今週に入ってのニュースでは、イシハラ都知事のオリンピックにかける意気込みが語られ、そこでは、「国に経済的な迷惑をかけない」のに、「与党に政府を動かして、財政保障を確保する」とされています。

どうも、その言葉の意味合いが理解できません。


まず、迷惑をかけないという発想ですが、その財政保障にいかばかりのものを望むのかにも大いによります。

追加のおねだりさえなければいい、ということで法外な財政保障を求めるならそれは十分に「迷惑」に値するでしょう。


今、ちょうど手元にありませんが、今月の「世界」に、オリンピックのための公立学校での洗脳教育や、経費の試算がありました。

なにしろ、数百~数千億円は開催地に選定されなくても、インフラ整備で発生します。

数兆円のうち、どこまでが誰の財布から支払われるのか、財政の裏側が問題です。詳しくはまたそちらを資料として見直してから追記します。


⇒後段に追記を設けました。

岩波 世界 2008年6月号

「ちょっと待った! 石原オリンピック」 永尾俊彦

http://www.iwanami.co.jp/sekai/2008/06/154.html


 石原都知事の思いつきとトップダウンで進められる数々の事業。新銀行東京と並んで都政の焦点となっているのが、行政主導で誘致活動が進められている「東京オリンピック」だ。東京の街角を彩る数々の広報に比べ、都民の世論が盛り上がっている様子はない。「石原オリンピック」をルポする。
ながお・としひこ ルポライター。1957年生まれ。著書に『ルポ・諫早の叫び ―― よみがえれ干潟ともやいの心』(岩波書店) 『干潟の民主主義』(現代書館) など。


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以下が、最近の新聞記事です。



毎日

16年夏季五輪:招致で石原知事、自民党に協力要請 財政保証と国会決議 /東京

 石原慎太郎知事は13日、自民党本部で開かれたスポーツ立国調査会(会長、麻生太郎前幹事長)に出席し、16年夏季五輪の招致について政府・与党の一層の協力を要請した。石原知事は「国には経済的な迷惑を一切かけない与党の責任で政府を動かしてほしい」と訴え、政府に財政保証を働きかけるとともに国会決議を上げるよう求めた。

 政府は安倍晋三前首相が辞任する直前の昨年9月11日、東京への五輪招致を支援する閣議了解をした(管理人注: ああそうでしたね)。ただ、主要な競技施設の整備について国の負担割合を2分の1以内とするなど、都側にとっては不十分な内容になっている。08年五輪の招致に失敗した大阪市の場合、国の財政保証の裏付けが不明確だったことが敗因の一つとされた。このため、麻生氏は「これから地道にスタートしていかないとうまくいかない。最後は総理の決断だ」と述べた。

 石原知事は開催計画について「8キロ以内にほとんどの施設が収まるコンパクトな金のかからない五輪になる」と特色をアピール。そのうえで「東京は主催地だけれども、国家的イベントなので、やるべきことをやってほしい」と呼びかけた。

 立候補都市は6月4日に7都市から5都市程度に絞り込まれ、来年10月に開催都市が決まる予定だ。石原知事は「日本の総理大臣が誰になっているか知らないけど、頼むよ」と語り、不安定な国政運営を続ける自民党へのいら立ちも見せた。

 一方、東京オリンピック招致委員会(会長、石原知事)は18日、福岡市のヤフードームで行われるプロ野球のソフトバンク対日本ハム戦で、招致イベントを開く。都と同市は国内候補地を巡って争った間柄だが、全国的な機運の盛り上げに向けて連携することになった。【木村健二】

毎日新聞 2008年5月14日 地方版



東京(共同)

五輪招致で政府の財政保証要求 石原都知事
2008年5月13日 18時20分

 石原慎太郎東京都知事は13日の自民党スポーツ立国調査会で、2016年夏季五輪の東京招致を実現するため、五輪で生じた赤字に対する財政保証を政府が主催者の国際オリンピック委員会(IOC)に対して約束するよう求めた。

 五輪の東京開催が実現した場合、都と日本オリンピック委員会(JOC)でつくる「東京オリンピック競技大会組織委員会」が五輪の運営主体となり、チケットなどを販売する。政府の財政保証は放送権料やチケット販売の不振などで赤字になった場合に組織委に対して行う。

