前回までの話
「地方議会は市民の信頼を取り戻せるか ① (議会の「ズレた議論」)」(http://ameblo.jp/genjyoudaha/entry-11332825692.html )
1.与党と野党という構図
議院内閣制ではないのに、なぜか地方議会にも与党(的議員)と野党(的議員)議員という色分けがされます。次回(「公開性と討論性」)にも書くように、与党的議員は「水面下でパイの分捕り合戦」をしているというのが実態であると思います。前回書いたように、自らの支援者・関係者という一部の者や地域、団体、業界に分捕ったパイを持ち帰るのが任務というところでしょうか。
他方、野党的立場は、行政を監視・チェックすることが自らの任務であるとして、行政に対し批判や攻撃をくわえています。たしかに、行政を監視・チェックすることは議会の役割の一つであると、私は、考えます。
しかし、この野党的議員に対しては「批判ばかりしている」という批判があります。率直な感想を述べれば、この「批判ばかり」という批判はあながち外れていないようにも思います。行政の監視・チェックを議会の役割のはずなのに、「批判ばかり」という批判が外れていないのでしょうか・・・?答えは建設的でない議論が多いことに求められるように思います。
2.「批判ばかり」という批判
先ほど述べたように、次回は「公開性と討論性を欠いた議会」を取り上げたいと思ってます。が、この「公開性と討論性」というテーマで書けば、「いやいや、うちの議会はしっかり議場で議論してきた。何も知らない若造が生意気ぬかすな」という反論が出てくるかもしれません。しかし、そのようなセリフを吐くかもしれない議員がいる自治体と近隣自治体とを比べれば、その「してきた議論の質」が自ずと分るように思います。
ここで「議論の質」を問題にしたように、議員の批判の多くは、グランド・デザインを欠いていたのではないように思います。グランド・デザインがないばかりか、自らの意見もない批判、対案もない批判、「この結論は良いとしても、ちゃんと審議会で意見を聞くなどの手続きをしたか」という手続き面の批判、議論のための議論、水面下での要求を行政当局に飲ませるための批判(提出された条例案や予算案が人質になっている)が繰り返されてきたというのもあながち外れていないのではないでしょうか?
そして、このグランド・デザインや対案を欠いた批判は、その議員の野党的な立場はほぼ固定させます。(本当は与党的議員も次回に述べるように、行政との「共犯関係」があるだけで、グランド・デザインがないことは多いのだが・・・)これは言葉を変えれば、「政権交代能力」がないことを意味します。ここに、本来、「ときとして行政との緊張関係があることを予定」しているはずの二元代表制は崩れ、議会(議員)無用論が持ち上がる理由の一つになっていると思います。
3.グランド・デザイン
もっとも、いざ「グランド・デザイン」を描くとしても、その能力は現代の議員にはありません。これは、時代を経て議員の質が落ちたからではなく、社会がより複雑になり政治が関与する分野が多岐になったからです。では、どうするべきか?
ここでも、前回に述べたインプットの作業が重要になってくると思われます。地域的なことについては自治会・町内会、専門的なことについてはNPOの協力してもらうほかありません。公聴会や参考人、議会報告会での意見交換でより多くの市民の意見や専門的な知見にふれて、市民と協働して自治体が進むべき方向をつくりあげる。あるいは、対案をつくりあげる。そして、それらにもとづいて行政が執行するという仕組みが好ましいのではないでしょうか。
このような議会への市民参加は、議員の役割放棄であるとする反論もあるかとは思います。(現に、総合計画検討委員会で「公聴会を開くべき」という私の意見に対し、そのような批判があった。「では公聴会を規定する地方自治法は間違っているのか?」とボールを投げ返しはしたが。)しかし、議会・議員がグランド・デザインや対案を持つことは、議会が信頼と期待を取り戻す上でも必要だと私は思います。
もし、役割放棄の趣旨の批判がこれからもあるとすれば、議会改革のグランド・デザインや対案を議会が描く方法、議会が市民の信頼を取りもです方法の対案を示していただきたいと思う。
なお、議会の議決事項について、6月に議会改革検討委員会のメンバーではない私が委員長に提出したペーパーに、基本構想のほか、市が労働組合との協定を結ぶにつき議会の承認を要することを記したのも、以上のような考えにもとづき議会の進むべき方向についての議論をして欲しかったからです。(http://ameblo.jp/genjyoudaha/entry-11270507323.html )
4.議会改革の現状
「何を議会として議決するべきか」という追加議決の議論は出ているようでが、ただ、ほとんど進んでいません。
もっとも、グランド・デザインやしっかりした対案が作れない議会がどれだけ議決すべき事項を増やしたところで、その実、あまり市政は変わらないのではないでしょうか?