[編集 ] 日本語版にまつわる問題

[編集 ] 翻訳に関する問題

松岡佑子 による翻訳 については、英語 原文を読み違えてしまっている誤訳のみでなく、日本語 と しても文法的・語法的に間違っている箇所もかなり多く、また現代文学にはふさわしくない古めかしい表現・訳語・人称も多用されるなど、90年代のイギリス を舞台にしている原書のイメージを損なっているとの批判がある。読者から指摘される主な問題点の例としては以下のようなものがあげられる。


注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。


  • 原文の完全な誤訳
    1. 第1巻に出てくるスネイプの謎解きパズル(第16章)を完全に誤訳したため、原書ではきちんと筋が通っているパズルが日本語版では解けなくなって いる。これに関しては出版当初から「解けないパズルを出すなんて、やはりハリー・ポッターは低レベルな児童書の域を出ない」との批判があったが、これはあ くまでも日本語版の誤訳による。
    2. 魔法界から巨人たちが「banished(追放された)」と書いてあるにもかかわらず、banishをvanishと取り違えて「消え去った」と訳している。このような初歩的翻訳ミスは他にも各所に見られる。
    3. ハグリッドの飼い犬ファングの鳴き声が小屋の中で大きく響いているという描写に使われているbooming(音が響いたり、反響したりして大きく 聞こえる時に使う形容詞)を、「ブーンという鳴き声」と言う犬の鳴き声とは思えない訳にしている。このように、かなり簡単な単語にも関わらず、元の英語の 意味を理解しないで訳しているとしか思えない例や、辞書に出てくる単語をそのまま適当に当てはめたことで原書の意味やイメージとはかなり違った訳になって いる箇所が他にも非常に多い。
  • 原文の俗語や慣用句を直訳したことによる、不可解な日本語の文章
    1. 車酔いで顔色が悪くなっている(英語では顔色がgreenになる、という表現をすることが多い)魔女について、英語原文をそのまま直訳して「緑色の顔の魔女」と訳している(実際の訳文では「緑色の顔を青くして」と、更に不可解な文章になっている)。
    2. 「何もないところから(英語だと、out of thin airという慣用句)魔法で扇を出した」という原文の記述をそのまま日本語に直訳し、「空気から扇を作り上げた」と訳した。
  • 原文の意味にそぐわない、不適切な日本語による表現
    1. スネイプが「ヒョコヒョコ歩く(prowling walk、実際には音を立てずにすべるように忍び歩く感じ)」、「冷たい猫撫で声(soft cold voice)」など。
    2. クィディッチでの接触寸前プレイも「赤むけ」、試験で精神的に参るのも「赤むけ」、冷たい風にさらされても「赤むけ」などのように、現代日本語で はあまり会話に登場しない「赤むけ」という言葉が実に様々なシーンで別の意味で使われている。こうした安易で不適切な訳語の選択のために、原作の意味が正 しく読者に伝わらない例も多い。
  • 誤訳ではないが、現代ではあまり使われなかったり、原作国のイメージにはそぐわない日本語による表現
    1. 後生だから(お願いだから)、唐傘(パラソル)、朝餉(朝食)、厨(台所)、竈(ガス台)、若様(ある店主が名門出身の少年に対して使った呼称)、手水場(バスルーム)など。
  • 日本語の完全な誤用
    1. 悪の呪術によって仮死状態になってしまったハーマイオニーの姿を頭から消し去る事ができないハリーについて、「(ハーマイオニーの姿が)目にこびりついて離れない」と記述。これは「目に焼きついて」と「頭にこびりついて」を混同したものと思われる。
