全国唯一、自治体として全国統一学力テストに参加していない犬山市で、なんと教育長など反対派に辞職勧告が出されました。


本来の罷免権がない市長からの、「教育委員会で強行したから辞職勧告」という指示、これは大きな事件だとわたしは考えます。市長選で民意を受けた(しかし、公共サービスを受けられないのは不公平だという主張に正当性がなかったことに留意したいところです!)とはいえ、市長自体が罷免権を持たないのに辞職勧告を発動し、その理由にプロセスうんぬんを語ること、その矛盾にご本人は気づかないのだとしたら、またそれを誰も止めないのだとしたら、これまた大ごとです。


また、あえて強い表現を選びますが、このことは、昨年の2月の愛知県知事選で超僅差で惜敗した石田前犬山市長の理念を捨て去ろうという動きのひとつです。

同時に、明日知事選を迎える大阪の方々にも是非このことの深刻さを理解していただきたいと思います。


歴史的ifとして、もし石田さんが愛知県知事に選ばれていれば、犬山のよい教育の実践が県の教育行政の見直しに反映されたかもしれないですし、また犬山市にもこんな暴挙が続かなかったかもしれないと想像します。


犬山の今後を憂う気持ちです。新聞社にもこの件を追いかけるようにお願いしようと思っています。

中日新聞 

教育長らに辞任勧告 学力テスト対立の愛知県犬山市長  2008年1月26日 朝刊


 昨年4月の文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)に全国で唯一参加しなかった愛知県犬山市の教育委員会の定例会が25日開かれた。オブザーバーで出席した田中志典市長は「不参加を決定する過程で会議規則を守らなかった市教委に重大な責任がある」として瀬見井久教育長と丹羽俊夫委員長に教育委員の辞任を勧告した。

 田中市長は、教育委員数の上限を撤廃する改正地方教育行政法が4月から施行されるのに伴い、現在5人の教育委員を増員し、学力テスト参加派の委員を送り込むことを表明している。

 同市教委は「競争原理の導入は犬山の教育理念にそぐわない」との理由で全国学力テストに不参加。これに対し市監査委員は昨年11月下旬、不参加を決めた市教委定例会の審議について「事務局主導(※)で進められており、委員の自由な意見や討議・審議により決定されたとは判断できない」と改善を求める監査報告を提出した。

 田中市長はこの日の定例会で、「市教委会議規則を守らず運営されたのは重大な問題だ。監査報告で指摘されてから、今まで何ら市民に説明もなければ、責任の所在も明らかにされていない」と教育長と委員長を批判し、辞任を求めた。瀬見井教育長は「コメントしない」と述べた。

 瀬見井氏は石田芳弘前市長の抜てきで1997年4月、愛知県職員から犬山市教育長に就任し、現在4期目。少人数授業・学級、2学期制、独自の副教本など全国に先駆けた教育改革を主導してきた。

 田中市長は一昨年12月の市長選で全国学力テストへの参加を訴えて初当選。以後、教委との対立が続いているが、市長には原則、教育委員の罷免権はない


【070130追記】

(※)まいさん からコメントをいただいたように、「事務局主導」で討議や審議がなかった、という監査委員の主張こそ、事実の捏造である、という点を改めて強調させていただきます。

■こんにちは!

TBいただきながら、しばらく気づかず失礼しました。こちらからのTB通りましたでしょうか(時々、他のブログで通らないことがあります)。記事中に「事務局主導で委員の意見が反映されていない、云々」とありましたが、私が読んだ犬山市教育委員会作の「学力テスト参加しません!」(明石書店)では、各委員がきちんと自分の言葉で説明しておられ、保守系と思われる方もはっきりと「犬山の子どもたちのためには、参加しない方が良いと思う」と書いていました。あれを読む限り、委員の話し合いが足りないということはないと思います。次の4月は不参加だそうですが来年が心配ですね。


まい 2008-01-29 22:37:50


■まいさん、こんばんは

コメントとTBありがとうございます!
TBは通っていました。わたしのところには商用のスパムがとても多いので確認後の表示にしていて、さらにもともとTBが通りにくいこともあり、お手数をおかけしました。


