坂元章教授、かく語りき! | あざみの効用

あざみの効用

或いは共生新党残党が棲まう地

『サブリミナル効果について最も心配された問題―――商品や政治家のサブリミナル広告によって、消費者や有権者が意識しないまま、特定の商品を買ったり、特定の政治家に投票してしまうこと―――は、心配する必要が比較的少ないことを意味している。サブリミナル効果を、現実場面で、しかも行動にまで及ぼすことは難しいからである。

 以上をまとめると、サブリミナル効果が存在するかどうかという問いに対しては、次のように答えることができる、サブリミナル効果は、確かに存在する場合があると言えるが、それがどのような場合に存在するかについては、十分に解明されていない。ただし、サブリミナル効果が、現実場面で、しかも行動にまで影響を及ぼす可能性は小さそうである。』

           坂元章(他)「サブリミナル効果の科学」

バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守るために 第9回(最終回) の議事要旨が公開されました…。その最終回についてをあげる前に、委員会でもって相関関係と因果関係の区別もつかない専門家であったことを坂元先生に暴かれた岡田尊司の小説 について抜いてメモしたように、いや、まったく反対に謹んで坂元教授の著書からメモさせていただこうと思います。

その前に、ついに「Newsweek 日本版」(2007.3.7発行)でゲーム脳批判の記事が掲載されたので記録しておきます。

◆「とんでも科学に踊らされる人々」~トレンド モーツァルト効果、マイナスイオン…世界中にあふれる「ニセ科学」と、だまされる大衆心理~

>学者でマジシャンでもあるジェームズ・ランディは、いわゆるニセ科学の商品や主張の信憑性を科学的に実証した人に100万㌦の賞金を贈る基金を設立した。しかし今のところ、誰一人としてこの賞金を獲得できていない。「エセ科学商法は人間を破滅させる」とランディは言う。「エセ科学商法は、消費者の金も心も奪い取ってしまう」

この特集記事においては、ほかにもいろいろと総攬的に紹介していますが、日本の事情と称して水伝と並べて大きくコラム記事を組んでいました。↓

◆「空気とゲームと科学の相克」~日本 テレビでの捏造が糾弾される一方で、市場や学校で疑問の声が上がることは少ない~(山田敏弘

>科学としての位置づけが疑わしいものが、都合のいい教育の道具として転化するケースはほかにもある。とくに注目を集めたのが、日本大学文理学部の森昭雄教授が02年刊行の著書『ゲーム脳の恐怖』で提唱し、大手紙や新聞社発行の週刊誌なども取り上げた「ゲーム脳」だ。森の主張によれば、テレビゲームばかりしていると脳の前頭前野が機能低下に陥るという。だが森の理論で示されている脳波に関するデータには問題点が多く、そこから導かれる結論も妥当ではないと批判する専門家が多い。

正確にはマスゴミ「も」ではなく、マスゴミ「が」取り上げた、共同正犯の関係ですけれどね。

>引きこもり研究の第一人者で精神科医の斉藤環は「脳波の測定方法が適切でなく、信頼性のないデータで構成されていて、科学の体をなしていない」と指摘する。「まちがった偏見を大人に植えつけ、結果として青少年にも押しつけることになる」親が子どもにゲームをあてがい放置していたいわゆるネグレクト状態にあった家庭では、その子供が問題を起こすと、親の責任放棄の言い訳に「ゲーム脳」が使われたこともあるという。

>「結局親が利用しているだけではないか」と、脳研究の第一人者である京都大学の久保田競名誉教授は言う。『ゲーム脳の恐怖』の刊行後、森がアメリカの神経科学会で行った学会発表によれば、森は「アメリカの学会ではゲーム脳らしいことには何も触れなかった」という。「論文すら出していない自作の脳波計で測定し、複雑である脳波が取れているのかもわからない。脳の働きが悪くなるという研究内容を論部なりで公表しないことが科学者として不誠実であり、証拠を示せていないといわざるをえない」

森氏もアメリカで恥じ晒すほどの勇気はなかったみたいです。

>森は本誌の取材に対し、「提言としてこういう現象があるから、(ゲームをする)時間を極力制限すべきだというのが、『ゲーム脳の恐怖』の根本」と語る。斎藤や久保田が指摘する測定方法の問題点については、「医療機器メーカーの元技術部長と一緒に作った脳波計を使ったのでまったく、まったく問題はない。よくわかっていない人が批判しているだけで話にならない」と、森は反論する。「今も内容には自信をもっている。毎日4、5時間ゲームをやり続けた人で優秀な人がいるというデータがあれば、逆に証明してほしい