    2. ディメンターの「口」について、「がっぽりあいた穴」と記述。穴があいてる状態は「がっぽり」ではなく「ぽっかり(あるいは、ぽかり)」とするの が正しい日本語。また、宿題の量が多いという意味でも「がっぽりと宿題が出た」と書かれている箇所もあり、訳者が「がっぽり」という言葉の持つ本来の意 味・ニュアンスを誤解したまま使っているという指摘もされている。
    3. 以上のほかにも元々の日本語の意味を誤解して使用しているとしか思えない箇所はかなり多く、また、「主語と述語がつながっていない」「文がつな がっていない」「疑問形で始まって肯定形で終わっている」等、日本語としての文章構成に問題がある箇所が多い。このようなミスはプロの校正者によるチェッ クがあれば、すぐに見つかるようなレベルのものである。
  • 訳語の不統一
    1. ヒッポグリフがferretを食べてその骨を吐くシーン(3巻)で、最初に出てくるferretを「スカンク」と訳し(舞台はイギリスであるた め、アメリカ大陸にしかいない「スカンク」と訳するのは誤訳。正しくはヨーロッパ原産の「イタチ」)、次には「イタチ」と訳している。これにより、一つの 継続したシーンであるにもかかわらず、ヒッポグリフが「スカンクを食べて、イタチの骨を吐いた」という実に不可思議な現象になってしまっている。
    2. 一つの名称・人名などの固有名詞がその時々によって違うカタカナ表記で書かれている。
    3. 恒星の名に由来する兄弟の名前を、兄はラテン語発音の「シリウス」、弟はアメリカ英語発音の「レギュラス」と記述している。恒星の名としてラテン語発音に準じれば「シリウス 」「レグルス 」 が正しく、英語発音に準じれば「シリアス」「レギュラス」が正しい。これ以外でも固有名詞のカタカナ表記がイギリス英語発音、アメリカ英語発音、ラテン語 発音、イタリア語発音、等々、統一性がまるで見られない。訳者によると「日本で一番なじみのある発音を適用している」としているが、必ずしもそうでない ケースも多く、何を基準として表記をしているのか不明。
  • 原書への誤解を助長する、訳者の個人的解釈に基づく脚色
    1. 第4巻でハリーがヴォルデモートと対決する場面において不死鳥の歌とハリーを勇気づける声がハリーの頭の中に響いてくるシーンがあるが、訳者の勝 手な思い込み・演出によりその言葉を日本語版特有のダンブルドアのしゃべりかたにしてしまった為に、日本語版読者の多くにダンブルドアがテレパシーのよう なものでハリーに呼びかけているという誤解を与えた。原書版ではこれはあくまでも不死鳥自身の歌と声であり、ダンブルドアが遠隔からハリーに呼びかけてい ると思わせるような記述は一切ない。
    2. 登場人物の年齢や性格などに合わない言葉遣い
      1. 日本語版ではティーンエイジの少女が「おやまあ」、「後生だから」などと、非常に年寄り臭いしゃべりかたをしたり、同様の年頃の少年がまるで幼児 のような話し方をしていることが多い。また一人の少年がその時々によって昭和初期の古臭いギャグ(例:おったまげー、おっどろきー)を使ったかと思うと、 別の場面では90年代頃の流行語を使ったり(いずれもわざとそうしているわけではない)していることもある。
      2. また、少し世俗離れした雰囲気の少女のせりふがまるで知的障害がある子供のようなしゃべりかたになっていたり、原作ではしゃれたインテリ風の校長 が日本語版ではまるで昔の田舎の老人のような年より臭いしゃべりかたとなっているなど、不適切な言葉遣いのために原作と日本語版ではまるで印象が違ってし まっている登場人物が多い。
      なお、様々な人称や語尾などの言葉遣いは、日本語独自の表現である。原書でもその人物の性格や出身等々によって「言葉遣いの違い」(含・訛りや語 彙など)はあるものの、日本語版では原書における登場人物のもつイメージにそぐわない言葉遣いになってしまっていることが実に多く、日本語版読者と原書版 読者の登場人物像に著しい差異が生じてしまったり、日本語版読者がその人物の心理状態や言動の意味を読み込む上で大きな妨げになってしまっている例が多 い。

