監督;水島精二
ストーリー・脚本;會川昇
総作監・キャラクターデザイン;伊藤義之
原画;ボンズ総力、川元利浩、馬越嘉彦
原作者・荒川弘に聞く 映画「鋼の錬金術師」
>「生と死が子供の頃からいつも身近にあった。酪農は人工的に産ませ、殺しもする。マンガ家になる前に酪農をしていた頃、ちょうどクローン牛の研究が盛んになった。でも原因が分からず早死にする。そこには“何か”があるのでは? そんな思いが基になった」アニメ化の際、「マンガと違う独自の結末を」と注文した。
>鎧やメカの巧みな描写とペンネームから、男性作家と勘違いされることも多いが、「三国志が好きでマンガにしたこともあるので、鎧は違和感なく描ける。メカは、農業機械を日常的に使っていたから」と笑う。
どのような作品を描くことができるか、若者よ書を捨てて外に出ようとまでは言いません(むしろ書をもっともっと読んで欲しい)が、何かを伝えたい、描きたいという強烈な意思を秘めた先生には素直に頭が下がります。それにしても私はこの記事を読むまで男性だとばかり思っていましたよ、こういう人材こそ少女漫画界に三顧の礼でもって迎えるべきだとつくづく思います。何度でも記しますが新たな血を入れること(多様化すること)それが少女漫画の隘路を打破する必要条件だと思います。「鋼の錬金術師」を支えるのが圧倒的に女性であるということ(これは劇場で肌でもって体感しましたよ)、少女漫画とは決して恋愛漫画なのではなくて、女性が支持する漫画なのだと思います。
>「連載開始時からもう決めてある。早く描きたいし、見せたい。楽しみにしていて下さい」
逆算でもって作品を組み立てている作家は今どれほどいるのでしょうね…限りなく遠い目。
全国週末興行成績 2005年7月23日&24日
>新たに封切りとなった新作では、まず「鋼の錬金術師」が3位にランクイン。公開2日間の成績は、動員で約18万人、興収およそ2億2500万円というもの。これは、今年の「コナン」のおよそ80%の出足となり、最終的には20億円オーバーも狙える好スタートとなった。漫画はスクエニのコミックガンガン、TVアニメは毎日放送と、何やらサードパーティーぽい出自の本作だが、もちろん、シリーズ化は既定路線。松竹としては待望のドル箱シリーズをやっと手にした感がある。
シリーズ化???今回の内容だと一応その後を作ることは可能だと思うけれど、錬金術を使うには無理があるし…。「ナデシコ」のように続編が囁かれながら次第にフェードアウトしていくというオチじゃないの?少なくとも會川昇氏に限ってそのようなぐだぐだになるのがみえみえの仕事を引き受ける筈がないと思います。
41 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/24(日) 22:13:09 ID:J1LNAybI
■水島監督インタビュー(DVD付き)より
・アニメ化の話を聞いたとき、原作は知ってたけど当時はまだ3巻ぐらい
・3巻より先は、水島の「オレ鋼」(初期設定の印象からダークなストーリーを妄想したらしい)
・會川を誘ったのも水島。ただ当時はアニメと原作を話そうという意識は無かった。
・製作するうちに、「原作と方向性が違う」ことに気づく。
・ぶっちゃけ先行き不明な原作に依存できなくなったので、逆に原作無視の方向に(30~30数話以降)
・完全に原作を下敷きとしてたのは、単行本の3巻、アニメだと25話「別れの儀式」まで
・ストーリーが原作から離れていくのは、35話「愚者の再会」のラストがルジョンと出会う話から
・そういうわけで、ホムンクルスの個体差を表現しつつ、どう決着をつけるか、ナタをふるった
・テレビ版のテーマは「生と死、愛と欲望、政治と権力」など一般に扱いづらいテーマ
・これらのテーマは原作にもあった要素。それを水島と會川が膨らませた。
・映画は原作の影響は全く無く、アニメの延長の100%オリジナルストーリー
・スクエニの人や荒川先生もシナリオを読んでもらった
・映画の目的「兄弟の話、特にエドの苦悩の表情を劇場のアップで見せてやる(笑)」
雑誌 『アニメーションRE vol.1(能登かわいいよ能登大特集)』より
テレビ版の最後では、門の向こう側と、こちら側(それぞれが私たちの世界とアニメの世界であるという衝撃的な結末)の世界それぞれでエドとアルが生きていくという衝撃的な結末で幕を閉じました。劇場版を見たときそのラストが劇場版を念頭にいれて時代設定を緻密に計算していたことが分かります。
以下、ネタばれ多数なので未視聴な方は注意!!!
