4月6日にNTTドコモから発売されたSamsung電子製の「GALAXY Note SC-05D」は、5.3インチの有機ELディスプレイを搭載したAndroid端末。
スマートフォンとしてはやや大型だが、タブレットと比べると小型で、片手操作も行える。
このボディのサイズ感に加え、手書き入力のための専用スタイラスペンが本体に収納できるのも、Androidデバイスとしてはユニークな点だ。
グローバルでGALAXY Noteが発表されたのは、2011年9月にドイツ・ベルリンで行われたコンシューマー・エレクトロニクスショー「IFA 2011」の開催前日。
以降、1月の世界最大の家電見本市「2012 International CES」(米国・ラスベガス)ではLTE対応と北米での発売がアナウンスされ、2月の「Mobile World Congress 2012」(スペイン・バルセロナ)では10.1インチディスプレイのタブレットモデル「GALAXY Note 10.1」も発表された。
この間、GALAXY Noteは欧州、韓国、東南アジア、米国で発売され、3月末時点の累計販売数は500万台に達するという。
そしてこの4月6日には、日本国内でも販売が始まった。
電子手帳からPDA、そしてスマートフォン・タブレットへの栄枯盛衰を振り返ると、5.3インチというディスプレイサイズやペンによる手書き入力など、GALAXY Noteの製品コンセプトはかなり冒険的といえるだろう。
Samsung電子は一体どんな狙いでGALAXY Noteを開発したのか? Samsung電子の開発スタッフに、韓国・ソウルで話を聞いた。
開発テーマは新カテゴリーの開拓
特にディスプレイサイズについては、「携帯電話はすでに電話するものではなく、情報を見るものに変わった。
それならばディスプレイは大きい方がいい。
Webブラウジングやオフィス文書の編集が快適に行えるサイズの限界はどこか? GALAXY Noteの開発はそこを追求した」と振り返る。
モバイルデバイスにとっての“理想のディスプレイサイズ”は、永遠のテーマと言っていいだろう。
小さければ持ち運びに便利だが視認性が劣る。
大きければ見やすいが持ち運びには向かない。
その中間のサイズであっても“帯に短し、たすきに長し”で、どっち付かずの評価が下されることも少なくない。
キム氏は「過去、5インチクラスのあいまいなサイズの機種がいくつもあった」と指摘したうえで、さらにこう続ける。
「それが失敗した理由は、ディスプレイの大きさに見合ったバリューを与えられなかったからだろう。
ポータビリティを確保しつつ、新しいバリューをユーザーに提案しないと、このサイズ(5インチクラス)の製品は失敗する」(キム氏)
ディスプレイを作る技術や扱う情報は時代によって変遷し、どのサイズがベストなのかは常に変動する。
しかし、そのデバイスを持ちたいと思わせるきっかけが明確でなければ、あいまいな製品のままで終わるというわけだ。
言うまでもなくGALAXY Noteにとってのバリューは高精度のペン入力を実現した点であり、そのディスプレイサイズは視認性だけでなく、ペン入力を快適に行うために必要なサイズとして十分な説得力を持っている。
もちろん大きくするだけでなく、持ちやすさへの配慮も忘れてはいない。
「ディスプレイは5インチと大きいだけでなく、WVGA(1280×800ピクセル)と解像度も上げた。
それと同時に、ボディのグリップ感も高めている。
幅は90ミリを切っており、他メーカー(の5インチ超デバイス)よりもグリップ感に優れる。
携帯電話市場で売れている端末はスマートフォンが半分以上になりつつあるが、タブレットより小さいデバイスにとって、今後は持ち歩けるサイズの限界がポイントになる」(キム氏)
もう小さなディスプレイには戻れない
いわば“5インチ市場”ともいえるこのクラスのマーケットを掘り起こしたGALAXY Note。
Samsung電子のお膝元である韓国では、売れ行きがかなり好調だ。
キム氏によると、「韓国の携帯電話市場では毎日7万台の端末が販売されている。このうち6万台がスマートフォン。その半分の3万台がLTE対応の端末。そしてさらに半分の1万5000台がGALAXY Note」だという。
韓国ではGALAXYシリーズのシェアが6割くらいあるそうで、新しいGALAXYシリーズへの乗り換えがもともと多い。
それでも、販売シェアが20%を超えるとは、かなり驚異的な売れ方だ。
この人気の裏付けとして、キム氏はディスプレイサイズについてのユーザーアンケートの結果を示してくれた。
「今のスマートフォンを機種変更する場合、ディスプレイサイズは小さい方がいいのか、同じでいいのか、大きい方がいいのか。これを質問した。GALAXY S IIのユーザーは70%が『同じか、より大きいサイズが良い』と答え、またiPhoneのユーザーは約9割が『より大きいサイズが良い』と回答した。
人間は慣れの動物なので、より大きなディスプレイに慣れると、小さいディスプレイには戻れない」(キム氏)
もっとも、GALAXY Noteはそのディスプレイサイズだけでなく、ペン入力の快適さも人気の秘密だ。
なぜ、今ペン入力なのか? キム氏は「数年前に行った市場調査の結果、『ペンを使って書きたい』という答えが半数以上あった。これをきっかけに、ペン入力の開発を進めた」と明かす。
これがもう1つの開発テーマだ。
