トマトが真っ赤に熟れるまで 第10章 営業のいろは | 【税理士】社長と会社を元気にする会計事務所

 

 

こんにちは、松井です。

 

 

 

 

この「トマトが真っ赤に熟れるまで」は、

毎月、クライアント向けに書いている

ストーリーです。

 

 

 

今回の内容も、この時期だからこそ

実践すべき内容だと思って、

ブログでも公開いたします。

 

 

 

 

きっと何かのヒントになると思うので、

少し長めですが、どうかおつきあいください。

 

 

 

 

 

前回分をまだ読んでいない人は、

是非こちらも読んでみてください。

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第9章

 

 

 

 

 

 

 

トマトが真っ赤に熟れるまで

 

 

【前回までのあらすじ】

 

主人公の藤原和彦は、淡路島でトマトを生産する農業生産者。ある冬の寒い日、藤原のハウスに侵入したみどりは、藤原にみつかって逃げようとしてラックにぶつかったショックで記憶障害になってしまう。

 

 

 

資金繰りに困った藤原は、融資の相談に行った銀行で、公認会計士の三浦と出会う。初対面なのに自分の状況をズバリ言い当てる三浦の心眼に心服するが、ポルシェを売ることを相談に乗る条件と言われて困ってしまう。

 

 

 

ポルシェを藤原に売った張本人の角川のフォローもあって、三浦からのお題もなんとかクリアする。角川に環境整備について教えてもらった藤原は、すぐに実践しようと意気揚々と帰宅するが、唯一の取引先である小売店の店長からの「取引中止」の電話に無意識に快諾してしまう……。

 

 

 

 

 

 

 

第10章 営業のいろは

 

 

「どうしよう、彩乃!」

 藤原は、自分でも一瞬で気分が落ち込んでしまうことが嫌でしかたがなかった。

 

「わたしに聞かれても……。それより、さっきお兄ちゃん、何か言いかけてなかった?」

「そうそう。角川さんに環境整備について教えてもらったから、それをやろうと思って」

 

 彩乃は環境整備という聞き慣れない言葉に首をかしげながらも、何とか藤原を元気づけようとしていた。

 

「環境整備の話はまたあとで聞かせてもらうとして、その角川さんにどうしたらいいか相談したらどう?」

「おお! それはいい考えだ!」

 

 

 藤原のこの単純さは、きっと彼の美点なのだろう。言い終わる前に、藤原はクルマを角川の会社に向かって走らせていた。

 

 

 

 

 

 

 角川の会社に着くと、藤原は息せき切って角川の部屋に急いだ。運転中に角川に電話したところ、受付には言っておくから、何も言わずに自分の部屋においでとやさしく言ってくれたのだ。

 

 部屋に入ると、角川はいつもの人懐っこい笑顔で迎えてくれた。公認会計士の三浦は、話がすんだのか、もう帰ってしまったようだ。

 

「ホンマにいつも、ジェットコースターみたいな男やな、和(かず)ちゃんは!」

 

 藤原は自分の下の名前をちゃんづけで呼ばれた事がなかったので、気恥ずかしい気もしたが、決して嫌な気持ちではなかった。

 

 

 

 

 

「すみません。いつも相談ばかりで……」

 

「いやいや、ええよ。社長の仕事は悩みを聞くことでもあるからな。ところで、どうしたん? 大変なことになったって言うてたけど」

 

 角川はそう言うと、ニヤッとした。真っ白な歯がまぶしい。両手を広げて何でも受け止めてくれそうな雰囲気が部屋全体に広がった。

 

 

 

 

 

 

「実は、唯一の販売先との契約をさっき切ってしまいまして……。どうか、こんなボクに、営業のやり方を教えてください!」

 

「営業のやり方か……。よっしゃ、わかった!」

 

 角川は、任せとけとばかりに胸を叩いて、ガハハと笑った。

 

 

 

 

 

 

「和ちゃん、自分の仕事に情熱を持ってるか?」

 

 えっと藤原は声を上げた……営業のやり方を聞いたのに情熱?

