公的機関や大手報道機関の手による「調査」結果のなかでも、市民感覚として理解できない数値がしばしば一人歩きして、いや、させられているように思えることが増えています。


感覚で納得しがたいことの例としては、内閣支持率が体感よりまだ高すぎるということ、景気浮上のこと、各地方選の支持前評判もしかり。

また、ジニ係数のごまかしや、OECD学力調査のまやかしなど、汚い手合いのやり口がすでに露見した例もあります。

(それでも、マスコミは報道できないようだけど・・・)


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1月末の、「別姓反対論巻き返し」の一斉報道も、市民感情を反映しているはずの調査にしてはあまりに疑問のあるものではありました。


わたし自身は、90年代に民法が変わりそうな機運に期待していた(先日、書棚の整理をしていたら何冊もその頃の本が出てきて感無量だった)し、当然、今でも諦めてはいません。

最近も、やはり同世代の知人友人は、法律婚にこだわらなかったり、裏ルート?も駆使して、自由な内心で「本当の名前」だと思う氏名(世間では通称だとか旧姓だとか言われるもの)を使っているけれど(わたしも、あまり力はないけれど抵抗はしている)、ただし、そのいっぽうで、自分のまわりの狭い範囲なので全国的には分からないけど、どうも若い後輩などは、「旧姓はあくまでもペンネームのようなものですから、本名は家族で一緒のほうがいいですよね」といった発言をする方々も増えている・・・ように思えていました。

(選択的別姓制度に「一緒でいたい」ことを排除する意図はないのですが、それも「嫌な感じがする」のだそうです)


だから、全国紙で、「別姓容認派がやや減った」と伝えられても、少数派の意見を封殺するという不寛容さへの怒りの反面で、「そうなのかなあ、そこまで、通称使用でもいいじゃん、という機運が数値として現れているのかなあ」、という気持ちもありました。


(以下、強調やリンクは引用者による)


YOMIURI ONLINE 夫婦別姓派減った…同姓派5ポイント増 賛否拮抗…内閣府調査

 内閣府は27日、「家族の法制に関する世論調査」の結果を発表した。夫婦が別々の姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓制度について、法改正反対派が2001年に実施した前回調査から増加する一方、容認派は減少し、賛否がほぼ拮抗(きっこう)した。法務省は今回の調査結果について、「夫婦別姓を導入する民法改正案をただちに国会に提出する状況にはない」としている。【以下略】 (2007年1月28日 読売新聞)


それが、今日、喉が痛いのと花粉症の薬をいただくために息子とともに病院に出向き、待ち時間に新聞を読んでいたら、かなり驚くような事実が書かれていました。


2007/2/10 東京新聞「暮らし」欄 『別姓反対』増えたって本当?内閣府調査の内実は…


 「夫婦別姓 反対派増える」「賛否が拮抗(きっこう)」-。先月、内閣府が発表した夫婦別姓に関する世論調査結果に対し、「実感と隔たりがある」と疑問視する声が出ている。調査データを精査してみると、回答者の年齢層が熟年層に偏っているうえ、別姓を名乗る夫婦にかつてなく寛容な“もう一つの世論”が見えてきた。 (井上圭子)


 「賛否が拮抗? 嘘(うそ)でしょ。私の周りでは結婚後も仕事で旧姓を名乗る人は増え続けてるよ。『法改正にブレーキ』とは何か作為を感じる」

 一児の母でもある会社員(38)はこう驚いた。

 夫婦別姓を認める法改正について女性の意識をみると、「必要ない」という反対派が31・7%、「改めてもかまわない」という容認派は36・2%。男性の意識では反対派が少し増えるが、女性に限っても差は4・5ポイントで、拮抗しているとも言える。

 だが“落とし穴”は回答者の年齢層にある。反対派が熟年層にかなり偏っているのだ。一方、夫婦別姓問題に直面したり、直面してきた二十-四十代の女性の反対派は20%に満たず、逆に容認派は40%を超える。

 しかも、回答者の年齢構成を国の人口構成と比べると、二十代、三十代は少なく、五十代、六十代は多いことが分かった。二〇〇一年の前回調査の方がまだ現実の人口構成に近かった

 また「旧姓を通称として使えるようにする法改正は構わない」は三十代で四割にも上っている。

 内閣府は「面接調査をしているが、若い層は不在や拒否が多くて…」と説明するが、この調査の目的は「今後の施策の参考とするため」だ。なのに、若年層や日中仕事などで出ている人が少ない「世論」でよいのだろうか

 京都大学法科大学院の二宮周平教授(家族法)は「『ためにするための調査』だね。回答者の86・6%が既婚者92・9%が子どものいる人という比率もいびつ」と指摘し、こう話す。

 「結婚制度づくりの資料にする気があるのなら、これから結婚する人の意見をきちんと反映できる調査にしないと

 夫婦別姓問題に詳しい榊原富士子弁護士も「結婚に最も関係の深い二十代、三十代の有効回収率が低くては世論を表していない。回収率アップの工夫をするべきだ」。

 返す刀で報道の在り方にも疑問を投げかける。「法改正以外の項目では別姓を名乗る夫婦(事実婚と通称使用)に寛容な結果が出ているのに、ほとんど報じられていない

 確かに、「改姓で不便を生ずることがあると思う」や「結婚しても仕事上不便を生じないようにした方がよい」、「実家の名前を残すために結婚しにくくならぬようにした方がよい」、「名字が違っても、家族の一体感には影響がない」などの項目は過去最高を記録した