GALAXY Noteのペン入力で目指したのは、本物の紙に書いたような感覚をデジタルデバイスで再現するというハイレベルなもの。
そこで採用されたのが、日本のワコムが持つ電子ペンの技術だった。
Samsung電子では詳しい説明を避けたが、おそらくワコムの「ペナブルテクノロジー」が用いられているとみられる。
GALAXY Noteに付属するSペンは電源が不要で、軸にあるスイッチを押すことで、アプリの呼び出しやスクリーンショットの実行など、機能的な操作も行える。
採用の決め手についてSamsung電子常務で日本向け営業を担当するキム・ソンシン氏は、「ワコムの技術は業界でも定評があり、競争力も高い」と話す。
しかし、「GALAXY Noteはワコムによる(電子ペンの)技術革新で実現できた製品だが、その技術を端末に実装するには独自のデバイスや技術が必要だった。
それには過去の経験からのフィードバックが欠かせなかった」(キム・ソンシン氏)とも付け加えた。
過去の経験とは、フィーチャーフォンでありながらフルタッチ入力の先駆けとなった「OMNIA」シリーズや、Windows Mobile端末を開発してきた経験だ。
これらは感圧式のパネルが使われており比較的簡単に実装できたが、その反面ユーザーインタフェースを自然なものにするには相当な時間がかかったという。
キム・ジョンイン氏は「あの頃は感圧式で苦しかった」と、当時の苦労を忍ばせる。
その感圧式タッチパネルで培った経験と、静電式タッチパネルを採用したAndroid端末の開発で得たノウハウが、GALAXY Noteで再び生かされることとなった。
“Note”という新ジャンルの製品
GALAXY Noteの製品名も、比較的早くから「Note」に決まったという。
「デジタル機器だけど、アナログな紙の手帳のように使える。Noteという製品名は“デジログ”を具現化する名前。企画段階では無数の製品名が提案されたが、スタッフは皆早くからNote、Noteと呼ぶようになった」(キム・ジョンイン氏)
Note以外の製品候補には「“diary”という候補もあった」(キム・ソンシン氏)というが、単なる製品名でなく新カテゴリーを生み出す意味でもNoteが選ばれた。
ここに、“新しいセグメントを作る”という意気込みが見て取れる。
また宣伝活動で使われる、コミュニケーションメッセージも「Phone? Tablet? Feel Free It's Galaxy Note!」と、スマートフォンでも、タブレットでもない新カテゴリーであることを強調。
キム・ジョンイン氏は、「カテゴリーの開拓は早い者勝ち。
製品のネーミングで、新カテゴリーを確立させた。
GALAXY Noteは、スマートフォンでも、タブレットでもない。
ノートという新しいモバイルデバイスの製品だ」と自信を見せる。
だが、課題がないわけではない。
単にハードウェアを用意するだけでは、簡単に競合にキャッチアップされてしまうのがスマートデバイス市場の常。
Samsung電子ではSペンに対応するアプリを数多く供給することでエコシステムの構築を目指し、差別化を強化する考えだ。
「Sペン対応のアプリはGALAXY Noteの生命線。新しいカテゴリーの製品を活用してもらうため、『S choice』というSペン対応アプリのマーケットを用意した。現在の登録アプリは65点ほどだが、今後より多くのアプリを供給するのが我々の宿題。そのため、Sペンアプリを開発するSDKを公開し、開発者のためのサポート部隊も設立した。各国のアプリベンダーには、ぜひSペンを使ったさまざまなアプリを開発してほしい」(キム・ジョンイン氏)
また、Sペンを用いるデバイスのバリエーション展開も気になるところ。
いかにGALAXY Noteが持ちやすいデザインとはいえ、5.3インチのディスプレイが大ぶりなことに変わりはない。
例えば、4インチクラスのディスプレイを搭載したGALAXY Noteが登場する可能性はあるのだろうか。
キム・ジョンイン氏は「(GALAXY Noteは)すべてのユーザーに受け入れてもらえるような、100%の製品ではない。
片手では持て余すという問題には、今後も取り組んでいかないといけない」と大きさゆえの問題を認めるものの、「ほかのサイズへの展開は、市場の反応を見ながら決めたい」と慎重だ。
10.1インチのタブレットサイズは発表済みだが、「5インチの成功を受け、10.1インチのタブレットでも可能性があるのか拡大してみた」とのことで、バリエーション展開はまだまだ手探りという印象だった。
Samsung電子としては、サイズのバリエーション以前にSペン自体をさらに進化させるかを課題にしているという。
「製品の差別化はSペンだけではないが、ペン入力を今後どう展開するのかは悩んでいる。例えば現在のペンはボディに収納させるため、サイズが小さくなっている。
これでは力が入りすぎるかもしれない。こうした点は改善していく必要がある」(キム・ジョンイン氏)
またAndroid以外のOS、例えばSamsung電子が開発した「Bada OS」や、米Microsoftの「Windows Phone」を搭載したデバイスをSペンに対応させることは、明確に否定した。
携帯電話の新規・機種変更のお申し込みは
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