総選挙をめぐる霞が関の風景
前回の「民主党の皆さんへの惜別の辞
」に引き続き、総選挙をめぐる霞が関の風景。
体系的に書きたいことがあるわけではないので、Q&A方式で。
Q1.どの党に勝ってほしいという意識はあるの?
A1.誰もが個人的な思いはありますが、組織的に統一された意識はありません。どういう結果になろうが、勝った政党の方針に従うだけという感じです。
時の与党にお仕えする身でありながら、与党の勝利を心から願っている人は、薄情なことにほとんど存在しません。
唯一、総理秘書官だけは、与党(というより総理)の勝利を願うものらしい。
2009年の政権交代のとき、麻生総理の秘書官から悔しいという感じの発言を聞いて、総理秘書官はそう感じるものなんだ、意外だなと思ったことがあります。
Q2.どの党が勝つと思っているの?
A2.特別な情報があるわけではないので、メディアの報ずるとおり、自民党が勝つと思っている人が多いと思われます。
それを見越して、今年の夏頃からは自民党シフトがじわりと進んでいます。
頼まれなくても役所側から積極的に情報提供するようになったり、野党の会議には課長級が出席する慣例なのですが、1つ上の審議官級が行くようになったり。
「自民党はもう与党扱いで厚めに対応しよう」という発言をする幹部もいました。
なお、大臣や、与党である民主党へのサポートを弱めているわけではなく、両方厚めに対応するということです。念のため。
Q3.民主党と自民党の違いは、役所から見てどういう風に見えるの?
A3.政策的な違いはあまりないように見えます。
各論では違う部分もあるけど、総論から必然的にその差が導かれるのではなく、両党ともバラバラな各論の塊なので、党による違いと言われてもピンときません。
両党とも、あれもやれこれもやれと要求して、支出を増やしたがる点で同じ。
使いたがる分野は多少違っても、支出を削りたがらない本質が同じなので、役所側からすれば、扱い方はあまり変わりません(そういう両党の体質と官僚の狡さが合わさって、復興予算の流用を生んだ。この点は大いに反省が必要)。
意思決定のシステムに差はありますね。
自民党はもめていても時期が来れば最後は方針を決めますが、民主党はもめ出したら本当にいつまでも決まらない。
また、自民党議員は官僚なんて人とも思っていない感じでけちょんけちょんに言いますが(後でフォローはする)、民主党議員は会議でもおとなしく静かな人が多い。
官僚は、政治家には叱られるものだと思っているので、民主党のように静かに会議が終わると、何か物足りない感じがして(←マゾヒスト)拍子抜けしますね。
Q4.官僚主導の打破を掲げる第三極(日本維新の会)が政権を取ることを、役所は恐れているではないか。
A4.まず、多くの官僚は、日本維新の会が政権を取るとは考えていないでしょう。
私は今年7月まで関西に住んでいたので、維新の会の大躍進は十分あり得ると思うのですが、東京に住んでいると大したことないと見えるらしい。
仮に取ったらという話であっても、恐れるという意識を持っている人は少ない。
今の時代、政策は政権党が自由に決められるものではなく、関係者の利害関係、財政上の制約、国際社会の動向などのために、選択肢はかなり限定されます。
官僚の仕事の本質は、様々な制約条件の中であり得る選択肢を政治家に情報提供すること。何党が政権党でもその仕事は変わらないと思っている官僚が多いでしょう。
そういう仕事の本質的な部分が変わらなければ、給料とか天下りとか枝葉の部分がどうなろうが、どうということはありません。
そういう理由で、恐れる必要がないというところでしょう。
本質的な部分が大きく変わり、大慌てする可能性もあるでしょうけどね。
それはそれで、日本がよい方向に向かうのならばまたよし、という潔さを官僚は持ち合わせていると思いますよ。
以上、官僚の総選挙に対する意識のようなものを描写してみました。
私個人の感覚もだいぶ入っているので、一般的なものかどうかはわかりませんが、参考になれば。