 文部科学省によると、財政保証の提出期限は来年2月。日本では過去に政府保証した例はないが、近年は五輪招致の鍵となっており、外国では保証するケースが増えている。

 政府が財政保証をしない場合は都が行うことになる。石原知事は「国より都の方が財政事情は良い。実際に国に迷惑をかけることはないが、一札入れてもらえば決定的な援助になる」と強調した。

(共同)

別途数字的な情報や、不透明な実態については追記をご覧ください。


国に表立った迷惑をかけなければ、都民にはどれほど迷惑をかけていいと考えているふしもあります。

「国威発揚になるのだから、たかが都民はつべこべ言うな」という、イシハラ氏お得意の自治体私物化構想です。


なぜ迷惑はかけられないはずだけど足は出すであろう「国」(ここでの国って何でしょう?)や、与党は、こんなにも理解力のおぼつなかい老知事に頭が上がらないのでしょうか。

もちろん、あらゆる背景情報があるからでしょうけれど、今、こんな人物にかかずらわっている事態でないことは明らかです。


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【追記】

世界 2008年6月号の記事、「ちょっと待った! 石原オリンピック」から概略の紹介と引用します。


申請だけで150億円をかける大バクチであり、開催準備には兆の単位がかかる(一説に10兆円)ことが丁寧に示されています。しかも、子どもたちに賛同を「強制」しています。


会計も、NPOとの2本立て(しかもNPOの委員会の会長にイシハラ氏、森元総理、ミタライ氏などが顔を連ねています)の不明朗会計に加えて、先日来書いている豊洲への中央市場移転問題と抱き合わせとなっています。


オリンピック憲章にふさわしくない考え方を一切変えることなく、利権を動機にする開催がこれ以上繰り返されたら、「大きな夢をみようじゃないか」(イシハラ氏)どころでは済まされません。

わずか64万円の盲導犬のえさ代補助を取りやめるなどの弱者いじめにすぎない「経費削減」は、この放蕩(開催されなくとも数百億から数千億、もしかしたら数兆円)に比べてどれほどのものだというのでしょう。


ここから「世界」の記事の引用とまとめです。


(略・管理人まとめ: 江東区の子どもたちをオリンピック招致運動に「動員」したそうです)


石原慎太郎都政第三期目の最大の課題は、2016年のオリンピック東京招致だ。都は、今年1月にはIOC(国際オリンピック委員会)からの開催計画についての質問に答える立候補の申請ファイルを提出。いよいよ6月には5つ程度の候補都市が選定される。

 だが、招致機運は盛り上がっていない。

 これは全国的な盛り上がりを重視するIOCの候補地選定には不利だ。

 そこで、昨年10月から今年3月まで全国19箇所で開かれたのがオリンピック選手を招いて子ども達と交流する「みんなのオリンピック」(主催・東京オリンピック招致委員会、以下招致委)である。


「オリンピックファシズム」

(略)

 「公立小中学校の管理責任者である区市町村の教育委員会を飛び越して、直接学校に資料を送りつけるのは越権行為もはなはだしい」と同組合の相楽茂治執行委員は憤った。


(略・管理人まとめ: 学校、PTA、町内会、自治会経由で130万人の招致要望署名を集めたそうですが、誰が署名したかしなかったか、「町内に筒抜け」だという指摘もあります。まったくその通りです)


 石原都知事が進める横田基地の軍民共用化に騒音の面から反対する瑞穂町議会は、オリンピックが来ると横田基地が使われることを心配し、06年6月、招致賛同決議を否決した。

 すると、石原都知事は「頭がどうかしてるんじゃないのか」と非難、「三多摩(で国体)がある。その時になって吼え面かかないようにしたほうがいい」(06年6月24日毎日新聞)と恫喝、同町議会はその後賛成に転じた。このように「上から」の締め付けと恫喝が石原都知一流のやり方だ。


(略・管理人まとめと補足: 結局、オリンピックや国体に便乗して、横田基地の軍民共用を「強制」しようとしていることがよーくわかります。それにしても任侠映画の登場人物並の言語感覚ですね、相変わらず)


「経費のゴマカシ、まゆつばの調整」

オリンピックは、開催以前に呼ぶのにまず莫大な経費がかかる。

 06年6月に策定された『開催概要計画書』では「招致経費」は55億円とされている。

(略)

