マイクロ/時 を 5ミリ/年 相当と換算する前提は、1日8時間、除染されていない屋外にいることですが、8時間も屋外にいる人はまずいませんし、いたとしても除染されているので、実際の被ばく量はかなり下がります


 また、栃木、群馬、千葉、茨城、岩手では、市町村長などからは「支援対象地域」にしてほしいという声は全くなく、そのような主張をしているのは、自主避難者とその支援者などに限られています。

※ 改めて調べてみたら、千葉、茨城などで、市町村長が支援対象地域への指定を要望していました。なので、この段落は削除します。


 正直、現在の状況で、栃木、群馬、千葉、茨城あたりから西日本に自主避難する人というと、世間一般の平均と比べるとかなり心配性な人という印象がありますね。


 もちろん、個人の選択としては尊重されるべきと思います。
 しかし、そういう人たちの主張に沿ってあえて今、栃木、群馬、千葉、茨城の
一部地域で「汚染されていますから避難してもいいですよ」と住民にアナウンスして、自主避難を推奨するのがいいかどうかは、意見が分かれるところだと思います。


 皆さんはどう思われますか?
 ちなみに私は、関東まで拡大するのはやり過ぎで、福島県の浜通りと中通りまでで十分という意見です。



 拡大するべきと主張する市民団体と、そうすべきでないと考える政府と。
 政府は、今は1ミリとも5ミリとも決め難いと考え、判断を先送りにする決定をしました。


 〇〇参事官は、そういう決定をした政府の代理人としての仕事を全うし、それが気にくわない市民団体に脇の甘さを突かれて刺されました。


 もちろん、暴言自体は許される内容ではないですが、暴言そのものではなくもっと本質的な、こういった「子ども・被災者支援法」をめぐる意見の相違に光が当たるといいなと思っています。



 今回の件が、自主避難の推奨(自主避難者の支援)について、福島県内に止めるか、栃木、群馬、千葉、茨城、岩手に拡大するか、結論がどちらになるにしても、国民の納得のもとで進めるきっかけになるように祈っています



「復興庁の幹部がツイッターで暴言」の件

 またしてもご無沙汰しておりました。


 5月下旬以降、成長戦略や骨太方針の協議でてんてこ舞いだったもので。
 今日14日に閣議決定されて一段落したので楽になりますが、その分、これまでてんてこ舞いを理由に放置してきた通常業務を進めていかないと。


 ブログの方も再開します。目標は月10回、年100回! ← 無理



 さて、今日、職場でもちきりだった話題は、「復興庁の幹部がツイッターで暴言 」というニュース。

霞が関公務員の日常 ←「復興庁」のイメージ画像



<復興庁>幹部ツイッター暴言 「左翼クソ」「懸案曖昧に」(2013年6月13日毎日新聞)

 復興庁で福島県の被災者支援を担当する幹部職員が個人のツイッター上で「国家公務員」を名乗り、課題の先送りにより「懸案が一つ解決」と言ったり、職務上関係する国会議員や市民団体を中傷したりするツイートを繰り返していたことが分かった。政府の復興への取り組み姿勢を疑われかねないとして、同庁はこの職員から事情を聴いており、近く処分する方針。

 (中略)

 〇〇氏は今年3月7日、衆院議員会館で市民団体が開いた集会で、同庁側の責任者としてとりまとめ状況を説明。同日「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席」とツイートした。翌8日には「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」と、課題の先送りを歓迎するかのような内容をツイートしていた。(以下略)


 多くの同僚の反応は、愚痴りたくなる気持ちはわかるけど、ツイッターで他人への誹謗中傷を公言するとはバカな奴、というもの。


 「誹謗中傷を公言するバカ」には私も100%同意ですが、それ以前に、こんな誹謗中傷の気持ちを持つこと自体が公務員失格なんじゃないの、よし、それでブログ1本書こうと思い、ネットでこの人のツイート一覧を漁ってみました。


 見つけたのが、togetterの「復興庁○○○○参事官(←実際は実名)の主なツイート 」。
(参事官は「幹部」と表現されるんですね。幹部って言うから局長級かと思ったら、課長級で拍子抜け。参事官なんて部下5人ぐらいしかいない中間管理職ですが…)


 読んでみたところ、全体の印象としては、思っていたのと違って、わりと普通の人だなという印象。

 以前書いた、防衛省沖縄防衛局長の「犯す前に『やらせろ』とは言わない」発言 の人と比べれば、まっとうな感覚の人だと思いました。


 もちろん、ツイッターで誹謗中傷を公言したことには同情の余地はありませんが、同僚や家族相手にしゃべる愚痴としては、まああり得る範囲かな、と。


 本当にこういう誹謗中傷を常に思いながら仕事をしているなら問題ですが、ツイート全体を眺める限り、本心で思っていることよりも悪いセリフで愚痴るのが好きなだけという雰囲気を感じます。


 愚痴としても平均よりはやや口が悪めで、口が悪い方から数えて25%ぐらいかなと思いますが、非常識レベルまでは達していない感じがします。



「おはようございます。今日は、福島県南相馬市まで出張です。地震、津波、原災と大変なところですが、よく現地の生の話を聞きたいと思います」
「NHKスペシャル「除染」放送中。身につまされる……」


余裕のある時にはこういうツイートをしているのを見ると、根は真面目で、忙しくなって心がすさむと、偽悪的に毒を吐いたり、悩みのタネの相手を心の中で攻撃したりして、心のバランスを取る感じの人なのでしょうか。


 そういう人、けっこういますよね。
 根はいい人なのに偽悪的に振る舞いたがる人って、私は何か「もったいないな」と感じてしまいます。


 こういう風にやり玉に上げられることもあるし、それ以前に何だか人として小さく見えて損をするというか。

 「本音」とか言って、聞くに堪えないことを言いたがる人も同様。


 疲れたとき、心がすさんだときこそ、たとえ偽善的に見えようが、理想を高く掲げて心を奮い立たせたり、悩みのタネの相手にも共感したりする、前向きなセリフが自然に出てくるように心がけたいと思っています。


 心の底からそう思うのは難しくても、見かけ上、そう振る舞うよう習慣づけることだけなら技術的に容易ですからね。

 そういう見かけ上の振る舞いの積み重ねこそが、実はその人の本質なのだと思いますし。(←20年近く前に友人Uから聞いた言葉の受け売り。本人の言葉では「永久に偽善者を演じられるなら、そいつは善人」)



 結局のところ、この人の発言そのものが問題なのではなくて、その背景にある、「子ども・被災者支援法」への復興庁の消極姿勢が問題ということなのでしょう。


 この法律をどう考えるかはなかなか難しい問題で、ここで軽々しく言及するのは避けておきます。

 簡単に「○○すればいい」で解決するような単純な問題ではないと思う、とだけ。




 それと、いずれにしても、今回の件の最大の教訓は「ツイッターは怖い」ということ(←何を今さら)。

 もちろん、ツイッターだけじゃなくブログも怖いので、私も気をつけます。