科学特捜隊は、国際平和会議を妨害しようとする見えない宇宙船を追いかけていた。
新兵器のスペクトルα、β、γ線で宇宙船を見えるようにして攻撃し、撃墜したが、
「夜に入ってからも科学特捜隊の探索は続けられた」
(浦野光さんナレーション)
「この美しい星空だっていうのに一体どの星から来たのかしら? どうして国際平和会議を邪魔しようとするのかしら?」(フジ)
「ムッシュ・アラン。さっき、あなたは確かあの怪獣を見た時、『ジャミラ」と言いましたね? ジャミラとは一体何なんですか?」(ムラマツ)
「あ~ ムッシュ・ムラマツ。パリの本部で予測していた最悪の事態になりました」(アラン)
「ムッシュ・アラン、もうここまで来たんです。あいつの正体を教えてください」(ハヤタ)
「諸君 … あれは怪獣ではありません」(アラン)
イデの表情に驚愕が走る。
「あれは … いや彼は我々と同じ人間なのです」(アラン)
「そ … それは?(ムラマツ)
「それはアメリカ、ソ連を中心に
世界各国で宇宙競争が行われていた頃である。
ある国で打ち上げられた人間衛星がついに帰って来ないという事件が起きた。
その宇宙飛行士の名前がジャミラだったのである。
しかし科学の為、人間を犠牲にした事が分かると大変だ。
その国はジャミラの乗った人間衛星の失敗を全世界にひた隠しに隠してきたのである」(浦野光さんナレーション)
「そうか … そして、そのジャミラの乗ったロケットは宇宙を漂流しているうちに何処かの星に流れ着いた。
しかし、その星には地球の様に水も空気も無い。
だがジャミラはどうにかして生き延びた。しかし、その星の異常な気候風土の中で生きているうちに、あんな姿に変わってしまったという訳か …」(ムラマツ)
「そうです。恐らく彼は何十年かかって自分の乗って来たロケットを作り変えたのでしょう。
そして地球へ帰って来たのです。地球の全人類に対する恨みと呪いの心だけを持って」(アラン)
「おれ止めた!」(イデ)
「どうしたんだ、イデ?」(アラシ)
「おれ止めた。ジャミラと戦うのは止めた」(イデ)
「何を言っているんだ?」(アラシ)
「放せよ … 放せよ」(イデ)
「よく考えてみりゃ、ジャミラは俺達の先輩じゃないか。その人と戦えるか?」(イデ)
「しかしなぁ…」(アラシ)
「おい、アラシ。俺達だってなぁ、俺達だってなぁ何時ジャミラと同じ運命になるか知れないんだぞ」(イデ)
イデはマルス133を地面に叩きつける。
「何をするんだ」(アラシ)
「くそぉ~。俺がこんな物を考え出さなければよかったんだよ。
そうすりゃあ、ジャミラは … ジャミラは …」(イデ)
イデの気持ちが伝わりフジ隊員は何も言えず俯くだけ。
ムラマツも …
ハヤタも何も言えない。
「諸君 … 改めて科学特捜隊パリ本部からの命令を伝える。
ジャミラの正体を明かす事無く秘密裏に葬り去れ。宇宙から来た一匹の怪獣として葬り去れ。それが国際平和会議を成功させるただ一つの道だ」(アラン)
命令に納得できない様子のイデ隊員。
「イデさん …」(フジ)
「イデ … お前の気持ちは分かる。だがジャミラは今や人類の敵になってしまっている。な …」(ムラマツ)
「ばっかやろぉぉ~~~~}(イデ)
イデ隊員の魂の叫びが夜の闇に虚しく木霊する。
「故郷は地球 中編」~ 完 ~