専門誌『現代化学』の最新号(2011年8月号)の「論点」に、日本環境学会の畑明郎先生の論文が掲載されています。
http://www.tkd-pbl.com/book/b92695.html

ここに掲載します。

なお、図1「豊洲市場予定地ー液状化対策想定深度、粒度判定、N値および対策不足に関する模式図」は、より見やすい原図を添付します。クリックで拡大します。

Like a rolling bean (new) 出来事録-豊洲新市場予定地液状化模式図


ところで、今回、決定的な液状化があったのにお東京都様は、

・液状化はほんの表層だけだ
・液状化対策をしていないから液状化したので液状化対策をすればいい
・液状化対策で汚染物質が広がってはいない(水は水平方向には動かない!)
・エライ先生が言ってるんだ

などなどなどなど、相変わらずですが、

・液状化はほんの表層だけだ
 →その言い分の根拠がすでに破綻してます。

・液状化対策をしていないから液状化したので液状化対策をすればいい
 →しかし根拠ない工法で根拠ない浅いところまでの対策で終わらせようとしてます。

・液状化対策で汚染物質が広がってはいない(水は水平方向には動かない!)
 →前回も書きましたが、こんなことがあるなら地下が真空引きされちゃうことになります!
 (っていうか、そもそも汚染物質などあっても関係ない)

→ごくごく限られた物質を10tトラック15台にコップ半分ちょっと調べるだけ。
  ヨウ素やセシウムをざっくりと調べるだけ、の放射性物質汚染調査と酷似。

・エライ先生が言ってるんだ
 →客観チェックさせないで隠蔽して、で、また自己無謬神話です。

もうすでに書いた話もありますが、今回1つめの、液状化は表層だけという言い募りについてちょっとコメントします。

液状化で噴きだした砂からは貝殻が出てきたから、これはすなわち、浚渫(戦後の、東京湾河口のヘドロによる)埋め立ての、ごく表層部分しか噴きだしていないのだ、なんていい方をお東京様は抜け抜けと公言しているわけですが、トンデモないですね。
まず必要条件十分条件という細かい話をしてもしょうがないほどの相手が、巨額の公金を使って官製地上げをしようとしているこの現実自体、何万回でも呆れ返ることができますが、なによりも、すでに東京都自身の調査資料から、もっと深いところからも貝殻が発見されていることが明らかになっています。だから、貝殻がある=上のヘドロ、とは言えません。

この埋め立てたヘドロの下は、有楽町層という砂と粘土からなる軟弱地盤で、これは縄文時代の温暖化と寒冷化の気候循環で遠浅の砂浜が関東一体に堆積したものなので、当然貝殻を含んでいます。

河口ヘドロは、東京の河川の化学物質や生活排水などでの恐ろしいほどの汚れを知っている方々からすれば、そこからの汚染は対策しない、という時点で、すでに上にどんな工場があったとしてもアウトですが。

ここからが論文です。

現代化学(日本化学同人) 2011年8月号 No.485 
「論点」
豊洲の液状化に対していま行うべき科学的調査

1. 豊洲問題の概要
 年間54万トン、1.4兆円の水産物を取り扱う世界最大の水産物市場で、外国人観光客の人気スポットである「日本の台所」東京都中央区の築地市場を東京都は、約2km南の江東区の東京ガス豊洲工場跡地へ移転させようとしている。
 当初は、2016年開催を目指した東京オリンピックのメディアセンターを築地市場跡地につくる予定だったが、オリンピック開催が不可能となった。しかし、都は豊洲移転計画を進めており,築地市場移転の真の狙いは、銀座に近く一等地の築地を都市開発の目玉にし、10倍以上とされる築地と豊洲の地価差を利用した土地売却益ともいわれる。
 この移転計画に対して、築地市場の仲卸業者、学者・文化人、都民有志らは、豊洲工場跡地の土壌汚染問題も発覚し、移転反対運動をしている。豊洲工場は、1956年に都市ガス製造を開始し、1976年までの20年間、石炭や石油を原料としていたために、ベンゼン、シアン、ヒ素、水銀、鉛、六価クロムなどの有害物質が製造工程で副生され、敷地土壌や地下水がこれらの有害物質や油分で汚染された。
 東京都に土地を売却する前に行われた東京ガスの土壌・地下水汚染調査で高濃度の汚染が判明し、東京ガスは一定の対策を行った。しかし、移転反対者や科学者が東京ガスの調査と対策の再検討を行った。その結果、さらに深刻な土壌・地下水汚染が明らかとなり、対策の再検討を余儀なくされた。
 対策の基本は「工場操業時の旧地盤面から2mまでの汚染土壌を掘削除去し、清浄土壌と入れ替え、さらに2.5m清掃土壌を盛り土する。2m以下は汚染箇所のみ対策し、自然由来の汚染土壌は対策しない。敷地内の汚染地下水は部分的に揚水処理する」であり、汚染土壌が地下に大量に残置される。
 対策面積は約40haで、対策費用は約600億円と国内最大の土壌汚染対策事業となり、2011年度に着手する予定であったが、2011年3月11日の東北地方太平洋沖自身により、豊洲地区の液状化が発生した。

