ゲームレビュー「ドラゴンズドグマ」 | ゲーム後進国日本

ゲームレビュー「ドラゴンズドグマ」

ドラゴンズドグマは、色々と考えさせられたゲームだ。


まず最初に言っておきたいのは、このゲームは遊べるレベルには達しているということだ。当然、SkyrimはもちろんFableやBioWare作品には遠く及ばないが、そういったメガヒット級作品を除いたオープンワールドRPGの一般的レベル、すなわちTwoWorld、Gotchic、Risen、TheWitcher等といった作品群と比べれば、最下層に位置するものの十分付いていっている内容である。


確かに悪い部分はいくつもある。散々言われている移動手段の乏しさや朝と夜以外の時間を指定するイベント、他にも戦闘中に散歩する山賊、クエスト目的の不親切さ、アンロックDLC、スカスカのマップ等数を挙げればキリがないが、それでもギリギリ、他所様に出せるRPGとしての形を保っていると感じられた。特にプレイヤーの仲間となるポーンのシステムは不完全ながらも評価できる点だ。デモンズソウルの時も思ったが、日本の製作者はこういったアバター的というか、ソーシャル的というか、プレイヤー同士にやや距離感のあるオンライン要素を作るのが得意なのかもしれない。ドラクエ9のすれちがい通信も、個人的には大嫌いだが世の中では大ウケだったらしいし。


総合的に見れば、70点くらいはあげてもいいゲームだと思う。もちろん他の国産ゲームが総じて30点40点レベルであることを考えれば大健闘と言っていいし、一線級の海外産ゲームと比べれば見劣りするのは事実である。


しかし。このゲームには一般的なレビューで説明できる「面白さ」や「つまらなさ」だけではなく、なんとも言えない「気持ち悪さ」を感ぜざるを得なかった。なんというか・・・このゲームは虚しいのだ。普段は理論的、理屈的な書き方を心がけている本ブログだが、これに関しては感性を言い表すしかない。


自分がこう感じる原因は、本作の薄っぺらさやハリボテ感だろう。幾つかのキーワードを入れると自動でゲームが作られる機械があって、そこに「オープンワールド」「剣と魔法」といったキーワードを入力して出てきたのがドラゴンズドグマだった、という話があったら信じてしまいそうなくらい、人が作った物という印象が希薄なのである。


例えばキャラクター。彼らとの会話はまるで自分がゲームの中に取り込まれたと錯覚してしまうほどだ。何しろその手の設定の漫画やアニメにありがちなNPCの不自然さそのものなのだから。とにかく彼らの存在にはまったく個性や人間性を感じられない。嫌になるほど顔を合わせることになる領都の宿屋の主人でさえ、こうしてブログを書いてる時点で、顔も名前も、性格や台詞もまったく覚えていない。他のキャラクターにしても、どこかで見たことあるような格好をして、どこかで聞いたことのある台詞を言う連中ばかりだ。そして極めつけはあの城に住んでいるピエロだ。製作者は恐らくあのピエロを超個性的で憎たらしく、プレイヤーに鮮烈な記憶を植え付けるキャラクターのつもりで作ったのだろうが、個人的にはあのピエロには不自然さしか感じられない。


先程言及したポーンにしても取ってつけた感しかない。正直まだクリアしてないのでなんとも言えないのだが、いくらなんでも設定が適当すぎではないだろうか。こういう仲間システムを作りたかったので、ポーンという存在をムリヤリ付け加えましたと言わんばかりの設定だ。本来ならそのポーンという存在を主軸にしたシナリオと世界設定を作り上げるべきではないか。本作のキモである戦闘に関しても同様だ。まるで他ゲームで使われた戦闘システムやモーションを、そのままこのゲームに移植したかのような違和感を覚えた。例えば強攻撃なんていつどこで使うのだろうか。部位破壊がある割には、部位をピンポイントで狙う攻撃方法に乏しくないだろうか。


そして何より、このゲームには心の底からの欲望を満たすものがない。戦闘や成長といった外面的な面白さがあるだけで、まだ見ぬ地を冒険するだとか、深いストーリーや世界を味わうといった、ゲームシステムで定義されていない面白さというものが皆無なのである。


正直なところ、今までクリエイター魂だの作り手の気持ちだの、そんなものを考えたことは一度も無かった。例え売るために嫌々作ったものであっても、面白いと感じればそれでいいと思っていた。しかしこのゲームで気付かされた。どんなにつまらない日本製のゲームであっても、製作者の愛というものを無意識に感じていたのだ。前に酷評したアーマードコアにしても、製作者のポリシーや目指したいものを感じられた。しかしドラゴンズドグマにはそれがない。プレイしていて伝わってくるのは、言葉に出来ない孤独感ややらされている感だけだ。


本作は決して悪いゲームではない。国産ゲームの殻を破った、賞賛されるべきゲームだとは思う。だがこのようなゲームが国産ゲームのスタンダードになったとしたら、それはそれで嫌だ。海外の真似をしないで日本人らしいゲームを作れとは言わない。日本のゲーム制作者は、日本のゲームらしさを捨てた上で、新たに自分らだけのアイデンティティを見つけて欲しい。