森氏のゲーム脳に関する主張は、全称命題なんだ!?つまり、一人でもゲーマーで優秀な人がいれば放棄される類のものなんだって森は論理学すら理解していない可能性について!とにかくNewsweek(*^ー゚)b グッジョブ!!で、どうしてゲーム脳のようなエセ科学が信じられるかについては、冒頭でぬいた坂元教授らの本のコラムが参考になるかと↓

◆コラム2「なぜ信じられる?サブリミナル効果」(森津太子

>ブランノンとブロック(1994)は次のような人間の心理的傾向が、サブリミナル効果が信じられ続けるのに貢献しているのではないかとしている。

1.好ましくない結果は、外的な原因に帰属されやすい。
>そういえば、サブリミナル刺激が存在していると言われる広告には、お酒やタバコなど体に良くない嗜好品が多いように思うのは、気のせいだろうか。

2.長い間信じてきたことは、それに対抗する証拠があっても、そのまま信じ続けられる傾向がある。
>サブリミナル効果があるとする主張や証拠が提出され(例えば、コカコーラ実験、キイの著書)、さんざん大騒ぎされた後、効果を否定する証拠が提示されるが、結局は初めの主張のみが記憶に留められるという経過をたどっている。そして、そうこうしているうちに、また新たなサブリミナル効果を支持する「証拠」が提示されるのである。

3.人間には、本来、意味を持たないものにも、何かしらの意味を求めようとする傾向がある。

4.ある信念や態度がどのように形成されたのかということに対して、われわれは無頓着である。

5.何かが存在したら、それは効果をもつからに違いないと信じてしまう傾向がある。
>「サブリミナル広告が存在する」ということは、「サブリミナル効果がある」ということと同義ではない。


以下、「テレビゲームと子どもの心―子どもたちは凶暴化していくのか? 」(著)坂元章 (←ものすごく平易な文章で読みやすく、新書化してもらいたいほどの一冊)からたんたんと引用させていただきます。

●【はじめに】より
研究者でさえ、単純なテレビゲーム悪影響論を根拠の薄いまま主張することが多々ありました。そして、それがジャーナリズムの手に渡り、さらに針小棒大に扱われてきました

さらっと事実としてものされていますが、文章内容はかなり辛らつです。

>テレビゲームは、いうまでもなく、単に娯楽を与えるだけでも、懸念材料になるだけのものでもありません。これがもつ人を引きつける技術は、教育、健康、心理臨床など、様々な分野で有効利用されるべき潜在性を秘めています。憂慮すべきは、むしろそうした有用性があまり指摘されずに悪影響論ばかりが強調されていることです。

ゲームの(部分的)善影響論の旗も同様に掲げよという熱い、こちらこそ坂元教授が本音の部分であろうことは、以前コメント欄 で、紹介した坂元教授(編)「インターネットの心理学」を!!!

●【第一章 5年サイクルで繰り返す悪影響論】より

悪影響論を裏付ける3つのロジック
①プレーヤーの暴力が報奨される
②プレーヤーが暴力をふるうことに慣れてしまう
③仮想現実(バーチャル・リアリティ)の場面が、日常の現実場面と類似している
>テレビゲームの悪影響論は、強い社会的影響力をもっていますが、しかし、実のところ、この悪影響論はどこまでが正しいのでしょうか。

【第二章 「ゲーム脳」は本当に恐怖なのか】より
>テレビゲームの使用中は、単純な計算をしている時よりも脳の活動範囲が狭く、活動レベルも低いという結果が、2001年に東北大学教授である川島隆太氏らの研究グループから報告されました。

>川島氏らの研究は、10代の大学生をふたつのグループに分け、一方には全身を使うタイプの任天堂のゲームを、もう一方にはひと桁の足し算を続けるクレペリン検査を30分間行なわせ、その時の脳の活動部位をPET(陽電子放射断層撮影装置)で測定したものです。この結果、分かったのは、足し算をしたグループでは、脳が広範囲に活性化して活動レベルも高かったのに対し、テレビゲームをしたグループでは、視覚野と運動野の活動のみが高く、特に前頭前野の活動レベルが低かったということです。

