日本では、『原子力政策大綱』なるものがおよそ5年おきに内閣府から発表されています。

その政策大綱ですが、今は2005年版が最新です。よって再策定が2010年度に迫っていて、そのため、昨今の性急な原子力推進議論がなされていることは、ほぼ確かだろう、とわたしは思っています。

この数年だけでもこれだけのあわやという事故が発生している中、甘利明元大臣のカザフスタンウラン鉱山利権などが噂されてもいたアベ内閣でもあるまいし、鳩山連立内閣には本当にしっかりしてほしいのですが、ただ、こうした負の遺産、あるいは旧権力の地盤の中に埋められたまま渡された地雷、とでもいうべきものについて、市民からの声を挙げるにあたっても、提言をするに再しても、わたしたちは知っておく必要がある、と考えます。

原子力は事業仕分けでも聖域化されましたし、この政策大綱の縛りというのは、抵抗することが非常に難しい、がんがらめの背景を持ったものなのかもしれないと警戒します。

是が非でも、多少の日程のずれを許容してでも既存の方針を突き進めたい原子力業界と官僚の拠り所のひとつが、この原子力政策大綱にあります

2005年版(今のところの最新)の『政策大綱』は、以下に公開されています。
大量のPDFがあります。
内閣府 原子力委員会 原子力政策大綱
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki.htm

 原子力委員会は、計画の進展や情勢の変化等を踏まえて、今後10年程度の期間を一つの目安とした、新たな計画を策定するために、昨年6月に新計画策定会議を設置し、審議を重ねてきました。
 原子力政策大綱は平成17年10月11日に原子力委員会決定され、同年10月14日にこれに関する閣議決定(13KB)が行われました。

なお、この「政策大綱」などという仰々しい名称になったのはコイズミ内閣下の2005年で、それまでは『原子力長期計画』という名称でしたよね。
ここに説明があります。
http://www.gns.ne.jp/eng/cael/opinion/ron_245.htm

あとは、やはり同じく内閣府原子力委員会からのリンクですが、以下のように、例外はあるものの、ほぼ5年間隔で更新されています。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_back.htm

ここで、ぱっと見で分かることは、この政策大綱・長期計画は、昭和31年=1956年が初回で、つまり、「原発の父」と言われた正力松太郎氏が初代科学技術庁長官となった年(※)から策定され続けているものです(その前年、正力氏は、第三次鳩山内閣で原子力委員長を務めています)。

(※)早稲田大学の有馬先生の著作、『原発・正力・CIA』の紹介ページに詳しい年表があります!
http://www.shikagen.net/shikagen/shouriki/shouriki.htm

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こうした過去の事実だけを書いたところで、「それは思い込み」とか、「それらにとらわれず、鳩山内閣にしっかり意見を述べ、社民党も頑張って、特に総理と小沢環境大臣にタガをはめることから考えたい」という見方もあるのかもしれません。もちろん後者は必要です。

ただ、他の多くの利権以上に、原子力産業では、規定路線の順守が政権が変わってもなお厳しい縛りとしてあるらしいことは、20日に発売になった雑誌『WEDGE』の記事(2010年度をめどに政策大綱の改訂とする)からも垣間見えます。

なお、このWEDGEは、官僚や財界の意向を強く受けた内容(記事と広告)が頻繁に載せられることで知られた雑誌です。

記事からは、文字通り原子力の「火を絶やず」に盛り立て続け、産業の維持・拡大をさせることが絶対的な決定事項であるからして、内閣府がその責任において「政策大綱」として理論武装して発表せよ、いった業界からの強い働きかけがあることが見て取れます。
さらには、もう素人目にも確実に破綻の見え始めている原発について、なんとか正当性を示さなくてはならないという焦りも読み取れます。

WEDGE 2010年4月号(3月20日発売)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/815
■BUSINESS TOPICS.1
明暗入り組む国内の原子力政策

(略)
「今年は日本の原子力政策にとって、転換点になるかもしれない」。今、原子力産業関係者の間からこんなささやきが漏れている。近く、5年に1度といわれる「原子力政策大綱」の改訂に向けた見直し作業が始まろうとしている。大綱の改訂は2005年以来となるが、「この5年間に起きたことを振り返るとすべてマイナス材料。ポジティブな改訂にはならないだろう」と指摘する原子力産業関係者は多い。
 実際、「日本のエネルギー自給率向上の切り札」(経済産業省関係者)として期待が高い核燃料サイクルを巡る状況は視界良好とは言い難い。その中心となるのが、発電に使用した燃料(プルトニウム)の増殖ができるため「夢の原子炉」と呼ばれる高速増殖炉(FBR)。

(略: ここで高速増殖炉をめぐっては、もんじゅの例を挙げ、「想定通りに運転が可能なのか、懸念が残る」などとしていますが、それでも絶対に実現したいという業界の意欲は、この記事の書かれた動機であろうことが見て取れます)

 一方で核燃料サイクルにとってもう一つの柱である使用済み核燃料の再処理工場についても、今年は正念場となる。日本原燃が青森県六ケ所村に建設した再処理工場では、高放射性廃棄物のガラス固化肯定などの度重なるトラブルで、操業開始時期の延期が繰り返されている。

(略:日本原燃関係者が「順調に進んでいます」と語るコメント、そして電力業界関係者の「操業は2~3年ずれこむのでは」というコメントなど)

大綱のシナリオ見直しへ
 もっとも、明るい材料もある。それは現状の核燃料サイクルとしては中心的位置づけとなっている、プルトニウムとウランを混合したMOX燃料を既存の軽水炉で使用する、プルサーマル発電がようやく軌道に乗ってきたことだ。
 プルサーマル発電は「15年度までに国内16~18基の原発で実施する計画」(電気事業連合会)。昨年12月、九州電力の玄海原子力発電所3号機(佐賀県玄海町)で始まったが、「トラブルもなく順調に進んでいる」(九州電力関係者)。

(略: なんと、伊方原発3号機、浜岡原発4号機、高浜原発3号機のプルサーマル計画も、「明るい材料」として列記されています)

(略)
 原子力政策を取り巻く環境が明暗入り組んだ中で始まる原子力政策大綱の見直し。そこれは「核燃料サイクルの2050年の本格始動」というシナリオの見直しは必至とみられており、時間軸の大幅変更が予想される。
要するに、脱原子力依存の可能性については考えず、「時間軸の見直し」により、原発を増やし、再処理とプルサーマルを進め、原子力産業を拡大するという規定路線を損なわないことが、産業界としての第一の目的であることが読み取れます。

そりゃ、自らの産業について縮小を考えないでしょう・・・、と言うのなら、そんな硬直した産業が、あれだけの危険性の高いシステムをこれからも拡充することを政策大綱としてねだることなど、もってのほかだと考えます。

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柏崎刈羽原発の運転再開は危険です。(こちらも署名続行中)
Like a rolling bean (new) 出来事録-UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA

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築地移転問題の全体を記した、英文のB4版チラシです。

表(クリックで拡大)
Like a rolling bean (new) 出来事録-2009_Tsukiji_flyer_collage

裏(クリックで拡大)
Like a rolling bean (new) 出来事録-2009_Tsukiji_flyer_document

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掘っただけで液状化する豊洲新市場予定地土壌(ここにたっぷり汚染)。
Like a rolling bean (new) 出来事録-5街区_液状化顕著な部分_コントラスト補正

スライム(いわゆるヘドロ)をなぜか土壌サンプルケースに素手で詰める様子。

Like a rolling bean (new) 出来事録-090523東京ガス跡地豊洲新市場予定地にて


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英文解説へのリンク↓です。


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