 ところが、08年度の都の予算案では、150億円と約3倍にもなった。

(略)

財源は招致本部が100億円、招致委員会が50億円である。しかし招致委に都が25億円補助することになっている。

(略・管理人注: NPO化させて、不可視にしようという考えがあっさり浮かびます)


都民の負担は当初の15億円から約8倍。

(略・管理人注: 申請ファイルには、55億円分しか記載されていないそうです。まるで新銀行のパターンを思い起こさないではいられません)


 「すでに05年11月に、都は電通に『東京オリンピック招致準備にかかる基礎調査』を987億円で委託しています。電通はこれまでのオリンピックすべてに関わっている。招致経費にいくらかあるのか電通が知らなかったはずがない。最初から150億円かかると言うと都民の反発をくらうでしょうから、結局は95億円と言ったのでしょう」


 この150億円は、もしオリンピックが来なかったら、灰塵に帰す。今年は北京で開催されるので、8年後に同じアジアの東京オリンピックが来る可能性は低いと巷間言われている。150億円を賭ける大バクチなのだ


(略・管理人注: 念押しですが、招致費用だけです。このほかにインフラ整備として、築地市場の移転と湾岸3セク赤字補填を含むあらゆる「便乗策」と利権が渦巻きます)


「オリンピックを買う」

 オリンピックを招致するための組織は、都の招致本部ともう1つの前述のNPO法人の招致委の2つある。

 招致委の役員は、会長が石原知事、副会長が竹田恒和JOC会長で、その他JOC役員、そして建築家の安藤忠雄氏に森喜朗元首相(日本体育協会会長)、日本経済団体連合会の御手洗冨士夫ら全17人だ。(管理人注: NPO、つまりあえて2つに分けた民間側の委員がこの面々です。驚きます


 だが、なぜ、わざわざNPOの招致委をつくる必要があるのか。招致本部は「行政では効率的に対応できない問題に対応したり、スポーツ団体や企業のノウハウを活用するために設けました」と説明する。

 ただ、担当者は「外に出せないのを隠しておくことができることも否定しません」とも付言した。つまり、税金で運営される都の組織なら会計は公開しなくてはならず、その文書は情報公開の対象だ。が、NPOという民間組織なら会計報告はNPOの会員のみに行えばよく、文書公開の必要もない

(略)

 「長野で『悪さ』をやった連中が、東京の承知委にも入っています」と後藤都議は言う。東京がなりふり構わず招致すれば、「オリンピックを買う」ことにもなりまねない。


「10兆円規模の東京オリンピック」

 さて、オリンピック開催都市に決まれば、また途方もない金がかかる。

「開催基本計画」に記載さえrている数字を拾うと、


晴海に建設する10万人収容のメインスタジアムが1214億円など恒久施設の建設費に2406億円馬術など仮設施設の整備費に843億円で、合計3249億円(都の負担分は未定)だ。

その他、06年度から09年度まで4年間で、毎年1000億円ずつ基金を積み立てる(使途は未定)。


大会運営費は、テレビの放映権料など民間資金で全額まかなうとされている(略・管理人注: 結局そのツケは都民だけでなく全国の消費者にまわってきますね)が、他にインフラ整備がかかる。


 これはもちろんオリンピックだけのために整備するわけではないが、オリンピックをテコに一気に工事を進めたいという意向を石原知事は再三表明している。申請ファイルでは、既存インフラの改良工事や計画中の工事も含めての総事業費は1兆5980億円だ。


 しかしこれでも事業費は安く見積もられている。たとえば、首都圏中央自動車連絡道路は、07年度以降12年度までに全長約60キロのうち都内の、それもわずか4.3キロを竣工させるのにかかる1300億円しか計上されていない。招致本部によれば、IOCの規定ではそれでいいのだそうだ。

 昨年12月の国土開発幹線自動車道建設会議で、1兆3500億円から1兆6000億円に変更されあ東京外郭環状道路(外環)は、申請ファイルのインフラ整備の項目にすら入っていない。

(略・管理人注: 検討の熟度が低いという理由が挙げられているそうです。そのわりには市場移転先の調査費用などはあっさり予測できるのに、単純に言って「おかしい」ですね)


