井賀がドアを閉めると同時に、右手で大きな音がした。
どうやら鬼塚とエンジェルの戦いが始まったらしい。

「急がないと鬼塚が危ない」

佐田が一番先にドアを駆け抜けると、その後を千春、一橋と続いた。




鬼塚が銃を構え、その前には黒装束のエンジェルが両手をだらりと下げ立っていた。

「鬼塚さん」

佐田の呼びかけに、鬼塚は一瞥だけするとそのまま視線はエンジェルに向けたままだ。
千春も一橋も遅れて部屋に入って来た。

「何でお前らがここにくるんだ」

鬼塚は一橋の存在にも気が付いたようだ。

「鬼塚さん、相変わらず若いですね。考え方が」

一橋が、佐田を押しのけると、一番前に出た。
エンジェルも三人の入室を確認したはずだが、両手を垂らしたままただ、突っ立っているだけだ。

「その女は誰だ」

鬼塚が問うと

「関係者です」

一橋は多くを答えず、もう一歩前に進んだ。
それを確認すると、鬼塚は立ち位置を部屋の反対側に移動した。
三人はそれにつられ、鬼塚の方に移動したが

「それ以上来るな」

鬼塚の怒鳴り声に、全員が立ち止った。
その時だった。
だらりと両手を垂らしたエンジェルの姿がフット消えると
三人が入って来た入口の前に現れた。
そのまま中から鍵をかけると、背中をドアにもたれさせ、中の四人を見た。
どうやら、全員この部屋から出す気はなさそうだ。

千春がゆっくりエンジェルに近づこうとしたが、それを片手で止めると、その場で胡坐をかいた。
とりあえずは、すぐに襲ってくる気はないらしい。