ナチスを軸に据えたパラレルワールドの時代設定の強みは、ナチスが錬金術と世界一の科学力の狭間で揺れ動いた妖しい帝国であったこと(ロンギヌスの槍を出しても自然)、ロケットの使用(後にV1号ロケットとしてロンドンを始めとする各所の爆撃に用いられます、それは始めにハスキソン、ハイデリヒに対してエドが指摘したことをなぞる史実です)、ジプシー、ユダヤ人など異民族に対する迫害、物語を前へと推し進める時計の役割を果たすミュンヘン一揆…そしてハスキソンが持ち出した核爆弾(これがシリーズ化するとしたら次の物語の核になる?)とまさにナチスというエキスを絞りきって利用しています。
作画的にはやっぱり動が激しい、冒頭のハスキソンと兄弟の対決、序中盤に挟まれたエンヴィー捕獲、ラースvsグラトニー戦、そして最後のエッカルト戦が凄かった。とりわけグラトニー戦の動画の切れは瞠目。
216 名前:メロン名無しさん 投稿日:2005/07/28(木) 00:53:27 ID:???0
ハガレン見てきた
中村パート(多分)は迫力あったがせっかくの作画的見せ場がグラトニー対ラースってのがな・・そこだけずば抜けて凄いのに場面的にはほとんど盛り上がらなくてちょっと寂しい ラストのエド対姉ちゃんは、最初が馬越で後半が中村、でいいのかな なんか全体的には確かに低調に感じたな
私は全体的に作画水準が高かったと思います。ただどちらかといえば静的画面が多いので、その分戦闘シーンでははっちゃけたという印象が残りました。
で、本編なのですが今回のテーマはテレビシリーズのテーマでもあった生を等価交換で得るために払う犠牲とは(そしてそのようなものはない)について、払った犠牲を贖う物語となっている。術者の現世界からの別れと本人の記憶と何万人もの死の上に身体を取り戻したが、喪失したものを取り戻すことと贖うこととはまったく違う(特に命は)。そして、命以外のものを取り戻そうと足掻いた結果、積みあがるのは新たな屍の山。悪意があったわけではない、ただ取り戻したかったそれだけなのに。そして結論は、人は意図するところの有無に関わらず犠牲を世界に強いること、そして代わりにその犠牲から目を背けず生きていく、ただそれだけ。そのことにホーエンハイム、(イズミ師匠)、エド、マスタング、アルの順番に気付いていく。
もう一つのテーマは異なるものに対する恐怖について、それは本作のヒロインであるノーマがジプシーであるという社会的属性から受ける迫害、あるいはその異能をもって受ける偏見、そしてエッカルトが殺戮に乗り出す動機にみられる。ただ最後のエッカルトの動機付けに関してはかなり強引なものを感じた(私はエッカルト=ハスキソンであると考えていたので物理による錬金術に対する復讐こそが動機であろうと予測していた)。今ではジプシーは差別語としてロマが用いられている、その意味が「人間」であるということ、作中でも触れているがどこにも属さないただ「人間」であるという矜持がその他の民族から見れば異物として迫害の対象となり、やがては自分たちの国を持ちたいと願うさまは、あえてナチスを設定として利用している以上イスラエル建国にいたるその理屈を念頭においてのことと考えます(ただナチスによる迫害がイスラエル建国をなんら正当化しないことはハンナ=アーレントが指摘する通りです)。ただ、異なるものに対する恐怖、不寛容これこそがおそらくこの作品のメインテーマであったであろうことは、繰り返し繰り返し迫害の場面を見せることで窺えます。その答えはもう一つのテーマといえます。
もう一つのテーマは人は一生という旅を続ける旅人であるということの自覚だといえます。それは故郷で待つウィンリィではなく、旅を続けるノーマを選んだこと(結果的にであれ)。アルとエドの記憶、絆とは旅そのものであったことにみてとれる。つまり、孤立を恐れず、どこに属することも無く「人間」であるという矜持でもって生き続けること(第1のテーマでもあります)そのことが答えなのでしょう。答えはどこかにあるのではなくて、過程そのものであるということです。そしてそのことが必ずどこかに波及することまさに『世界と無関係でいることはできない。』例えば、この後贖罪の旅を続けたとしても、史実として核爆弾の使用という人類史上に残る悲劇は避けられない。『何かを得る為には、同等の代価が必要になる。』 繰り返し繰り返し述べられてきた言葉は劇場版の無関係ではいられないという言葉とあわせてはじめて世界の真実を照らすことになる。つまり、真の結論は例え何かを得ようとしようが、しまいが、ランダムな大きさの犠牲を払うことになるという不条理です。
また、隠されたテーマとして人生とは何かということについて今までのテーマを総て相対化してしまうような価値観もハイデリヒ、マブセを通して呈示されています。ハイデリヒはその後のロケットの戦争への転用、自分の死をも呑み込んだ上で生きた証を、エドの夢の住人ではないという証としてロケットの製作に命を賭けます(オートメールのアルと病弱のハイデリヒが対の存在とは皮肉にもほどがあります)。マブセはパラレルワールドという白昼夢を自分のものとして受け入れた上で道化として生きることを選択します。映画作りとは新たな白昼夢でもって現実という白昼夢を相対化する行為です。両者ともに世界を割り切って受け容れているという点で同様です。逆にエドの世界とは悲しみ、楽しむ生きている人々の総体であり、精一杯生きて死んでいくものと、墓参りのシーンで終える姿とは対照的です。
最後にまったく異なる映画の見方もあげておきます、それはウィンリィの恋愛物語として見ること。常に肌身離さず、何年もの間の成長をも計算に入れて整備したオートメールを持ち歩いていた果てに得られたのはさよなら…『もう待たせてくれないんだね。』 この科白の重さに浸るだけでも充分だと思います。
122 名前:名無シネマ@上映中 投稿日:2005/07/23(土) 15:28:44 ID:xG/aGsQM
パンフの會川昇のコメントワロスwww
絶対種死にあてつけてるな
129 名前:名無シネマ@上映中 投稿日:2005/07/23(土) 15:49:21 ID:2gNkmRE4
>>122
ここのことか?
