タイトルに書いた「なぜ築地市場の官製地上げ(組合潰しと各種デマ)とその後に物流支配が危ないのか」について、話の概略を整理しようと思います。

まず、築地市場の移転問題は汚染のことだけに留まりません。どんな異常事態が判明してもやめようとしない見境いなさ、その最後の到達点として見据えられている(でも、大手メディアは決して語ることのない)流通の「構造改革」が最大のポイントです。

現在地の状況が「古い」「危ない」「汚い」とおよそ実態に反する官製情報をもってネガティブに語られるほどに、そこには別の意図があるに違いないという理性を働かせるべきなのは、郵政民営化で学んできたことだと思います。

そこで、もろもろのおさらいとして、過去のエントリーからの情報を列記していこうかと思います。

まず、最初に、先日の第9回築地市場を考える勉強会での説明を再掲します。

~~~(ここから)
■5 市場流通に関する問題点 セリの廃止など市場の規制緩和問題
(都民講演者)
汚染問題に続き、次は利権という視点から話す。
この築地問題はあまりに不条理なことが多く、めまぐるしく分かりにくいが、
視点を最初に戻したい。
きっかけはオリンピック招致問題。
オリンピックのメディアセンター構想が最初にあり、公開図面ではツインタワーで
これを民間資金で作り、証券化して売り飛ばす(J-REIT、サブプライム日本版)。
これが関わりの発端だった。
外資系金融機関の利権、ブッシュ政権の裏に入ったゴールドマン・サックスの利権。
体制やミニバブルがはじけてもなぜ止まらない?
次が箱物利権、旧来型の土建政治。
築地市場が移転しPFI(民活)で民間に委ねられようという際、清水建設が挨拶に回った。
コンクリートから人へ、という流れがあるが、まさにコンクリート。
土壌環境センターという業界団体があり、まとめ役も清水建設。
各社ゼネコンが入り、汚染対策ビジネスに参入という動向がある。
今は、工場の海外移転で、日本全国に10万箇所あるとされる工場跡地が皆、汚染されて
いるが、これが土建事業の利権としてあり、
もっとも大規模で甚大な汚染があったのが豊洲。
これが処理できれば他の場所もできる、最悪の場所を対策しよう、という利権に見えた。
この点を追求したところ、結果としてPFIがなくなった。
清水建設もやめたいと言っていたようだと耳にする。
ここまでばれていて説明が付かない状態なのに、なぜまだ移転推進が続いているのか?
ここで出てきたのが、物流外資。
卸売市場整備計画は農水省の計画で、豊洲に「新しい加工センター」で築地廃止と言っていた。
これが自公政権時代に決められていた。
東京都が発表をした豊洲新市場図面は、店舗数半分。
農水省政策では「仲卸業者数の大幅な縮減、セリは縮小し電子化し、商物一体も廃止、
大卸も売り買いに入れる、漁業者も卸にセリにかけてもらうが買い叩けるようになって(買参権)
そこでは、卸売市場の形が崩されていた。
政権交代してどうなったか? はっきりした今後の図面がないようだ。
民主党のマニフェストの比較をしたが、少し懸念がある。
政権交代では「農山漁村の再生・活性化」。
穀物自給、国土保全、環境保全などだったが・・・
今は、「製造業、小売業*など*との融合」とある。
この*など*。物流、流通業がポイントである。
政権交代後に、農水省にこっそりと見つからない形で研究会があった。
  (管理人注:高木元農水次官の提言を受けたもので以前こちらでも紹介しました)
なんと、「卸売市場法廃止」という内容を含むものであった。
ひょっとして業者行政に引き戻そうという動きが始まっているのではないか。
この分野は選挙の争点になっていないので、説明がされていない。
国民のための政治が業者行政になっている?
マニフェストでも、似た表現ではあるが、主体が「農水漁村」だったのに「製造業など」に
なっている。
日本だけのことでなく、政権与党については、あらゆる手立てで業者が入ろうとする。
政権交代では、ブッシュコイズミ以降の官業の癒着、これを止めることだった。
まずは最初に業者が動く。幹部を政権に入れて、法律を変えてお金を落とす仕組み、
そうしたやり口が、コイズミ時代のものだった。
豊洲新市場は「加工・集配センター」といった表現になっていた。
製品加工は物流・流通のものになっている。このことは、彼らも決して言わない。
国の制度を変えて利権を合法化するのがアメリカ型。
これがまだ止まったわけではない。運動の盲点、相手を捜し尽くしていない。
どんなに汚染がひどいかと言って、逃げ腰になっても、証券化により金融が下がっても
まだ利権があり止まらない。行政も抵抗できない。
議会でも、自公・イシハラ側が野党になり四面楚歌になっても、まだ計画が止まらない。
逆らえない何かがある、圧力があると。
これは普天間問題と非常によく似ている。どんなにだめといっても、力尽くの利権を行使。
そのことと非常に重なる。
ここで出てきたのは、物流外資という存在。
今の築地も、ルール違反が横行している。スーパーが開場時間前に持って行く。
そうしたスーパーも、日本のスーパーのようだが、実はウォルマートの孫会社であったり。
日本の市場を壊している。
これが移転問題の背景にあるのではないか?
非常に複雑な構造。絶対に実行犯以外は表に出てこない。
最後に利益を得る人は、お金を受けようと待つ人は、アメリカ系の物流・流通外資。
我々は一緒に民主党を応援して政権交代したが、少しずつすり替わっていないか。
政権与党の裏側から動かす力に対して、些細な変化を見逃さす監視する。
そうしないと全く違うことが起こってしまう。
業者利権には引き続き監視の目を。
~~~(ここまで)