>川島氏は実験結果から、脳の活動レベルが低いテレビゲームよりも、活動レベルが高い計算などの基本的学習をするほうが大切であることを主張しました。川島氏の主張は、テレビゲームの悪影響を特に強調したものではありませんでしたが、マスコミはそれをテレビゲームの問題として取り上げ、その結果、大きな反響を呼ぶことになったのです。

その川島教授と任天堂の組み合わせがその後、脳トレでもってゲーム脳をぶっ飛ばしたのは、これを皮肉な展開といわずして何と呼ぶのでしょうね。任天堂の深謀遠慮に平伏です。

疑問点
①実験結果をほかのゲームソフトにどれだけ一般化できるか
>例えば、国内でも人気の高いRPG、シミュレーション、パズル、アドベンチャー、戦略ゲームなどは、かなり高度な思考力が要求されるゲームに属します。

②テレビゲーム遊びとの比較対象が計算作業になっている
>川島氏の別の研究によると、クラシック音楽を聴いている時、脳活動はあまり盛んではなさそうです。もし、クラシック音楽の鑑賞が比較対象であれば、テレビゲームはそれほど悪くないという結論になるかもしれません(なお、クラシック音楽の研究結果からは、「クラシック音楽は子どもの脳の発育不全を引き起こすので、子どもから遠ざけましょう」という類の主張はみられていません。テレビゲームの場合とは、大きな違いになっています)。

この痛烈な皮肉!!!

③研究結果から子どもの脳の発達を論じることは可能なのか
>この実験では10代の大学生が被験者に選ばれていますが、前頭前野のシナプスの密度は生後1~3ヵ月頃に一時、急増した後、1歳前後~5歳頃まで一気に増えてピークを迎えます。この後は、余分なシナプスの摘み取りがはじまり、16歳頃までに25%ほどが徐々に減少し、16~20歳の頃にはピーク時の約半分程度に減少して、前頭前野の発達は完成するといわれます。被験者である大学生の場合、脳はかなり完成しているため、その実験結果に基づいて、発達途上にある子どもの脳について論じることは慎重になったほうが良いと考えられます。

どうも脳科学の分野では、脳の活動状態からいきなり、子どもや人間の発達への影響に論を飛躍させるきらいがあるようにみえます(もちろん、全部ではないでしょうが)。

…これは脳トレでもまたしかりなんですがね。

>森氏の著作でも、子どもの発達に対する影響が検証されていないにもかかわらず、影響があることをほのめかす論理の展開が散見されます。これは、特に心理学にたずさわる人間からすると違和感のあるところです。テレビゲームが子どもの脳を破壊していくという論点のふたつ目は、ふだんテレビゲーム遊びをしている人たちにはβ波があまり出ておらず、逆にゲームをしていない人たちにはβ波が出ているという点です。しかし、これについては相関関係と因果関係が混同されている ように思います。

相関関係と因果関係の混同はこの手の論者に抽出される共通因子として、ゲーム脳「脳」の重要な構成因子ですね!

>同著で出されているのはあくまで、相関関係を示す研究結果であり、そこから先の因果関係は結論できません。

>問題なのは、テレビゲームの使用レベルと脳の活動レベルの相関性が確認できるような集計表が欠落していることです。少なくとも、科学的な論証を試みようとするのであれば、被験者をテレビゲームの使用量に応じて分類したうえで、そのうちの何人がゲーム脳の脳波を出し、何人が半ゲーム脳の脳波を出しているかなどをパーセンテージで示す必要があるでしょう

「少なくとも科学的」ってまるで森の著書が少しも科学的ではないみたいじゃないか(大 爆 笑♪)

>ほかにも疑問点があります。同著で運動が脳の活動によって非常に良いこととされていることです。実は同著で提示されている運動時の脳波のパターンは、ゲーム脳のパターンとまったく同じになっています。これについてテレビゲームの場合にはβ波の出方を下げるので脳の活動を活性化しない、つまり悪いといっており、一方で、運動の場合はいったん減少するが、その後に上昇するので良いと述べられています。同じデータであるにもかかわらず一方は良く、片方は悪いとするのは論理的ではありません

科学的でも論理的でもないとするとこれはなんなのでしょうか!

