ドラムのレコーディング2(かぶりと位相) | ギター兄ちゃんの独り言…

ドラムのレコーディング2(かぶりと位相)

はい。前回の続きどぇす(σ・∀・)σ


ドラムのセッティングが終わったらマイクのセッティングです。

マイキングと一言に言ってもなかなか難しいものです。それがマルチマイクともなれば尚のこと。

難しいからこそ面白く。楽しむ為にも技術と。そして何より知識が必要です。

で。この手の作業中に。エンジニアが勘違いしてはいけないことがあります。

レコーディングでの音作りはエンジニアの実験の場ではないということ。

特に経験の少ない人にありがちなのですが。実験は自分のプライベートな時間内でやること。

音作りに時間をかける場合も多々ありますが。それは演奏者が望むからであって。

エンジニアが試してみたい手法を実験する為に使う時間ではないのです。

マルチマイクでのマイキングはレコーディングの醍醐味の1つとも言えますが。

レコーディングの当日は自分の持っているセオリーの範囲内でそつなく作業します。

レコーディングはギャンブルではない。のだヽ(・∀・)ノ



では。マイキングの方法ですが。

単純にマイクを手前にポンとおくという簡単なことではないです。

マイキングというのは対象の音源に対して、

マイクの距離と角度を考えてベストな音が録れるようにセッティングすることなのですが。

ドラムって楽器は複数の楽器を同時に演奏する特殊な楽器です。その特殊な楽器を録音するには…

【1.かぶり】 【2.位相】 【3.焦点】 【4.ハース効果

この4つを事柄を理解する必要があります。これが理解できないとまともなレコーディングは出来ない。

と。ゆー。ことで。この4つの現象を順番に説明していきます。





【1.かぶり

複数の楽器を同じ空間で録音する時にかならず起こるのがこの"かぶり"です。

例えばギターとピアノを同じ部屋で録音したとしたらギターアンプのマイクにはピアノの音が。

ピアノのマイクには逆にギターのアンプの音が混在してきます。

このような対象の楽器以外の音をマイクが拾ってしまう現象を"かぶり"と呼びます。

またプロレスや総合格闘技などにおいて。前屈みやうつぶせになっている状態の相手に対し、

正面から相手の肩口、または背面に乗りかかるように覆い被さった姿勢のことを
"がぶり"と呼びます。

主にタックルに来た相手を潰す目的で使用されます。(Wi○i参照

ドラムの場合であれば。1つの楽器ではありませんのでスネアドラムやシンバルなど。

複数のパーツから成り立っています。それだけ1つのマイクに対する"かぶり"も多くなります。

"かぶり"があるとどんな問題が起きるのか?簡単なことです。先の例で言えば。

ギターの音を上げればピアノが。ピアノの音を上げればギターが合わせて上がります。

イコライジングをしてもコンプレッションをしても"かぶり"の影響が常につきまといます。

ようするに各マイク単体でのトラックの独立したコントロールが困難になるということ。

もちろん別々の楽器の場合であれば演奏者も違いますので。

部屋を分けたり、順番に録るなどの方法をとることで"かぶり"を回避できます。

注意点としてこの"かぶり"ですが。絶対的悪ということではありません。

"かぶり"を邪魔とみなして出来る限り排除する考えもあれば。

逆に"かぶり"も含めた音作りとして利用する考えもあります。

この2つのどちらかの考えでマイキングやセッティング、後の処理を行います。

"かぶり"を含めた音作りが良い味を出している音源も沢山ありますし。

コンサートやLIVEでの録音の場合は"かぶり"は避けられませんしね。

"かぶり"が多いと音の輪郭がボヤけたりしますが。上手く使えば空間的な奥行きの操作が出来ます。

"かぶり"を排除していくと音の輪郭が浮き出てきて音の定位感などが明確になる利点があります。

ドラムの場合はどちらかに寄って音作りやセッティングを行う場合もあれば、

両方を利用して音作りを行うことも常套手段です。

俺の場合。ジャズやブルースなどの緩い音楽であれば"かぶり"を利用した音作りをしたり。

逆にアップテンポな激しいロック音楽の場合は"かぶり"を出来るだけ排除したりもします。

で。この2例はどちらかと言えば極端な例で。自分のデフォルトなやり方としては

パーツごとに"かぶり"を排除する部分と"かぶり"を利用して音作りを行うパーツがあり、

それらを組み合わせて響きとタイトさをコントロールして音作りを行うことがほとんどです。





【2.位相

マルチマイクでの録音の場合。"かぶり""位相"は互いに干渉し合う問題です。

先の項で書いたギターとピアノを例のように。それぞれのマイクに互いの音が混在する。

そこまでは理解できていると思います。

でも。実際には。たんに互いのマイクに互いの音が混在しているという単純なことではなく。

それぞれのマイクに混在した音と実際のマイクとの音に時間軸のズレが生じてしまいます。

この時間軸のズレというのは複数のマイクの間の物理的な距離の違いと考えて下さい。

例えばピアノに立てたマイク。このマイクにはギターの音が混在しています。

このピアノに立てたマイクとギターのアンプとの距離が5mとして。

実際のギターのアンプの前にもマイクが立っています。この場合その5mの距離だけ音がズレます。

小学生の頃に。理科の授業で音の早さは「340m/秒=マッハ1」と覚えたと思います。