>(前略)そういう状況の中で、国の威信や自分達のプライドを取り戻すために一般市民のほうが、次の戦争を望んでいるという雰囲気があった。国の上の方に産軍共同体みたいな“巨悪”があって一般市民が騙されるというありがちな構図ではなくて、個々人の思いや欲望のようなものから戦争は起きるんじゃないかということです。(後略)
確かに種死への皮肉っぽいな。
そんな浅薄な次元ではなくむしろ、「サクラ大戦」の劇場版が9.11に対するメッセージに偶然なったと喜んでいた広井王子氏と違って、現在の世界情勢に対する痛烈な政治的メッセージを意図的に組み込んだと考えるべきでしょう。それは冒頭に引用したインタヴューのまとめが傍証となるでしょう。
679 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/26(火) 21:41:38 ID:fAcu5QWx
あーよく○○でFAってレスを見かけるけどフルメタルアルケミストって意味だったのか
682 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/26(火) 21:51:31 ID:RTxqQdVO
>679
ちょっ…!wwお前っマジで笑わせんなwww
腹いてぇっ…w
683 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/26(火) 21:53:39 ID:fAcu5QWx
>681
FA=フルメタルアルケミスト=人体練成=(真理=ファイナルアンサー(同義語))
FAの正確な薀蓄を錬成することに成功しました!!!
705 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/26(火) 22:52:50 ID:0CRsilBa
また当分ハガレンみたいなアニメ出てこないだろうなぁ・・
展開がわからない続きが気になるアニメ。しかも原作とはまったく違うオリジナル展開でよくできてるアニメ。エヴァも当時ハマったなぁ・・
706 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/26(火) 22:54:15 ID:FVOef0IS
展開がわからないけど続きは気にならないアニメはたくさんありそうだな
707 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/07/26(火) 22:56:48 ID:0CRsilBa
>>706
そりゃあ たくさんあるでしょ
100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2005/08/05(金) 20:54:26 ID:AB8/Hqkm
今日会社の営業さんが、子供にせがまれて鋼映画見てきたと言ってたんだけどさ「おじさんの子供の頃は、アニメの主人公は強くなって悪い奴を倒すか面白いことをやって笑わせてればよかったんだよ。最近の主人公は大変だね…」 と言ってた。なんか色々考えさせられた
単純に悪を倒す物語のアンチテーゼとして、ひたすら内面にライトをあてる物語、セカイ系が猛威を奮いました。そのような風潮に対する異議申し立て(正反合といいましょうか?)を明確に意図してこの作品が作られたというその試みは見事に成功したと思います。
- 管理人@kkさんいつもコメントありがとうございます。ハガレンの面白さについて全く同感です。主人公が進んで自分の責任(厳密にはそうとはいえないものも)を引き受け、傷付いても傷付いても前進をやめない姿勢には非常に共感を覚えます。ナルトのような典型的少年漫画は苦手(アニメも切ったし)なのでノーコメントで。
この種のファンタジー作品はかつての(←ここ重要)エニックスが開拓してきた分野です。詳細は以前紹介させていただいた「たかひろ的研究館」に詳しいと思います。→http://www.geocities.co.jp/Playtown/9191/index.html
>コミケ辺りと絡めると面白いものが見えてくる気がします。僕はその筋に詳しくないので、よくわかりませんが。
私もコミケには全然詳しくないですが、どの辺りを絡めるのか面白そうなのでもう少しヒントください。テーブルトークRPG? - commented by 遊鬱
- posted at 2005/08/14 22:30
- ハガレンの面白いところって、「自分の人生は自分の責任で決まる」って、ストーリー(等価交換の原則)が訴えてる所だと思うんですね。
その1点があるから、変なトラウマ語りに陥りやすいナルトよりずっと優れているはずなんですけど、一般的な評価はナルトのほうが高いみたいです。残念。
>作者が女性
僕もはじめて知りました。女性キャラが類型的にしか描けてないから、男だとずっと思ってたんですが。
この人ってファンタジー漫画の文法で描いてますよね。昔(80年代~90年代初頭)ならこういう人は女性誌でファンタジー漫画を描いていたはずです。
こういった変化は、エニックスが切り開いてきたとも考えられますけど、コミケ辺りと絡めると面白いものが見えてくる気がします。
僕はその筋に詳しくないので、よくわかりませんが。
- commented by 管理人@kk
- posted at 2005/08/14 01:16