「環境破壊と失政の遺産の上で開く五輪」

(略)

オリンピックのメディアセンターは、現在の築地市場を約2キロ離れた豊洲の埋立地(管理人注: 重金属数100~数千倍、ベンゼンが最大43000倍であるところの、さらに土壌だけでなく地下水も汚染されているところの)に移転させることになっている。

(略)

 築地市場の土地は銀座から至近距離で、売却すれば1兆円以上とも言われる(管理人注: 2兆円とも聞きました)。この利権をめぐってはすでにJAPIC(日本プロジェクト産業協議会・会長=三村明夫新日鉄社長)が、84年に築地は「都市一等地として、今後めったに発生しない大規模開発用地」だとし、「大規模情報発信基地」「都心型高層住宅」等への活用を提案している。

 JAPICは、鉄鋼、土木などに銀行、コンサルタント会社なども加わってつくられた業界団体だ。東京湾アクアライン大事業を国や自治体に提案し、事業は大赤字なのに会員企業は事業を受注して設ける手法が特色だ

(略)

 元都庁港湾局職員の市川隆夫さんは、「進んで『地獄』なのは都民、退いて『地獄』なのはゼネコンや銀行、そして責任を問われる知事でしょう」と言った。

 臨海開発は、「臨海副都心開発事業会計」という独立採算制だ。その累積赤字が2000年には5290億円に達した。すると都は黒字の埋立事業会計、羽田沖埋立事業会計などと臨海会計を統合してしまった。露骨な赤字隠しだった。

(略)

 そしてJAPICはオリンピックとうきょう招致を契機にした「東京臨海部の再整備による世界都市東京の実現」という提言書をまとめて昨年10月に都港湾局に説明、またしても新たなビジネスチャンスを狙っている。

(略)


「恥ずかしくないですか」

(略)

 そして菅野教授は障害者への差別発言について、「石原知事は、オリンピックとともにパラリンピックも招致しようとしていますが、そんな資格ありますか」と批判した。

 石原都政は障害者に冷たい。06年度には視覚障害者を支える全都の盲導犬のえさ代補助64万円、吃音者の発生訓練事業費28万円、身体障害者の海水浴事業費40万円すら削った(管理人注: このあたりの思想はものの見事にハシモト氏に受け継がれていますね)。私は、石原都知事に質問状を送った。

 知事の回答はこうだ。 

 「東京オリンピック招致委員会長、東京都知事としてオリンピズムの根本原則を尊重しており、2016年の招致実現に向けて全力で取り組んでまいります」

 ベルカンヌさん(管理人注: イシハラ都知事の、フランス語に対する名誉毀損訴訟を提訴された方)は、静かな怒りのこもった眼差しでこう語った。

 「知事はオリンピック憲章を読んでいないのではないでしょうか。人を侮辱し、人種差別をしてよくオリンピックを呼びたいなどと言えるなと思います。『自分の胸に手を当てて、恥かしくないですか』」


※【追記】

ゴンベイさんからの情報をこの件に関していただいています。ありがとうございます。

■無題

「築地」移転3年遅れに、豊洲の汚染対策で…五輪招致に影
(2008年5月16日14時31分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080516-OYT1T00471.htm
ゴンベイ 2008-05-16 15:29:01


■無題

朝日新聞 - 築地市場移転先、環境基準4万3千倍のベンゼン
http://www.asahi.com/national/update/0516/TKY200805160124.html

日本経済新聞 - シアン化合物、基準の860倍・築地市場の移転予定地
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080516AT1G1601J16052008.html

時事通信 - 基準4万3000倍のベンゼン=築地移転先、開場延期の可能性-東京
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008051600908
ゴンベイ 2008-05-16 18:55:22

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参考:

◆JAPICのサイト
http://www.japic.org/


◆『(7兆円の東京五輪予算の)手始めの1000億は民間資金活用で、とイシハラ氏』
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10030850944.html

このバブル事業で、日本版PFI(ざっくり言えば民活)に期待をする都側の発言があったことなども、1年以上前に書きました。ただ、今にしえ思えば、「7兆円」で驚いている場合ではなかったのかもしれません。


◆オリンピック憲章

http://www.joc.or.jp/olympic/charter/


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