2. 地震による液状化で危惧されること
 土壌汚染地の地震による液状化の事例は、ほとんどないが、鉱山廃滓堆積場の地震による液状化の事例は、国内で二つある。一つは、1978年1月14日の伊豆大島近海地震(マグニチュード:M7)により、静岡県天城湯ヶ島町の持越鉱山の廃滓堆積場が液状化して決壊し、シアン化合物を含む約6万m2の廃滓が狩野川に流出した。また、東北地方太平洋沖地震(M9、震度6強)で、宮城県気仙沼市の大谷鉱山の廃滓堆積場が液状化して決壊し、ヒ素を含む廃滓が流出し下流域を汚染した。
 土壌汚染地でない地域の地震による液状化の事例は、多数あり、1995年1月15日の兵庫県南部地震(M7.3、震度6~7)による大阪湾岸の軟弱地盤や海面埋立地の液状化が有名である。特に海面埋立地の神戸ポートアイランドでは、深度20mまでの液状化と、護岸が水平方向にずれる側方流動破壊が起こった。
 東北地方太平洋沖地震で、東京周辺は震度5強を記録し、豊洲地区や千葉県浦安市も含む東京湾岸地域の海面埋立地で広範囲に液状化が起こった。東京湾岸の被災地域は約42km2と、総埋立面積の約3分の1を占める。
 約40haの豊洲地区(※引用者注:東京ガス工場跡地を含む戦後埋め立ての側)では、約108ヵ所で、埋立した砂の噴出(噴砂)を伴う液状化が発生した(写真1)。しかし当初、都は「噴砂であり、液状化ではない」と強弁した。東京湾岸地域の想定地震としては、30年内に発生する確率が70%であるM7クラスの首都直下地震、M8クラスの千葉県東方沖地震や東海地震などがあり、いずれも東京の震度は6と予想され、今回以上の液状化と護岸の側方流動破壊が発生すると考えられる。

3. 調査要求に対して現地立入りを拒否する東京都
 豊洲の液状化発生に際して、専門家・市場関係者・マスコミなどから現地立入要請が、都に対してなされているが、6月24日現在、都は市場関係者を除き拒否している。私が現地写真などを入手したのは、都議会関係者やマスコミ関係者からで、いずれも非公式立入りによるものである。
 1で述べたが都が委託した専門家による土壌汚染調査時も、都委託専門家以外の専門家の現地調査を一切拒否しており、調査データの信頼性を確保する第三者によるクロスチェックも行わなかった。
 豊洲の液状化に対しては都はその後、「埋立地である豊洲は、噴砂など液状化が想定されていた。噴出物に砕けた貝殻が多数混入しており、浚渫埋立した砂が噴き上がってきた」とし、専門家の見解として、「液状化対策をしていない埋立地では液状化は発生して当然、だからこそ、技術会議で提言した液状化対策を確実に行うことが大切」と開き直った。

4. 現地入りして、いま行うべき科学的調査は?
 都は、「噴砂箇所については、汚染物質、液状化に関する専門家の意見を聴き、処理する」としたが、噴砂状況を目視調査したのちブルーシートをかぶせて、粉じんの飛散防止と噴砂の隠蔽を図った。
 都は、「噴出物に砕けた貝殻が多数混入しており、浚渫埋立した砂が吹き上がってきた」とするが、図1に示すように、貝殻は浅部の埋立土だけでなく、深部の有楽町層(粘性土)にも存在しており、それをもって浚渫埋立した砂が噴き上がってきたとはいえない。したがって、噴砂箇所をボーリング調査して、地下の液状化震度を調べる必要がある。また、地下から大量に残置された汚染土壌や汚染地下水が、流動しかく乱されて噴き上がった可能性があるので、噴砂中の汚染物質を分析するとともに、地下の土壌汚染の再調査も必要である。
 なお、図1のN値(地盤の硬さの指標で小さいほど軟弱となる)などから想定した液状化する可能性がある深度(液状化対策深度:図中の黒い矢印(※引用者注:ここではより解像度の高い原図をアップしており、そこでは赤い矢印です)に都の液状化対策(図中の濃い色塗り部分)(※引用者注:このブログエントリーの図では上から2番目の色の着いた部分)が到達していない箇所も多くあることが判明し、都の液状化対策の不備は明らかである。工事着工を中止し、土壌汚染と液状化対策を再検討すべきである。

参考文献
1. 畑明郎、「東京・築地市場移転先の東京ガス豊洲工場跡地の土壌汚染問題」、『深刻化する土壌汚染』、世界思想社(2011)
2. 坂巻幸雄、「地震防災の視点から見た土壌・地下水汚染問題ーー東京・豊洲汚染地の液状化に関連して」、『日本環境学会第37回研究発表会予稿集』、三重大学(2011)

☆☆築地市場移転問題原告団のサイトができました☆☆
http://tsukiji-wo-mamoru.com/index.html
ぜひご覧ください。拡散もお願いします。
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液状化した豊洲新市場予定地。東京都が速攻でブルーシートをかける前。
石炭からガスを製造し、廃棄物を野積みにし埋めていた複合汚染地域にも関わらず、東京都の調査物質数は限られています。
液状化により、汚染物質が移動したことからも、過去の調査に基づいた対策が取れない状態です。
なのに、水平方向にしか動かないからと、一方的に入札をかけ、移転を断行しようとしています。
都議会が砦です。
これまで東京都側は議会に対してどんなごまかしや「言いがかり」もありでした。都民、全国でチェックを!
Like a rolling bean (new) 出来事録-1103豊洲新市場液状化_1

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