8月24日の都議会「経済・港湾委員会」で、民主党田の上都議が、豊洲新市場予定地の汚染対策などについて、非常に厳しく突っ込んだ質問をしました。

ただ、このことの意味に、メディア(ここでのメディアとは、記者でなく上司であったり、あるいは「経営判断」なのかもしれませんが、ここではまとめて称します)がほとんど気付かなかったか、あるいは気づいたふりをしたらまずいと考えたのか、報道はほぼありませんでした。

築地再整備の予算が当初より安いという記事も今週各紙に掲載されていますが、24日の各議員の質問に対し、お東京都様も張り切って(という様子では実際のところなく、かなり激しく狼狽していた状態に近いものでしたが)、口角泡を飛ばす勢いで「安全だ、浄化された、反対するやつがおかしいのだ」と言わんばかりに騒ぐほどに、その根拠のなさを思い知るとともに、ちょっとしたニュースで安心させられてはいけないとつくづく思います。
(それに現在地と言っても晴海で流通センター化することも含まれた検討案ですから)

では、先月24日の田の上議員の質問から、非常に特徴的かつ分かりやすい点を取り上げたいと思います。
お東京都様が、安心の根拠であるかのように喧伝している、「10mメッシュ」の調査(=縦10m横10m深さ1mからサンプルを取る)ことが、どのくらいの規模感(アバウト感)のものかについての部分、音声からの抜粋です。
聞き間違いなどあったら訂正します。

~~~ここから
◆田の上いくこ議員
この土壌汚染対策、まず概況調査。
旧地盤面(東京ガス工場操業時)から50cm下くらいで、試料採取により発見された
汚染物質を「不透水層」まで、1m間隔で深度調査しています。
図3をご覧ください。
今さらながら、もう一度、ご説明します。
10mメッシュの中でサンプルを取ります(管理人注:10m×10m×1mの土の中から取ることになります)
だいたい、10tトラックで15台分の中で、コップで約1杯くらい、
1杯といっても
半分ぐらいの量の中に、
(偶然)見つかった汚染物質について、深度方向の調査をしています

つまり、その発見された場所の10cm横に他の物質があっても見つからない
深度方向に違う物質があってもそれは処理されない、ということになります。
たとえば、ベンゼンが概況調査で見つかって、ただ、その深度方向に他のもの、鉛などがあっても、
ベンゼンだけ汚染対策処理をされる、ということでございます。
これを「健全土」として扱っていいのか、ご意見をお聞かせください。

◆宮良新市場調整担当部長
豊洲新市場予定地の汚染の把握につきましては東京ガス操業地盤の近く、表層土壌を取ると
ともに、地下水を取っています。
地下水の調査することによって汚染物質があれば程度の差はあれ地下水に流れます。
そういったことで汚染状況を把握しているので、今回のお話のように汚染を見逃すといった
ことはございません。
(以下、再質問が続きます)
~~~ここまで

この部長、土壌については質問に回答したことになりませんね。
10tトラックで15台分の中でコップ1杯より少ない土を取って、
そこにあった物質(といってもわずか数種類しか調べないうちの)だけを
見て、(さらに試験管内でベンゼンを追加したりなんだかんだして)
それでいいのかと尋ねているのに、地下水の話に切り替えていますね。

しかも、地下水は水位が敷地内で数m単位で違っていますから、当然ながらじゃんじゃん流れてしまい、
それで意味があるのかいう点は、都が招聘した委員からなる、2年前の専門家会議でも懸念が
挙がっていました。

地下水はともかく、土壌のサンプル採取の状況を簡単に図示すると下記のようなことになります。
(入手資料より)


Like a rolling bean (new) 出来事録-10トントラック15台

このような↑大量の汚染土壌の中から、わずかコップ1杯(以下イメージ画像)、

Like a rolling bean (new) 出来事録-コップ1杯

というか実際は、さらにこの半分くらいの汚染土壌を採取するだけで、
もしも。その、極めて少量の土壌の中にたまたまベンゼンだけが入っていたら、
残りの10トントラック15台分の土の中にも「ベンゼンしかない」と
いうことにしてしまって、当然含まれるであおる他の物質には
もう完全に目をつぶって、
Like a rolling bean (new) 出来事録-10トントラック15台

つまりは調べもせずに、たまたまコップに入ったベンゼンだけピンポイントの実験をして、「ほーら、きれいになったでしょう」と語るのがお東京都様の実験です。

もちろん猛烈な発がん性を持つ、ベンゾ(a)ピレンなど、浄化実験もしません。
もちろん、シアンもヒ素もカドミウムも、
10トントラック15台分の土の中のコップ半分だけを調べて、それで大丈夫だと言っていることになります。

言い訳は十分に想像できます。
「だって、これは環境省の基準ですよ」と彼ら彼女らは主張するのでしょう(実際にしていますし)。

工場跡地に新たな工場を作るのも、わざわざ生鮮市場を作るのもまるで同じ考えで行い、
しかもクラスター爆弾型汚染(複合汚染が、局所的に高濃度で存在する)に対しても
最低限の法律さえ守ればいいんだろう、法律は科学だ、と言わんばかりに、
・揮発して土の露出する部分からも、コンクリートから継続的に出てくる汚染も
・植物で吸い上げられる汚染も、
・さらには災害時に液状化で汚染が噴出することも、
一切合切、まったく「無いこと」として考慮しないのだから、いかにすごい話だと分かって頂けるかと思います。

また、東京都の調べた初期値が43000倍でなく2.7倍だった(だから墨塗りした?)という問題も、最初からうっすらとした汚染しかなくって、数万倍はミスだ、などと主張する向きもあるらしいのですが、とんでもないことです。
クラスター爆弾型で、ほんのちょっと離れてもデータが大きく違うので、前回調査と同じメッシュ、つまり同じ付近の10トントラック15台の土のたまたま取ったコップ半分から、同一濃度が出ないのは、ふつーに(つまり確率的に見ても)当然のことです。

しつこくなってしまうかもしれませんが、ちゃんと土を広げて調べればタール溜りのようなホットスポットがある、とは、専門家会議の時期からずっと懸念されてきたことで、むしろそれが分かってしまったことになります。

この件、そして、ひとつ前のエントリーで書いた液状化対策の対策になっていない状況についても、これから時間を見て追記していきたいと思います。
あと、上の図にもある、「埋め戻し土」という気になるモノについても、またエントリーを改めて書いていきたいと思います。

昨日は「防災の日」。
阪神淡路大震災で被災した神戸市場の写真です。
東京都はこの教訓を一切尊重していない、と思えます。
倉庫と桟橋の崩れた様子

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