安倍内閣の長期政権と憲法改正に向けたシナリオを予想する
前回 の結論は、参院選の結果を予想するとこうなるだろうというもの。
獲得議席 非改選 合計
自民 64 49 113
維新 20 1 21
民主 12 42 54
みんな 11 10 21
公明 9 9 18
今回は、参院選がこうなった場合の、その後の政治の展開の予想。
1.安倍首相が狙う「2018年まで5年半の長期政権」と「憲法改正」
参院選後の大まかな政治日程をまとめると、こんな感じになります。
2013年7月 参院選
秋 来年4月の消費税増税を最終決定?
10月 秋の例大祭で首相が靖国神社参拝?
秋~冬 伊方原発の再稼働?
年末頃 TPP交渉合意?
2014年2月 政府主催の「竹島の日」式典開催?
4月 消費税増税(5%→8%)
2015年4月 統一地方選挙
8月 戦後70周年。戦後50周年の村山談話を見直し?
9月 自民党総裁選挙
10月 消費税増税(8%→10%)
2016年7月 参院選(衆参同日選?)
12月 衆議院任期満了
2018年9月 自民党総裁選挙
首相とその側近は、参院選の勝利の後、2015年9月の自民党総裁選で再任、2016年7月の衆参同日選挙で勝利、2018年9月に5年半の任期を全うして退陣、という構想を描いているはず。
そこに立ちはだかるのは、今はひたすら参院選後に先送りしている難題の数々。
まずは、経済を失速させることなく消費税を2回増税するという超弩級の難題。
その他にも、原発再稼働、TPP交渉合意など、政権の失速につながりかねない難題の期限が次々にやってきます。
一方で、安倍首相が本当にやりたいことは、憲法の改正。
「やらなければいけない」難題の解決と、「やりたい」憲法改正をどのようにバランスを取って進めるかが、参院選後の政治の主要テーマになるでしょう。
2.消費増税には財政支出増で対応、原発・TPPは強行突破、靖国参拝は我慢
まずは、数々の難題をどう解決するか。課題群を大きく分けると次の3つ。
(1)消費増税をする中でも経済を失速させない経済運営
(2)原発再稼働、TPPなど強い抵抗勢力がいる政策の実行
(3)靖国参拝、竹島の日式典など、保守層の期待と良好な対中韓関係の両立
結論から言うと、私は、安倍内閣はこの3つの課題群を次のようにコントロールするつもりと読んでいます。
(1)の経済運営については、消費増税による経済への悪影響を緩和するため、公共事業などの財政支出増(悪く言えばバラマキ)で対応するでしょう。
消費税が10%で安定するまでの3年間に限れば、放漫財政よりも経済失速を恐れるべきということで、多くの人が納得する。
(2)の原発再稼働やTPPについては、どれほど強い抵抗勢力がいようが堂々と断行するでしょう。
これらは郵政民営化と同じで、いかに抵抗勢力が強く見えようとも、おそらく数としてはそれほど大きくない。強行突破しても政権は失速しないと読む。
(3)の靖国参拝、竹島の日式典については、保守層の期待は裏切っても、良好な対中韓関係を優先するでしょう。
首相が靖国参拝などをやりたいのは誰が見ても明らか。その首相が断腸の思いだが我慢すると言えば、保守層の多くも納得する。一方で、対中韓関係が極端に悪化して経済にまで影響すれば、日和見的な中間層が安倍政権を見放しかねない。
もちろん、尖閣や竹島の領土問題では、一歩も譲らないと思いますよ。
ただ、靖国参拝、竹島の日式典、村山・河野談話見直しなど、実利に関わらないメンツの部分でこだわって損をすることはしないだろう、ということ。
(1)(2)(3)ともにかなりの批判を浴びそうで、安倍首相としては不本意かもしれません。
ただ、すべては悲願の憲法改正のため、他の課題はじっと我慢の子で3年間待つと読みます。
←「じっと我慢の子で3年間待つ」のイメージ画像
3.2016年の衆参同日選の後、憲法96条改正を花道に首相退陣
(1)正攻法のシナリオ、2016年の参院選後の憲法96条改正
憲法改正ができるとすれば、私は2016年の参院選(衆参同日選?)の後だと思っています。理由は2つあって、
ⅰ)2015年までは2度の消費増税で手一杯。その間に憲法改正に挑めば、国民の生活より首相個人の思想信条を優先しているように見え、国民の失望を招く
消費増税は本当に難しい課題です。
消費税10%を安定させるまで、政権に憲法改正に挑む体力はないでしょう。
ⅱ)2016年の参院選以前は、2/3に「自公維み」の4党が必要。それ以降は公明抜きの「自維み」の3党で十分
いくら憲法改正のためとはいえ、自民党には公明党を切る選択肢はありません。公明党も賛成できる形を整えることが必須です。
公明党は、自分が賛成しないと成立しない状態で、憲法改正に賛成することは難しい。たとえ、96条の発議要件を2/3→1/2に改正するだけであっても。
しかし、「公明党が賛成しなくても成立する」状態を作った上で、「公明党に配慮して案を修正しました」と花を持たせれば、賛成せざるを得ないでしょう。
そこで賛成しなければ、「自維み」3党で好きなように改正されますから。
ということで私の見立ては、2016年7月の参院選で「自維み」で衆参の2/3を握った後に、公明党の賛成も得て憲法96条のみ改正する、というもの。
もちろん国会での議論は進めるでしょうが、いざ衆参で2/3の議決を取りに行くのは、2016年7月の後ということで。
安倍自民党総裁の任期は2018年9月までしかないので、残念ながらそこで時間切れ。憲法9条の改正は、次の内閣に委ねられることになります。
安倍首相にとっては心残りかもしれませんが、不磨の大典であった憲法を初めて改正したことだけで、大宰相として歴史に名を残すには十分でしょう。
(2)大きな賭けとなるシナリオ、2015年の96条改正、2018年の9条改正
上で書いたシナリオが正攻法だと思いますが、2016年の参院選前に挑戦するシナリオもあり得ます。
参院選前の2015年に96条を改正し、退陣直前の2018年にもう一度、今度は9条を改正するというシナリオ。
安倍首相がそのシナリオを選択するとすれば、理由は2つ。
1つは、2016年の参院選(衆参同日選)で勝利する確証がないので、その前に96条だけは改正しておきたいこと。
もう1つは、どうしても自分で9条まで改正したいと考えること。
どちらも、首相ご本人の気持ちになればごもっともですが、私はいかにも危ういと思います。
消費増税と並行して憲法改正をすること、公明党を憲法改正の可否を決する立場に追い込むこと(or民主党の一部を取り込んで公明党抜きで参院の2/3確保に動くこと)、いずれも政権にとってかなり危険な賭けです。
安倍首相がこういう賭けに打って出るのかどうか、注目したいと思います。
書いていて、やっぱりこうやるように思えてきました。首相にとって、憲法改正はそれほどの悲願でしょうからね。
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ここまで、高い内閣支持率が続き、2016年の選挙でも自民党が勝つことを前提とした予想を書いてきました。
そうなる可能性は高いと思っていて、その場合は民主党は影も形もなくなりますが、次回、民主党(orその流れを受け継ぐ別の政党)が盛り返す可能性について考えてみます。