 

「あると思います。トマトを作るのは好きですし、美味しいトマトをみんなに食べてほしいと思いますから」

 

 

 

 

 

「なんか弱いなぁ。もっと力強く、『はい! 情熱いっぱいです!』って答えられへんのかいな」

 

 そんな事急に言われても……。角川が何を意図しているのか、藤原には理解できなかった。

 

「和ちゃん、明日の朝、目が覚めたら、何をするよりも先に、手を力強く握りしめて、力を込めて自分にこう言え! 『今日も情熱を持って、思いっきり働くぞ!』って。ホンマに自分の仕事が大好きで情熱がビンビンになるまで、何回でも言うてみ」

 

 

 

 

 

「わ、わかりました……。でも、情熱が、営業と何か関係があるんですか?」

 

 角川は、一呼吸置いてから、やさしく言った。

 

「情熱こそ、営業で一番大事な事やん。もっと言えば、情熱こそ、社長に一番ないとアカンことやん。あのな、和ちゃん、情熱さえあれば、大抵の事は何でもできてしまうねん。逆に言うと、情熱がないから、ちょっとした事で落ち込んでしまうんや」

 

 

 

 

 

 

 藤原がまだ腹に落ちて理解していないのを見て取った角川は、藤原の肩をバンッと叩いた。

 

「頭で考えるな! とりあえず今、ここでやってみ!」

 

 

 

 

 

 藤原は半信半疑だったが、角川を信じて言われたとおりにやってみた。

 

 

「今日も情熱を持って、思いっきり働くぞ」

「もっと大きな声で!」

 角川の大きな声が響く。

 

 

 

「今日も情熱を持って、思いっきり働くぞ!」

「もっと手に力を入れて!」

 藤原は手に力を込めた。

 

 

 

「今日も情熱を持って、思いっきり働くぞ!」

「もっと大きな声で!」

「今日も情熱を持って、思いっきり働くぞ!」

 

 

 

 

 

 最初はちょっと馬鹿らしいと思いながら言っていた藤原だったが、角川の合いの手に答えて力を込めて大きな声を出しているうちに、角川の情熱が乗り移ったような気がしてきた。もう三十回を超えただろうか。

 

「うぉ〜っ! 今日も情熱を持って! 思いっきり働くぞ〜〜〜っ!」

 

 藤原は、本気でそう思っていた。

 

 

 

 

 

「ええな。毎朝、そのくらい情熱が出るまでやってみ」

 

 角川はまた、やさしい表情に戻った。

 

「そやな、明日から三十日間。朝起きたら、さっきと同じ事をやってみ! それでな、その情熱がビンビンに燃えている間に、無理やりでもええから、情熱的な行動をするんや」

 

「わかりました!」

 

 

 

 

 

 

「和ちゃんは頭で考えすぎやねん。考えることもええけど、だいたいやり方にはパターンがあってな。なんでうまくいくかとかわからんでも、そのとおりにやったらうまくいくもんや。

 

 でな、うまくいくようになった時に、なんでうまくいくのか、その理屈がわかるもんなんや。だから、まずはあれやこれやと考える前に、オレを信じてやってみるのがええわ」

 

 不思議な事に、最初は全く信じていなかったのに、今は角川が言うとおりにやればできるような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

「そうそう、その笑顔や。あっ、そうや! もう一個宿題出そか。さっき言った情熱が出たら、それから三十分間、笑い続けろ。笑顔の練習や。

 

 声を出して笑わんでもええ。ただし、広角を上げ続けろ。好きな曲でもなんでも歌って、とにかくはしゃげ。

 

 楽しかったこと、嬉しかったこと、大笑いしたことを思い出して笑え。もしも心の底から笑えてなくてもええから、楽しいフリをするねん」

 

 

 

 

 

 

 

「情熱の次は笑顔ですか……?」

 

「不満か?」

 

 角川が驚いた顔をした。

 

 

 

 

 

「いえ、そういう訳じゃないですが、もっとこう……」

 

 一瞬、藤原は口ごもった。

 

「何ていうか……、営業のいろはを教えてもらえると思っていたので……」

 

 

 

 

 

 

 角川は、また真っ白な歯を見せてニッとした。

 

「情熱を持って笑顔で人に接する事ができたら、もう営業の八割はできたようなもんや。と言うか、これができてないと、いくらテクニックを覚えても、うまくいかんわ」

 

「そうなんですか!」

 

 

 

 

 

 

「せや。それくらい情熱と笑顔は大事やねん。だいたい和ちゃんは、いつもつまらなさそうな顔してるからな。ちゃんと人生を楽しんでるか?」

 

 藤原はうつむいてしまった。

 

「……どうでしょう。ボクの人生はあまりうまくいっていませんから……」

 