 にもかかわらず、法改正に対する賛否の差が前回よりも縮まった。その理由を、二宮教授は「法改正すべきだという答申が出たのは十一年前。その後、やむを得ず使い始めた通称が定着し、一方で『法改正は難しそう』というあきらめムードもあるのでは」とみる。

 榊原弁護士は「通称使用を合わせると何らかの法改正が必要と考えている人は、反対派の倍もいる。一方、いまだ通称使用を認めない職場もあり、困っている女性は多い。法改正は必要です」と話している。


統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 』という本(1968年発売の古典)を、学生の頃、何かのきっかけで紹介されて読んだけれど、そちらにあったようなウソ、それももっとも簡単な仕組みによるいつわりがまかり通っています。


一斉報道にあたり、大本営発表を恣意的に流した記者ばかりじゃなかったのだとしたら、今後はぜひとも、なんとしても自分自身の立場と思考能力を駆使して、数字の背景情報を取り込んで考えてほしいと願います。

(現場記者の殺人的な繁忙も分かってはいますが…)

「母集団に偏りがあるので、この数字がすなわち現状を表すとは言い切れないが、」、といった一言を付け加えるかどうかでも、大きな違いだと思います。


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病院の帰りに、週刊ポスト を買いに書店に入りました。以下の特集のためです。

(強調部分はサイトの原文ママ)

<「健康不安説」も再燃で崖っぷち>
これが本誌にしか書けない
「安倍スキャンダル」全相関図だ

アパ、ヒューザー、ライブドア、ESIほか…いよいよ
秘密後援会「安晋会」を中心に、首相をとりまく
「利権人脈」のすべてがつながった

安倍首相の「最大の火薬庫」が火を噴いた。安倍氏が深く関わる“宗教団体”から消えたカネに、検察が捜査のメスを入れたのだ。この事件を含め、次々と明らかになる「後援グループ」の疑惑は、全てが秘密後援会「安晋会」に結びつく。これまで安倍氏は必死にそれを封印し、大メディアも沈黙を続けてきた。が、もう限界だ。本誌がその全貌を公開する。

アベ人脈が、慧光塾のも含め詳細に書かれています。

相関図は、亡きおーるさんの手によるもの(阿修羅にリンク )をベースにカスタマイズしたようなところが見受けられますが、それでもトップ特集という点では非常にがんばっていらっしゃる(関係者は命をかけているという思いでしょう)し、野口さんの不審死についても言及されています。

それにアベ周辺が、新聞広告掲載拒否の命令をかけられないあたりを見ると、もう大疑獄浮上も時間の問題かもしれません。


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さらに、『安倍首相が指示した「教育再生会議報告」の改竄部分』という記事のために、週刊文春もを立ち読みしました。


すると、その記事によれば、教育基本法「改悪」や、再生会議での提言を受けて、本国会でアベが目指す教育三法の「改定」(詳細は中国新聞リンク )のために、なんと、教育再生会議の報告書が改竄されていたのだそうです


その記事によると、(1)教育職員免許法改正案(2)地方教育行政法改正案(3学校教育法改正案の3法案は「速やかに」改正が望ましい(「速やかなる」かもしれない)が、すべての該当箇所にわたり、「速やかなる」→「平成19年通常国会にて」、という書き直しがなされたということです。

本国会の施政方針演説のために、これらの改竄がなされたというのが記事の見方です。


もはや、これははっきり、「陰謀」と言っていいでしょうね。


山谷えり子氏が、当初は委員自らの自慢話ばかりでいっこうに動かない教育再生会議をてこ入れするために「ぱしり」として、委員会と内閣の間を走り回っていた様子なども、現場関係者の声として掲載されています。


教育再生会議の参加者には、毎回21,600円が支払われているそうです。

大規模な講演会などを回られる著名な先生方にとっては高い額とはいえないのでしょうけれど、自慢話や懐古談をしてお小遣いがいただけてかつその結果責任は取らなくても勝手に内閣が改竄をしてくれる、という意味あいからすると、まったく存在意義がないものだということを改めて思い知ります。

文春ですら、教育を政争の具にするな、という言葉で記事を締めくくっています


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別姓に関する世論調査も、再生会議報告書の偽装も、生命に関わる耐震偽装と同じ視線で語ることはできないでしょうけれど、女性や未成年(自民党内ではいまだに女子供というタームが使われているかもしれない)に対し、軽んずる心もちがよくよく伝わる2つの偽装事件です。前者は未必の故意ってやつかもしれませんけど。


しかし、こうしたことが「活字」にもあがるようになってきました。

今回の記事とは別に、スキャンダルのネタをおおっぴらに披露できるようになり嬉しいという浮かれた論調も時々見るけれど、この際、重篤なウソは全ルートで解明し、これ以上、人(市民)が人(統治機構およびそこに少しでも関わる人)を信じられない方向に世の中を引きずらない、それだけの覚悟を持ってほしい。


もちろん、市民側が真実を射抜く姿勢を持つこともきわめて重要だけど、デジタルディバイドだけでなく、読解能力や洞察力の違い、地域的環境などが、真実を射抜く姿勢のディバイドを拡大するという恐れはあるのだから、大手ジャーナリズムは少しでもその溝を埋めるための、最低限の補完的な責任を果たすべきだ、と強く考えます。


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