CX”火10”枠のチャレンジ精神が光る「ゴーイング マイ ホーム」 | ガンバボーイ2号のGuerrilla Radio

CX”火10”枠のチャレンジ精神が光る「ゴーイング マイ ホーム」

実は正直、10月期のドラマ、あまりにも期待作ばかりで、

HDRに録画した深夜番組を放置プレイしそうやわ。


現時点でずば抜けていたのが、CX系”火10”枠の「ゴーイング マイ ホーム」。

テレビマンユニオンに籍を置くドキュメンタリー出身のディレクターで、

「誰も知らない」「歩いても歩いても」でセンセーショナルな作品を続くり続ける是枝裕和監督が、

「歩いても歩いても」でタッグを組んだ阿部寛を主演に迎え、初めて連続ドラマに挑むというのだ。

全エピソード、脚本書き下ろしの上、メガホンをとるというのだから、そりゃ見ねばと第1話を見た。


図体はデカイのに小心者のCMプランナー、坪井良多が、

疎遠になっていた父親の危篤を機に、彼の“それなりに幸せ”だった人生に異変が起こるというもので、

日暮里の女と姦通(道徳的に許されない性交渉)疑惑から、

生前、空想上の生物・クーナ探しをしていたという話になり、

本当の幸せとは何かを良多が探求することになるんだよね。


普通、連続ドラマは、第1話で重大なインパクトを残して、

最終話までテンションを維持させなければならないのですが、

第1話がね、展開、あまりにもユルすぎ。

物語が淡々と進んでて、「あ~あ、このドラマ早々に打ち切られるな」の声がささやかれそうですが、

是枝監督の作風は、台本の所々に「(アドリブ)」欄を入れている位、

役者にアドリブを要求させており、アドリブが役者の素の部分を引き出しているんだよね。

これはドキュメンタリー番組出身の是枝監督だからなせる技やわ。

テレシネ加工した映像も、是枝監督の思惑通りで、

映画的な感覚を覚えてもうたわ。


CXのドラマの中で、’96年4月期からの”火10”枠は、唯一関西テレビが担当している枠。

(ちなみに、平日お昼13時代のドラマは、東海テレビが担当)

これまでを振り返ってみたら、とてもエエ良作ぞろいで、

(いろいろな意味で)CX製作のものとは、一線を画している。


◆SMAPの草なぎ剛(※「なぎ」は環境依存漢字)が主演を務めた「いいひと。」

これが演出担当の星護と共に、後の「僕の生きる道」シリーズへの礎となった。

◆AVECお得意のジェットコースタードラマを復活させた「フェイス」

モデルとして活躍していたりょうが、ヒロインを演じブレイクした。

◆EXILEのAKIRAによる”新世紀版”リメイクが話題となった反町隆史主演の「GTO」(’98)

この時間帯のドラマでは歴代最高視聴率、平均と最高、共に1位をキープ中。

◆ユースケ・サンタマリアが連ドラ初主演を飾った「花村大介」

後にユースケ・サンタマリアは「アルジャーノンに花束を」でも主演を飾る事に。

◆秦建日子原作の小説を篠原涼子主演でドラマした「アンフェア」

ストーリーの完璧さから、後に映画版が2作作られた。

◆阿部寛が主夫に励む姿を描いた「アットホーム・ダッド」

後に阿部寛は「結婚できない男」、「白い春」、そして「ゴーイング マイ ホーム」で主演に抜擢される。

◆名脇役の小日向文世が連ドラ初主演を飾った「あしたの、喜多善男」

「NIGHT HEAD」の飯田譲治による脚本が優れていたにもかかわらず、視聴率は振るわず。


これらの傾向から見たら、

・CX製作のドラマでは主役を張るのに躊躇しそうな役者を、主演に起用する事が多い。

・”火10”枠のドラマで、共演した役者がブレイクする。

・製作プロダクションは、共同テレビ、MMJ、ホリプロが多いが、年1回、自社自主製作を入れている。

・’85年10月期から’96年1月期まで、”月10”枠でサスペンスものが放送された。

・その月10枠時代に、サスペンス物が放送されてたせいか、その流れから硬派なものが多い。

・CXの人気時代劇シリーズにまでのし上がった「大奥」。

元は関西テレビ開局25周年記念連続ドラマとして、’83年に”火10”枠で放送された。

(ちなみに「大奥」は、よしながふみの漫画を原作とした男女逆転モノではない。)


いわば、東京の在京キー局では二の足を踏んづけてしまう様な事を、

大阪の系列局に責任を押し付けちゃえというような事をするのが、”火10”枠なんだよね。

その反動で、CX製作のモノを超えた作品が多く出ているのも事実やし、

いろんな意味で伝説の作品になった作品が多いのも事実。


今回の「ゴーイング マイ ホーム」では、(あらゆる意味で)一線を画していた関西テレビ担当枠らしく、

ドキュメンタリー→劇映画と進んだ是枝監督の流儀が、連続ドラマでどこまで通用するか見もの。

同時期、CX製作のものでは、木村拓哉主演の”月9”最新作、「PRICELESS」が本命視されていて、

キムタクの神通力を、是枝監督+阿部寛がどう喰らうか。

展開はユルいけど、”無我の伝道師”西村修の様な”ねちっこい”プロレス的展開はクセになるぞ。


ちなみに、16日(火)はサッカーの国際Aマッチ中継があるので、放送がありません。

御注意を。




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