>なお森氏はゲームのジャンルをRPGとしていますが、内容はアドベンチャーに近いものです。

細かい過ちも見落としません>< おそらく坂元教授はゲーム自体に親しんでおられるんでしょうね。

●【第三章 暴力との関係を社会心理学から検証する】
>テレビゲームの研究数は、テレビと比較するとはるかに少なく、1997年以前は、悪影響を認める結果がそれほど出ていないこともあり、学術的には悪影響を肯定する見方は弱かったと私は認識しています。ところが先に紹介した(=坂元教授らの世界でも希少なパネル研究)研究結果にもあらわれているように、最近は、世界的にも悪影響をほのめかすケースが増え、研究者の考え方も、悪影響を支持する方向に傾いています。従来の研究結果を統計的に分析し、最近の結果のほうが強い影響を示していることを報告した研究もあります(=「The effect of violent video games on aggression;A meta-analysis」(Sherry,J,L2001)。

しかしながら、ゲームに悪影響を及ぼす効果があることは化学的研究結果として厳粛に受け止めるべきと。ただし、その悪影響の大きさ、またその影響が起こる文脈については詳細に見ていこうと。この点に関しては冒頭で紹介したサブリミナル効果に関する結論を読み直すべき(この点で坂元先生を短絡的に誤解する人間がいそうなので…)。

●【第四章 起こりうる悪影響を探る】
>米国の学者ゲーリー・W・セルナウ氏は、1984年に「電子友人の仮説」として、こうしたロジック(=テレビゲームの登場人物を友達とし、現実の友人関係から逃避する)を(恐らく世界で最初に)展開していますが、これは暴力性に関する悪影響論と共に、テレビゲームを有害とみなす代表的な主張のひとつといえます。しかし、この主張は支持されておらず、少なくとも高校生以下の児童・生徒に関しては、明確な因果関係を結論づける研究は今のところ見当たりません。逆に私自身は、1989年10月と翌年2月の2回、男子小学生118名を対象にしたパネル研究を行ない、

――もともと社会的不適応の傾向にある子どもが、テレビゲームに接触するようになる

という結果を得ており、そのほかの研究結果からも、そうした認識を強めています。テレビゲームは、テレビ番組と同じように、友達の間で話題になったり、ソフトの貸し借りをしたり、ゲームが上達することで尊敬され、友達が寄り集まってくるといった一面があり、これは社会的不適応どころか、むしろ人間関係を円滑にする効用といえます。

ゲームのせいで友人関係が希薄化とかいう論者はその時点で自らの無知の暴露ですなw

■1983年(米国のギップ、ランバース、ウィルソン各氏による)
12~14歳を対象とした調査研究で、テレビゲーム使用量と孤立・ひきこもりの間に相関関係はなかった。
■1985年(米国のケステンバウムとヴァインスタインの各氏による)
11~14歳の男子を対象とした調査研究で、テレビゲーム使用量と外向性との間に相関関係はなかった。
■1986年(米国のマクルーアーとミアーズ氏による)
15~18歳を対象とした調査研究で、テレビゲームをよくする生徒のほうが、そうでない生徒よりも外向的側面が強かった。
■1995年(英国のコルウェル氏による)
11~17歳の男女を対象とした調査研究で、テレビゲームでよく遊ぶ男子は学校外で友達と一緒に過ごす時間が多かった(テレビゲームが友達との交流時間を奪っているという仮説を否定)。
■2000年(英国のコルウェル氏による)
12~14歳の男女を対象とした調査研究で、テレビゲーム使用量と孤独感や自尊感情との間に相関関係はなかった。

これらの研究報告はあくまで相関関係について調べたもので、因果関係について明らかにしたものではありません。しかし、もともと「テレビゲームをするほど、社会的不適応が強い」という相関関係がないのであれば、「テレビゲームによって、社会的不適応化が起こる」という因果関係もあまりありそうにないと考えられます。

↑の一連の研究はφ(..)メモメモ

>むしろ社会的不適応化の問題は、インターネットについて当てはまるのではないかと思われます。実際にインターネットの場合には、ネット中毒や依存症にまで達し、失職、退学、離婚など、社会生活において重大な問題を引き起こすほど深刻な社会的不適応化が生じた事例がみられます。