正確に言えば音の速さは気圧と温度、湿度などで変化するのですが。おおむねこのスピードです。

ようするに一瞬とは言え音が伝わるには時間が必要ということです。

「340m/秒」ということなので5mなら。およそ0.015秒ほどでしょうか。(算数は苦手ですw

その0.015秒の分だけ2本のマイクでそれぞれ音を拾っている時間がズレるということ。

つまりディレイが発生します。

この物理的な距離によって起きるディレイによって互いのマイクで拾った音の波形の波がズレます。

 $ギター兄ちゃんの独り言…

このズレが位相のズレと呼ばれるものです。

んーで。「位相のズレ」が起きることでどんな問題があるのかということですが。

まずはディップ(音の打ち消し)が発生するということ。波形で見ると↓こんな状態のことです。

 $ギター兄ちゃんの独り言…

絵がヘタクソですみません(TωT)

DAW上にて通常の波形を拡大するとこのような線の状態になるのはご存知かと。

AとBの二つの音に対して波形のエネルギーの向きがそれぞれ逆になっている状態のことです。

真ん中の線がエネルギーが0のライン。上に向かえば+。下に向かえば-です。

このように同じ1つの音に対してエネルギーの向きが逆になっていることをディップと呼びます。

この場合。+側と-側でエネルギーがぶつかり合い相殺することで音が打ち消されてしまいます。

図のようにエネルギーの向きが完全に逆の状態で重なっている場合であれば音は消えます。

このような場合。ミキサーやDAW上にて。どちらか片方のトラックの位相の反転させるか。

フェーズスイッチを入れることで解消されるわけですが。

実際には微妙にだけその現象が起きている場合がほとんどなので耳とメーターを頼りに作業します。

ProToolsであればPHASESCOPEというメータープラグインが標準で装備されています。

 $ギター兄ちゃんの独り言…

耳だけでの作業では疲れますので。こういったツールを使って作業をするのが良いと思います。

もう1つの問題としてピーク(音の過度な強調)が発生すること。波形で見ると↓こんな状態。

 $ギター兄ちゃんの独り言…

絵が下手なのは俺のせいじゃないからね(´_ゝ`)

波形の山がAとBでズレ、それが微妙に嫌な位置で重なることで望まないピークが発生します。

このピークディップの現象が交互に繰り返されフランジングのような現象が起きたりもします。

弱々しく線の細い音で。よく聴くと音の重なり部分でボヤけたり裏でゴワゴワした音が聴こえます。

こういった位相のズレは例えばベースなどのマイク録音とライン録音の間でも起きますし。

1つの音に対して異なった行程を行うことでも起こります。

マイクやトラックが1つや2つであればレコーディング後にDAW上にて波形をズラして修正可能です。

 (DAW上での波形の修正の方法は後ほど)

問題はマルチマイクでの場合。マイクが増えるごとにそのズレや干渉が多くなります。

例えばスネアの音量をあげたらキックの低域が薄くなって。逆にシンバルにピークが出来た。とか。

キックの音量を上げたらハイハットの定位がボヤけつつスネアが軽くなった。だとか。

位相ズレの大安売りのような状態になってしまうと修正することすら不可能な場合もあります。

大事なのはレコーディングの時点である程度の位相のコントロールをしておくこと。

位相は基本的にマイクの距離と角度を調整してコントロールするのがセロリー。いや。カロリー。

次に話す"焦点""位相"と深く関わってきますので。この項と合わせて読んで下さい。






まー。ピアノならまだしもドラムのレコーディングはまず経験がないと無理ですので。

最初から複雑なマルチマイクは失敗以外の結果は得られないのでオススメしません。

ひとまず2本(ステレオ)での位相のズレを判断出来る耳を持つことが先。

まずは基本的なスキルを身につけなければ先に進むべからず。w

それが出来るようになれば次は3本です。そのとたんに一気にハードルが上がります。

2本の場合はスピーカーから出てくる音を左右に振り切るだけで判断も容易に出来ますが。

3本での位相の判断はそうもいかない。3つの音を合わせて判断できる耳が必要になります。

それも出来るようになれば次は4本に調整しましょう。

4本にもなると位相を合わそうにも一筋縄ではいかなくなります。

あっちを調整すればこっちがおかしい。こっちを調整したら今度は別のそっちがぁぁぁぁー。

となるw マイキングの迷路においでませ( ´艸`)

もちろん位相が合っているだけでなく。良い音で録れる位置に調整できていないと意味がない。

ここまでを耳で判断でき。コントロールできるようになれば。

そこそこの技術も身に付いているはずです。

もし学生さんであれば2年でここまでの技術は身につけておきたいところです。

4本の次は一気に8本ぐらいにどかっと増やしましょう(σ・∀・)σ

ここまできたら何をどうしなければいけないかはすでに分かっているはずなので。

とにかく経験を積む。経験でしか技術もセンスも習得は出来ないから。

そして。10本以上となると。ものすごぉ━━━━━━く難しい。

実際にはドラムのレコーディングで10本以下でレコーディングすることは稀です。

でも。難しい。だからこそ楽しい。それがレコーディングです。



続く(・∀・)/







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