「いいでしょうか」

 

黙ったまま歌麿の話を聞いていたゆいが微笑んだ
歌麿に片手を小さく上げ、まるで生徒が先生に
質問するような仕草だ。

 

「なんでしょうか」

「もし皆さんがこのまま地球に残られ、生き残
 ったとしてもその後の生活は過酷です。それ
 よりは万に一の可能性に賭けてみるのは人と
 して当然だと」

 

ちらり全員を微笑みをたたえたまま一瞥すると

 

「そう、私が言いましたらいい気分はしません
 よね。自分たちの事は自分達で考える、放っ
 といてほしいとお思いになると思います。今
 歌麿さんが私と美里様に仰ったことは、それ
 と同じことだと思いますが」

 

歌麿は苦笑した。
随分辛辣な回答だったからだ。

 

「なるほど、美里さんやゆいさんの命の心配な
 ど私が考える事ではないと」

「あら。彼は私達の命の心配でなく、私達がい
 なくなった後のエポック星での心配を仰った
 のよ」

 

美里は首にかけているペンダントを握った。
ゆいも持っているペンダントだ。

 

「このペンダントはエポック星に行けば役に立
 ちます。地球で言う証明書のようなものです。
 私やゆいに何かがあってもこのペンダントを
 エポック星でしかるべき人物に見せれば、な
 んら問題はありません」

「ほう、それはまた便利なペンダントで」

「二人に何かあってもこのペンダントさえあれば、
 エポック星で困ることはありません。それ以前
 に、私達がエポック星で自分に出会うとしても、
 それは一年も先の話です。私達が戻るエポック
 星は一年過去のエポック星、そこには私やゆい
 はいませんから」

「一年もあれば歌麿さん、エポック星でも有名人
 になってると思いますよ」

 

ゆいが苦笑混じに呟くと

 

「それって皮肉がきつすぎやしませんか」

 

拗ねたように歌麿が答えた。

 

「確かに言えるわね」

 

すかさず杏が同意すると

 

「そうよな、歌麿ならあり得るよな」

 

斎藤までゆいの話に乗って来た。

 

「おいおい、私は何なんだ、調子者なのか」

「それだけ統率力があると皆さん認めていらっし
 ゃるということですよ、どうやらゆいの目に狂
 いはなかったようですね」

 

美里がこの話題を締めるように言い切った。
何度も時計をチラ見していた美里
やはり時間が気になるようだ。

 

続話→

 

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