ネトゲーの悪影響論についても別途メモ(↑でリンクを貼った岡田小説エントリーを参照のこと)させていただきました。

>保護者の多くは、テレビゲームで学校の成績(学力)が下がることを心配していますが、これについては、カナダ・マクギル大学のクレイグ・エムス氏が、それまでの研究を総覧して検証を試みています。(中略)エムス氏は、研究によって結果に混乱があるとしながら、大筋ではテレビゲームと学業成績に明確な関連は見出せないと結論づけています。ただ、私自身が小中学生を対象にテレビゲーム使用量と学業成績との相関関係を調べたところでは、小学生の場合、テレビゲームで遊ぶ機会が多い子どもほど主要学科の成績が低い傾向にあるという結果を得ています。

●【第五章 悪影響と同時に有効利用にも目を向ける】
>優れた技術はみな光と影の両方をもっているものです。例えば車は、今の私たちの生活に欠かせない必需品となっており、通勤、営業、レジャー、ショッピングなど、ありとあらゆる場面の移動手段として重宝がられています。しかし、その一方で、事故、エネルギー消費、環境汚染など、様々な問題を抱えています。2003年における交通事故による死者数は46年ぶりに8000人を下回った(7702人)と報告されていますが、それでもこれだけの人が命を落としている事実は決して無視できないでしょう。

 車の草創期のころ、もし歴史の歯車が異なり、人命の尊重が現在と同程度の重要な価値であったなら、政府は車を危険物とみなして厳しい規制を敷いていたかもしれません。特定の職業人が特定の場所を運転する場合にしか、車の走行を認めないという法律をつくることだってあり得たかもしれません。そして、それが現実化していたら、世の中はどんな様相を呈していたでしょうか。市場規模が小さいゆえにメーカーは性能の良い車を開発しない、道も敷かれない、だから世に普及しないということになっていたでしょう。

車脳批判と称して私が奥田を批判したものを上品に書くとこのようなものになります(学ばねば!)。

>米国のフェング・ディンとジョセフィーヌ・カラオの両氏は、幼稚園児47名に毎日40分、11週間にわたって、ライトスパン社の教育用テレビゲームをさせていますが、この結果、特にスペリング(綴り)などについて明らかな向上がみられたといいます。

>また、13~14歳の中学生を対象とした歴史学習に『MediEvil2』というテレビゲームを用いた実験例もあります。このテレビゲームには、ヴィクトリア朝時代のロンドンを背景にした歴史的事実が盛り込まれていますが、これを使って学んだ場合と、印刷物に書かれた同じ情報量のテキストで学んだ場合とを比較したところ、印刷物では50%程度の理解度であったのに対し、テレビゲームでは75%以上であったと報告されています。

>ほかにもテレビゲームは、空間知覚、目と手の共応などにおける知覚運動能力の向上に訓練効果があるとされており、大学生に『テトリス』というゲームで6時間遊ぶことを課した実験では、心的回転や図形合わせの能力がたかまっあっと報告されています。

>オーストラリア・クイーンズランド大学のスティーブン・シュワルツ氏は、読みの能力が通常より少なくとも18ヶ月は遅れている24名の小学生に、ダイスターと呼ばれる教師による伝統的な教育と、自作のテレビゲームによる教育をした時の効果を比較しています。

>シュワルツ氏の研究報告によれば、テレビゲームによる教育は伝統的な教育よりも効果的であり、しかも読みの能力が低い子どもにおいて特に顕著だったといいます。この研究結果のように、学業不振の子どもに教科的な内容のテレビゲームを用いた時の有効性は、たびたび指摘されています。

>リハビリテーションの領域では、脳に外傷を受けた患者さんが、知覚や注意などの認知機能を回復するためにテレビゲームを用いた場合の効果が報告されています。また、腕を伸ばすなどの身体機能の回復や注意障害(AD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に用いられるケースもあり、実際こうした研究では、テレビゲームの効果がしばしば認められています。

>不登校で児童相談所や教育相談所を訪れる子どもは、強い対人不安や対人恐怖を感じています。そのため、カウンセリングを行おうとしても、相談員と子どもが直接対面した状況では、子どもの心を開かせ、十分な話をさせることが難しく、有効なカウンセリングができない場合があります。このような時、一緒にテレビゲームをしたり、それを話題にしたりすることで、カウンセリングをスムーズに進めることができるのです。