効率化・近代化の名の元に流通を支配するのが物流外資(REITの生みの親でもある)であっても、また以前より警戒しているように国際金融による実体経済の支配であっても、いずれにせよ、これはローカルで小さな問題ではなく、日本がどうなるのか、という眼で見るべきものです。

では、ここからは昨年の12月31日のエントリーからの部分再掲となります。

2009-12-31
『もっと報道して欲しい、サプライチェーンを全支配する偽りの構造改革(大規模流通だけ儲かる市場潰し)』
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10423177860.html

~~~(ここから)

さて、築地市場移転問題で、利権の根幹にある生鮮品の「サプライチェーン全体にわたる支配」(構造カイカク)を、農水省研究会で企てていそうなことを今月は書きました。多数のPDFを読むと浮かび上がることは多数あります。

それぞれの領域での力学がどう働いているか、またさらに深堀りすると何があるかはまた何回かに分けて書きたいと思います。

今日は年末にあたって、以下のまとめ資料を御覧ください(画像があまりきれいでないかもしれません・・・)。

業者行政 = 大規模流通業者にのみ便益を図る“規制緩和”
「業者行政による規制緩和は公正な価格形成を阻害し富の分配を歪め品質評価機能を衰退させてきた」

名目はどうであれ、生産~消費の各ステップでの誰もが程度の差こそあれ、割を食うシステムです。

築地市場移転が明確に目指す流方針である、流通センター構想での最大権力である「大規模流通業者」が、卸売市場の形骸化と全流通を支配します。

Like a rolling bean (new) 出来事録-091231卸売市場の構造破壊1_500

こちらはクリックで拡大、多少文字が読みやすいと思います。

Like a rolling bean (new) 出来事録-091231卸売市場の構造破壊1

経済学的な問題点として「情報の非対称性」(売り手と買い手の情報が非対称な場合搾取が発生する)、市場参加者の不均等な力関係、審判不在の競争(誤った 規制緩和)を示しています。

「コイズミー(間にタケナカ)ーブッシュ」時代の規制緩和の一環として、あえて中小の小売業やそこからの購買(多用な商品がしっかり吟味される)を潰す政 策を繰り広げ、つまりは意図的に潰しておいて、古い時代の弱いシステムだから今後は生き残れないなどと断言して潰す、こういったやり方が白昼堂々恥じらう こともなく遂行されてきました。
このこともまた、はっきりした事実なのに、大手メディアは、少なくともまだ明確には伝えていません。

なお、この誤った構造カイカクに向けた、情報の非対称性と力関係による搾取問題については、先日以下のエントリーでも少し書きました。

2009-07-19
日本の卸売市場整備(構造カイカク)が目指す姿を「コーヒー豆での南北問題」に見ます
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10302627145.html

Like a rolling bean (new) 出来事録-コーヒー豆南北問題_s





~~~(ここまで)

その他に、卸売市場という制度を改変し、大手外資のための流通センターにしてしまうために、コイズミ政権時代を中心に構想された内容について書いた、過去 の関連エントリーの一部です。
エントリー自体はこの10倍くらいあります。弊ブログは検索に非常にかかりにくくなっているので、このエントリーが面白かった、分かりやすかった、とい うものがあればご指摘をお願いします。

2008-11-05

卸売り市場構造カイカク・豊洲移転で「仲卸の円滑なリタイア」(弱者切捨て)を求めた農水省と東京都

http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10160963721.html


2009-02-04
(仮まとめ) 築地の官製地上げと総合規制改革会議第2次答申(オリックス宮内氏が議長の)
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10202702007.html


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