ビジャレアルの大会に柏レイソルユースが招待され | 日本で活動中のサッカー監督のブログ

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バルセロナで修行してきましたが、2017年より日本で活動しております。

Youtubeでオリンピック日本代表対アメリカ戦をみて
少し暗澹たる気持ちでビジャレアルへ出発。
柏レイソルユースがビジャレアルのプレシーズンの
トーナメント大会に招待されたのですが
(なんと費用は飛行機代だけでオッケーというVIP待遇)

そもそもはキリストの復活祭期間(3月)に行われる
MICという強豪クラブや国家代表が集まるトーナメント大会で
他の強豪チームをおさえて準優勝したため、声がかかったようです。
当初クラブ方針としては国内大会がたてこんでいることを
理由に断るつもりだったらしいけど、ビジャレアル側から

「可能性がゼロになるまで待ち続けるので是非参加して欲しい」

という熱心な要請があり、レイソルユースのコーチングスタッフ陣の
強い要望もあって参加が認められたそうで。
僕は今回、選手の親御さんが観戦、兼観光されるということで
ガイドとして帯同しました。

一日目の対リバプール戦。(少しもう忘れ気味・・)
前半はガイドの調整をしていて、みれなかったものの後半はみれました。
フィジカルやスピードで上回る相手選手に対して、前線と中盤が
ハーフウェイラインから守備ブロックを形成し、
相手の中盤にボールがわたるかわたらないかの間に組織的プレスをかけ
ボールを奪うとい意識が徹底されてました。リバプールは中盤が
使えないためDFからのロングボールを仕掛け、レイソルは相手左ハーフ
の裏スペースを突くうまさや、走るスピードに手を焼くもなんとか防ぎ、
相手の攻撃を抑えてました。

ボールをほとんど支配しているのはレイソル、
ボールを奪ってもつながる可能性の低いロングボールを繰り返すのが
リバプールという構図。身体能力にまさる相手を技術や高い
判断スピードを伴った戦術眼、そして組織化された守備で上回り、
結局終われば3-0の快勝。
みていたビジャレアルファン数人からも拍手がきこえました。

2日目の対アヤックス。(これはまだ覚えてる)
相手は3-4-3のアヤックス伝統のスタイル
しかも最終ラインは日本では昔、懐かしのフラット3。
守備時には厚い中盤からプレスをしかけDFラインは高いラインを保つと
いう戦術。しかしレイソル側は厚い相手のプレスをものともせず
ポゼッションを行い前進。レイソルがポストプレーに入るところを
アヤックスに何度も狙われ、相手のラインコントロールにFWもなかなか
裏を衝けず、膠着状態になりかけました。
そこでレイソルのフラットスリー破りが炸裂。
FWと中盤の3人がオフサイドポジションにいる中、レイソルのDFかMFから
ふわっとしたパスが裏のスペースへ。当然、相手DFはオフサイドを要求。
しかしオフサイドポジションにいる選手はボールを追わないので
オフサイドは適用されず。相手DFがしまったと思った瞬間には
右SBの子が猛然とオーバーラップを仕掛けていてボールに追いつく
という寸法。うまくCKを得て、ゴール前に鋭いボールを入れました。
なぜかアヤックスはレイソルの動きに反応できず
ドフリーでゴール、レイソル先制。アヤックスが動かなければならない
状況にもかかわらず、アヤックスの中盤はレイソルの守備ブロックから
抜け出せず、せっかくDFがボールを持っているのにパスコースが
なくなり、レイソルの果敢なプレスにアヤックスがあきらめぎみで
GKにボールを戻す場面が何度もありました。
完全に主導権はレイソルが握り、前半終了。

アヤックスのユース監督は元バルサのDF、フランク・デブール。
ハーフタイムは烈火のように怒ってました。そして後半からは
5人ぐらいが一斉に交替。正直、戦術的な交替というよりも
選手に平等な時間を与えて何ができるかをテストしているようでした。
アヤックスの生命線は左右のウイングの突破にあり、実際ボールを持つと
黒人特有の爆発的な速さがありました。しかし、足元にボールを
おさめてから直線的に走るので予想が簡単で、さらにスペースのとり方を
全く知らずレイソルDFのラインコントロールにおもしろいように
嵌ってました。ハーフタイムにあんなに怒っていたのにそのプレーに
対してはなぜか、F・デブールは修正もせず、みてるだけでした。

レイソルは1本だけ集中力を欠いてクロスをフリーで頭で合わされる
場面がありましたがそれ以外は完璧な試合運び。横パスを繰り返す
アヤックスDFとボランチが顔を出せないでいる味方選手に対して
明らかにイライラしていました。
無理なパスが中盤でカットされ、そのまま少ないタッチ数、
しかし多くの選手がからみながら待望の追加点。2-0

このタイミングで僕は思わず腰をあげて、アヤックスベンチをみました。
後半での決定的な失点であり、士気や集中力が落ちやすい
一番のタイミング。僕だったら何らかのアクションを起こしますが、

「Fデブールはどんなアクションを起こすのか?」

と気になったのですが、結果はなんとノーリアクション。
テスト期間としてこういう状況で選手がどういう態度をとるのかを
見ていたのか、あるいはただがっかりしていたのかはわかりませんが、
全く動きませんでした。案の定、キックオフ後、2分とたたずアヤックスは
ボールを奪われさらに絶望的な失点。3-0

試合終了間際、レイソル側にけが人が発生し、途中交替で投入した
選手が今までの選手ほどボール奪取力がないため、一時混乱するも
吉田達磨監督がボランチをフレッシュな選手に交替したことで、
混乱が落ち着き試合終了。
美しいDFライン・MFラインの連動はチャンピオンズリーグの
MAN・Uを思い出しました。ひとつの生き物のように連動された守備
相手を翻弄するパスワークにビジャレアルファンは魅了され
ほとんど全員がレイソルに拍手を送っていました。

同じ日本人として彼らのようなチームが海外のチームを美しく
粉砕していく様それに対して惜しみない拍手をしてくれる、
ビジャレアルサポーター。スタジアムを去る際も
「すばらしいチームじゃないか!」と声をかけられたことに
同じ日本人として誇りに思いました。
しかしまだ、レアルマドリ戦、そして決勝が残っており、コーチも選手も
気を抜くような態度は一切ありませんでした。

残念ながら都合が悪く、僕はそれ以降の試合をみることができず
バルセロナに帰らねばなりませんでした。
後ろ髪引かれる思いで電車に乗り、バルセロナに到着する間際
僕が活動するクラブのL'hospitaletが見えました。

僕らも1歳上の選手たちと今シーズンは戦わなくてはいけません。
レイソルのようにフィジカル的なハンディを技術的、戦術的にカバーし
彼らのような強く美しいサッカーをこちらで実現したいと改めて強く思いました。