>テレビゲームが非常に効果的であるため、相談員にとってテレビゲームができることは必須条件といわれるケースがある一方、相談員がテレビゲームに頼りすぎ、相談技量が落ちてしまうことの懸念から、むしろそれに頼らないようにすることを推奨するケースさえもあるようです。

ゲーム善影響についてはほとんとメディアで流れることがないので貴重な事例紹介でございます。

●【第六章 業界、家庭、学校、行政、地域、NPOへの期待】
①子ども部屋にゲーム機を置かない
②テレビゲームで遊ぶ時間を制限する
③テレビゲームをまったくしない日を作る
④テレビゲームを宿題やお手伝いなどのご褒美にする
⑤テレビゲームだけでなく多様な遊びや活動をするようにすすめる
⑥ほかのスケジュールを入れ、そちらに関心がいくように仕向ける
⑦子どもの年齢にふさわしいゲームかどうか、レーティングを確認する
⑧子どもにゲームを買い与える前に、インターネットなどで事前に内容を確認する
子どもが遊んでいるゲームを知るために、子どもと一緒にゲームで遊ぶ
ゲームの内容について、子どもと話をする
⑪子どもに遊ばせたくないゲームは、親は子どもの前で遊ばない
⑫知的活動を活性化するなど、できるだけ教育的な内容のゲームで遊ばせる

その上で、坂元教授はこのようなメディアリテラシーを具体的な実践としておとすことも説かれています。


『これを読み終えられた今、あなたにとっても、この男はわが友になったでしょうか。』

              塩野七生「我が友マキャヴェッリ」

【参考】(バーチャルry委員会議事要旨は総てですが、それとは別に)

Interdisciplinaryさま「誤解では?」
http://newmoon1.bblog.jp/entry/347322/ (↑に対する感想)


Comments
nobさん、こんにちわー。

「ワーキングプア」という言葉(新書の同タイトルの著書もお勧め♪)が広まって、単に若者を薄給で酷使して今の中高年の高給を稼ぎ出していることが明らかになってしまいましたからね。本当に白々しい…。

黒川さんに関してはめろめろなのでそのうち別途記事一つあげるかも(著書も読んで)w
commented by 遊鬱◆jnhN514s
posted at 2007/03/22 11:22
遊鬱さん、こんにちは。

社員に求めるのは「主体性」「課題発見力」…「若手には不足」
http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_07031311.cfm

採用する自分たちはこれらの「なんたら力」はあるのでしょうか?

黒川氏に関しては安原さんのブログを見ると、頭の中はどうなってるの?と思うほどすごい提言が出てきますね。
石原都知事はオリンピックを今の日本に夢がないからやると言ってましたけど、黒川氏の壮大な「妄想」のほうが夢があるような気がします…
commented by nob
posted at 2007/03/19 14:48
nobさん、こんばんわー。

都合のいいときだけ、リセット症候群発動ですからね。石原は反吐がでるほど嫌いですが、浅野氏に関してもゲーム規制でかの松沢知事に同調していますから別にね~と思っていたところに颯爽(笑)と現れたのが黒川氏だったというわけです。かなり真面目にその言動に注目していたりして…。

それにしてもいつのまに私が黒川シンパであることを知ったんですか!?

50 名前:名無しステーション 投稿日:2007/03/15(木) 22:34:48.21 ID:fZV2EysV
黒川が設計したロシアの金持ちクラブ
第二の都市のゼニット・サンクトペテルブルグのサッカー専用スタジアム

コメルサント紙によると、サンクトペテルブルグに建設されるサッカースタジアムの国際コンペで日本の建築家 黒川紀章の設計が採用されることになった。黒川はこのスタジアムを宇宙船を呼んでおり、完成予定は2009年。62,167人収容で建設費は$225,149,200

↑あのロシアからスタジアム一つでこれだけ分捕れる人間がいったいどこにいるというんですか!
commented by 遊鬱◆jnhN514s
posted at 2007/03/18 18:11
TAKESANさん、こんばんわ。

>ゲームを愛好する人に対する社会的認知

アニメその他を含めてオタに対する社会的認知としてもいいかと思いますが、「愛」好までいくと無理かも。既にオタはオタで自虐をもそのアイデンティティ(笑)に含めているところもあるかと思いますし…。