 

 

 

 

「ええやん。自分、もしかしてうまくいってなかったら、楽しめへんと思ってないか?」

 

「思ってますよ! だって、何をやってもうまくいかないのに、どう楽しめばいいんですか!」

 

 また、角川がやさしい表情になった。

 

 

 

 

 

 

「そうかそうか、和ちゃんは苦労してきたんやな。さっきは笑えって言うたけどな。本当にしんどい時は泣いてもええで。

 

 涙は心の浄化やから、実は笑う以上にストレス発散になるねん。だから、どんなに気分を上げようと頑張っても、全く上がらん時には泣いたらええ。

 

 男やから人前で泣くのは恥ずかしいとか、男らしくないとか、たぶん和ちゃんの中にはそういう気持ちがあると思うけど、そんなもんは全部手放してええ」

 

 

 

 

 

 

 藤原は、角川の話を聞きながら、自分の周りにまとわりついていた何かが少しずつ取れていく気がしていた。

 

 あれっ……。角川さんの顔がぼやけて見える……。もしかしたらボクは泣いているのか……。

 

 そう思いながら、忘れていたいろいろな記憶が蘇ってきた。最初に作ったトマトが上手にできなくて、友達にバカにされたこと……。

 

 

 

 

 

 

 やっと売り物になるトマトができて、高校時代の友人が店長をするスーパーに売りに行ったら、なんだかんだと理由をつけられて買い叩かれたこと……。

 

 資金繰りに困って銀行を駆けずり回ったこと……。肥料会社から早く払えとの催促の電話に頭を下げ続けたこと……。

 

 何をやっても結果が出せない……。何をやっても中途半端……。ボクなんか何をやったって……。

 

 いつのまにか、藤原は声を出して泣いていた。抑えようにも嗚咽がとまらなかった。人前で泣いたのは、これが初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

「スッキリしたか?」

 

 角川のやさしい声に、藤原が顔を上げた。もう涙は枯れていた。

 

「は、はい! もう大丈夫です」

 

「気分はどうや? 悪くないやろ?」

 

 

 

 

 

 確かに気分はスッキリしていた。さっきまで胸の奥で、時折ジワッと鈍い熱さが広がる、あの嫌な感じはなくなっていた。

 

「チャップリンの有名な言葉にこんなんがあんねん。『下を向いていたら、虹をみつけられないよ』 ところで、最近、虹を見たのはいつや?」

 

 藤原は思い出せなかった。

 

 

 

 

 

「下ばっかり見てるから落ち込むねん。その姿勢が落ち込む状態を作るねん。情熱を持って上を向け。そして、笑え!」

 

 藤原は笑顔になった。

 

「はい、情熱を持って上を見ます。そして、笑います」

 

 

 

 

 

 角川は急に流暢な英語を話した。本当に角川は奇想天外な事をする。

 

「えっと、なんと言ったか教えて下さい」

 

 角川は、また白い歯をニッと見せた。

 

 

 

 

 

「Fake it. Until you make it. 欧米の成功者がよく使う言葉や。意味はまぁ、楽しいフリをしろ。キミが本当に楽しくなるまで、というところかな」

 

「わかりました! 角川さん、今日は本当にありがとうございました」

 

 いつのまにか、テーブルの上には例の美味しいコーヒーが置かれていた。角川と笑いながらそのコーヒーを飲んでいるうちに、藤原は心の中に熱い気持ちが沸々と湧いてくるのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 角川に何度もお礼を言って別れた藤原は、ポルシェを運転しながら、強い決心をした。

 

 変わってやる。いつも情熱でいっぱいになってやる。そして、いつも笑顔で楽しい生活を送るぞ。明日から、いや、今日、この瞬間から!

 

 人は実に簡単に変わることができる。ちょっとしたきっかけさえあれば……。

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな時期だからこそ、

情熱を持って仕事をしましょう。

 

 

 

こんな時期だからこそ、

笑顔になる時間を作りましょう。

 

 

 

 

心と身体はつながっています。

 

おもしろくなくても笑っているうちに、

楽しい気分になります。

 

 

 

何かのヒントになることを祈りつつ

 

 

 

 

 

 

続きはこちら

⇒ トマトが真っ赤に熟れるまで 第11章

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


  松井浩一公認会計士税理士事務所
  兵庫県芦屋市宮川町1-10-304 
  0797-25-1575(平日9:30~17:30)
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