第10話 『マサキ(前編)』
第10話 『マサキ』
―――この状況で、勝算は全くない。
でも、やれるだけの事をやらないと...
僕は、‘烈火’の腰に装備されている
小刀を抜き、構えた。
『うぁぁぁぁぁ!!』
そう叫びながら、僕は‘紅蓮’に斬りかかった。
でも...全く当たらない。それどころか
かすりもしない。
しばらく避けるだけだった‘紅蓮’だったが
‘烈火’から距離を空けると、ソウルの炎で剣を作り出した。
『戦い方も知らんのか?身の程知らずが!!』
‘紅蓮’のパイロットが、そう言ったかと思うと
一瞬で、‘烈火’の両腕は斬り落とされてしまった。
バランスを失い、頭から崩れ落ちる‘烈火’
あまりの衝撃に、僕は気を失いそうになった。
何度も左右の操縦桿を引き、立ち上がらせようとしたが
両腕を失った‘烈火’をうまく立ち上がらせる事が出来ない。
少しずつ近付いてきた‘紅蓮’が
‘烈火’の頭部を踏みつける。
必死に抗っても、今の状態では跳ねのける事も出来なかった。
『もう抵抗すら出来ないか...脆弱な奴だ。』
と狂気に満ちた声が頭に響く。
殺される―――そう思った。
しかし‘紅蓮’は動けなくなった’烈火’に背を向けると
少しずつ‘疾風’と‘水月’に近付いてゆく。
『自分の力量もわきまえぬ愚か者め。
貴様は、そこで仲間が殺されるのを見ているがいい。』
‘紅蓮’のパイロットは、そう言いながら
メグミの乗る‘水月’のコクピットに狙いを定めた。
『やめてくれ...』と消え入りそうな声で、僕は言った。
『ククク...死ね。』
その言葉を聞いた僕は
『やめろぉぉ!!』と声の限りに叫んだ。
目の前の風景が歪んでゆく。
―――僕の中で何かが砕けた気がした。
( 後編 に続く)
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