お小夜が置いて行った短
刀を手に取った白閃。

その短刀が、まるで生き
物のように白閃の手に絡
み付いた。

「こ・・これは、、」

手の中に、突然別の人格
が宿ったかのように、白
閃を、ある方向へと導き
始めた。

「ま、、まて、、」

感覚が、剣から伝わって
きた。紛れもない、お小
夜の感覚だ。

お小夜が、白閃の身体を
動かしている・・・抗お
うとするが、かなわない


「な、、何なんだ、、こ
 れは、、お小夜ちゃん
 、、お、、お小夜、、
 どうしたんだ」

いきなり、お小夜から
(気)が送られてきた。

「う・・嘘だろ、、」

白閃は驚くとともに、焦
った。

剣がまるで、白閃を引っ
張るように、ある方向へ
、ぐいぐいと引っ張って
いく。

お小夜の意図する事は、
白閃の気に伝えられてい
る。

お小夜は、あり得ない事
をしようとしている。
冗談、、かとも、思った
が、そんな場面ではない


それに、行先は、まっす
ぐ、お小夜の意図する方
向だ。

「お鈴さん・・お鈴、、
 逃げるんだ、早く逃げる
 んだ」

自分の体が、自由に利かな
い事を悟った白閃は、慌て
てお鈴に怒鳴った。

「お鈴、、早く、この場か
 ら逃げるんだ、、このま
 までは、私は、私は、お
 主を、刺してしまう、、
 早く、早く逃げるんだ」

お小夜は、白閃に言った。

「お鈴親分を、この短刀で
 刺さないと・・」

いくら怒鳴っても、お鈴は
、白閃に優しい眼差しを向
けたまま、微動だにしない


むしろ、白閃が刺しやすい
ように、両腕を広げ、白閃
を待ってるかのように、た
たずんでいる。

お鈴も、なにがしかの幼術
にかけられたのか・・

とにかく、このままでは、
間違いなく、白閃はお鈴を
刺してしまうことになる。
 
「お小夜、正気を取り戻せ
 、私を操るのはやめるん
 だ、お鈴を刺すなど、馬
 鹿なことをするな」

そう、怒鳴っているうちに
、白閃は、とうとうお鈴の
前まで来てしまった。手に
持った短刀は、怪しく光、
刃先を、お鈴の喉仏にむけ
られている。

「よ、、よすんだ、、」

喉はいけない。腹部や胸な
ら、白閃にも手立ての方法
がないわけでもない。
回復の術は心得ている。

しかし、喉はいかん。
喉を切れば、多量の出血が
起き、すぐに絶命する。

回復の術ぐらいでは、間に
合わない。

「よすんだ、、お小夜」