以上はあくまでもごく一部の例であるが、第1巻から最新刊第6巻に至るまで、上記のようなミスや訳者の独善的解釈による余計な演出が散見されてお り、不適格な人称や時代錯誤な用語、せりふ等とあいまって、日本語版は原作とはかなりかけ離れたイメージのものとなってしまっている、との指摘が少なくな い。このような単純な日本語のミスは第三者の校正専門者のチェックを経て修正されるべきものであるが、日本語版のあとがきにおいて「(松岡と下訳チーム が)自分たち自身でチェックを入れた」と書かれたことがあるように、訳者が校正を兼ねており、体制に根本的な問題を抱えているといえる。 どのような翻訳作品でも多少の誤訳や、原作とイメージが異なる訳語・表現などがいくつかあるのはある程度、しかたのないことである。しかし、松岡によるハ リー・ポッターの翻訳はそのような不適切な訳、あるいは日本語としてすら不適切な表現が野放しにされているため、文章の巧みさでも高い評価を受けている原 作とはかなり雰囲気も質も異なったものとなってしまっていることは否めない。

以上のような誤訳・日本語の誤用など、日本語版を刊行するに当たっての翻訳にまつわる問題についてはさまざまなところで批判されており、ハリー・ ポッター・ファンを子供に持つ保護者の中にはこうしたベストセラー作品で間違った日本語が多く使われていることに対して懸念する声も強い。また読者カード などを使って静山社に不満を直接訴えた読者もいるが、改善の気配は一向に見られないどころか、過去のいくつかのインタビューで誤訳批判について質問された 際には常に「翻訳についての批判は受けた事がない」との発言を繰り返し、世界的ベストセラー作品の翻訳を請け負っていることに対する静山社の企業としての 姿勢について問題視する声も強い。

[編集 ] その他の問題

  • 第4巻以降、返品を不可とする「買い取り制」を強いているため、経営体力のない中小書店には厳しい。この点については、発行元である静山社自体が小さな出版社であるため、大量発注を受けた結果として大量の返品を抱えた場合のリスクが小さくないという出版社側の事情もある。
  • 第3巻まで出版されている携帯版のあとがきで松岡が続編の内容のネタバレをしてしまい、携帯版読者から不満の声が上がった。また第3巻(ハードカ バー版)出版後の広告では「シリウスよ、星になれ」というコピーを使ってストーリーのかなり重要な部分をネタバレしてしまうなど、マーケティングの方法が あまりにも稚拙なのではないかと指摘されている。
  • 第2巻「ハリーポッターと秘密の部屋」の和訳中に、先天的疾患に対する差別的な表現があるとして66刷以降はその部分が削除されている。問題と なったのは“バンドウの泣きようかいを追い払った魔女は「兎口(みつくち)」だった”という表現。また、第6巻は予約開始時には「ハリー・ポッターと混血 のプリンス」という原題(『Harry Potter and the Half-Blood Prince』)直訳の仮称をつけていたが、出版の際には「ハリー・ポッターと謎のプリンス」に題を変更している。作中では「半純血のプリンス」と言う語 を使用している。原作者は謎のプリンス(Mysterious Prince)の訳の使用を認めているが、日本の過剰な言葉狩り であるとの批判がある。

以上で、作品の核心的な内容についての記述は終わりです。



[編集 ] 映画

ハリー・ポッターシリーズの映画化はワーナーブラザーズ が行っている。ハリー・ポッター 役はダニエル・ラドクリフロン・ウィーズリー 役はルパート・グリントハーマイオニー・グレンジャー 役はエマ・ワトソン 。2001年に映画ハリー・ポッターと賢者の石 が公開され大反響を呼んだ。その後も続編が次々と製作され、現在は5作目の製作を行っている。

[編集 ] 関連項目

[編集 ] 外部リンク

  • 公式サイト