さらっとライト層を再び取り込んだ任天堂のように、あるいは国民全体を動員できる宮崎駿監督のような裾野の広さが、社会的認知というよりもっと自然な余暇の過ごし方としていつのまにかに受け入れられているような感じが必要かもと思っています。

統計に関していえば、因果関係を証明するということの難しさというものを分かっていないアンケートと大差ないものが大新聞レベルで横行していますからね。有意差とか相関係数とか以前の問題でしょうorz

>岩波の『科学』の3月号で、脳科学を教育に用いる事について、特集が組まれている

それはぜひぜひ、見つけて読ませていただきます!しかし、坂元先生はその冷静な穏やかなイメージとはうらはらに実はもともとかなりの猛者だったみたいですね(同時代にそして国家関係の委員に坂元先生がおられて本当に幸運でした…)。
commented by 遊鬱◆jnhN514s
posted at 2007/03/18 17:56
遊鬱さん、こんにちは。

東京都知事選、石原氏と浅野氏がマニフェスト発表
http://www.yomiuri.co.jp/election/local2007/news/20070315it13.htm

> 批判を浴びた高額の海外出張費・交際費や四男の文化事業関与などを「私の不徳。説明不足で誤解を招いた」とし、コンピューターにたとえ「私自身も再起動で出直すつもりです」と強調した。

リセット症候群ですか?

報道ステーション、 NEWS23 を見ましたが、黒川氏がずいぶん目立ってましたね。
commented by nob
posted at 2007/03/16 12:54
連投すみません…。

上のコメント、
 >差が無い事
は、差が無いという仮説が棄却された、です。じゃないと、文章がおかしくなってしまう…。
commented by TAKESAN
posted at 2007/03/16 12:29
ところで、岩波の『科学』の3月号で、脳科学を教育に用いる事について、特集が組まれているのですが、お読みになりました?
未読でしたら、一読をお勧めします。大変参考になります。
commented by TAKESAN
posted at 2007/03/16 12:05
今日は。

とても参考になります。

 >森氏のゲーム脳に関する主張は、全称命題なんだ!?

あの発言(いつも言っていますね、森氏は)は、凄いですよね。科学的方法をちっとも解っておられないとしか、言いようが無いですね。ゲームを長時間やって「優秀」な人がいたら、仮説が反証されたと認めるのかなあ…、って、そんな訳無いですよね。実験条件や個人差を根拠にして認めないのは、目に見えていますね。確か、ノーベル賞を受賞された小柴氏は、FFがお好きでしたよね。これは反証例なのかなあ、なんて。その前に、立証の責任を放棄している訳ですが…。

坂元氏の文章、文体は大変丁寧ですが、実は、かなり強烈な批判だったりしますね。なかなか威力がありますね。

 >相関関係と因果関係の混同

相関ナントカ、のあの方に、坂元氏の本を献呈したいです。

私としては、自分の所にも、何度か書きましたが、「ゲームを愛好する人に対する社会的認知」が、重要なのではないかと思っています。調べていないので、そういう研究がどれくらいあるのかは、判りませんけれど。

相関関係と因果関係の問題に関連して。「有意差」に対する誤解と言うか、拡大解釈が、結構見られますよね。有意差が出た、というのは、差が無い事、つまり、独立では無い事が示されたに過ぎないのに、強く関係しているかの様に結論してしまう、という。あれも、どうにかならないかな、と思います。
commented by TAKESAN
posted at 2007/03/16 11:50
栗さん、おはようございます。

さきほど確認したところ、まとめサイト見れましたよ。単にネット環境の問題だったのではないかと。それにたとえ心の支えが閉鎖されたとしても、自分で心の支えをつくればいいじゃないですか!日本は表現・言論の自由が保障されているし、そのインフラは整って敷居は低くなっているんですから。
commented by 遊鬱◆jnhN514s
posted at 2007/03/16 10:49
今晩は、栗と申します。
1昨日から、警察庁の『漫画・アニメ・ゲーム表現規制法』検討会問題まとめサイトが、見れなくなってるようですが。
もしかすると? 規制推進派の意図的な妨害による、サイト閉鎖の圧力を受けたかも知れません。
規制反対派にとって 心の支えである まとめサイトが閉鎖
されたのであれば、規制推進派が本格的に言論封鎖の動きを
見せた事になりますね。

ではでは
commented by 栗
posted at 2007/03/14 23:46