「事務局主導」については、わたしもおかしいと思って赤字で示したのですが、このことの本質を強調するために、たしかにもっと明示的に書くべきでした。

昨年の1/14の会合で、名古屋大の中嶋先生から、コンセンサスを経たものだから、というお話を聞いていました。明石書店から本が出る直前の原稿も一部拝見しました。
だからまず、この点からして「嫌疑の捏造」だと考えています。


※中嶋先生の講演概略は、
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10023460099.html
の「報告5」に記載しました。


内閣の名前だけが変わったら、教育の危機が伝えられなくなり、本当に心配ですね。

Rolling Bean 2008-01-30 00:00:33

【070130追記:ここまで】


ここに至る背景はこちら↓でも書きました。

◆07/11/30

犬山の教育委員2名を学力テスト賛成派へ・軍へのお誘いをする知事もいて、まるでアメリカです!


アベ政権の元での学力テスト推進にあたっては、学校間の競争原理の導入により新自由主義的な考え方が教育現場に持ち込まれることの危険性を懸念し、犬山はそれに賛同しなかったという経緯があります。


積極的な否定から実際にそんなことに意味があるのかという疑問を含めて、メディアもあれほど批判していたのに(「旭川学テ事件 」などを挙げて)、このところすっかり自治体ごとの比較などに熱をあげていて、まったく忘れやすい人たちだとためいきをついていたところです・・・。


記憶に新しいところでは、東京都足立区では学力テストの結果に応じた予算配分ということが方針として出されたり、生徒に回答を教えたり、障碍のある生徒を数人休ませたり・・・という恐れていた事態が発生しました。

(この件に関してのネットニュースはお見事というくらい消にされています)


ただし、こうしたことも実際には氷山の一角に過ぎず、もっと広くの自治体で、学力テストを新たなひとつの契機として、大規模に排除や偽装などがなされています。

以前書いたことがあったかもしれませんが、「自主的な」という名目のもとでの成績不振児への強制欠席などが頻発しています。「学校に協力した」、ということから欠席扱いにはならないそうです。


小さなレイシズムの芽が小学校と中学校に「積極的に」植えつけられ、それを見ながら子どもたちは育まれ、ひたすら上意下達をかみしめながら教職員は業務を遂行しなくてはならない、そこに明るい先行きがあるとは思えません。


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森田実さんのコラムで、前市長の石田さんが熱意と愛情を持って教育政策に取り組んでこられた実践が紹介されています。

2006.5.17(その1)
森田実の言わねばならぬ[94]

再び犬山市と石田芳弘市長のこと――独自の教育方針を貫き、大きな成果を上げている犬山市。石田市長と犬山市教育委員会の“わが道を行く”

「教育とは、時代が其一切の所有を提供して次の時代の為にする犠牲だ」(石川啄木)


(略)

 人間、歳をとって思うことは、第一に、自分が本当に若い人たちを大事にしてきたか、全力を挙げ全身全霊をささげて若い人々の教育のために尽くしたか、という反省である。
 もう一つは、人生において最も大切なことは人を愛するということである。自分は本当に家族を愛してきたか、友を愛してきたか、知人や一緒に仕事をした人たちを愛してきたか、青少年を愛してきたか――という反省である。
 私はいま73歳。そうした反省のさなかにいる。石田市長のように市民を本気で愛し、青少年のために全力を尽くしている人を見ると、心が温かくなるのである。

首長に求められる資質として、多様性を理解することがあげられます。

強者の理論で町が「元気」になるはずなどありません。



◆犬山市と学力テストに関する弊ブログ関連エントリーです。

07/01/14
緊急!新春集会 教基法「改正」後の世界を批判的に展望する』に参加してきました


07/2/15

全国学力テスト不参加(犬山市)に撤回申し入れが…


07/2/16

犬山追加情報: 「犬山の教育プラン」紹介と森田実さんのコラム


07/11/30

犬山の教育委員2名を学力テスト賛成派へ・軍へのお誘いをする知事もいて、まるでアメリカです!



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