【怪しいおやぢ】です。

 範疇に困る話……『江戸奇譚』

 今回は、『狐妖(きつねつき)』


 狐の性は陰で、雄狐でも多くは女に化けて男子に通じるという。

 狐と通じると、その人は直ぐに死んでしまう。

 その人が死ななければ、狐の方が死んでしまうと云う。


 また狐に化かされたか、常の病か、狐のせいか、わかりづらいときは、樒(しきみ)の葉を煎じて飲ませるとよい。

 狐妖(きつねつき)だと樒を恐れて飲まない。

 実際の病気なら樒の臭気を嫌っても飲むものだ。


 また、狐だとその邪気が肩脇の皮肉の間に入って塊となり、脈の浮沈が定まらず、親指が多くは震える。

 そこで、その塊に火鍼を刺すとすぐに去るという。


 また、ある人の話で、平井家の家伝という狐が憑いたときには、肝木鉄落二味等分にして、新しく汲んだ水で煎じて用いると、すぐに去る。

 本草食鑑に云う、狐の脂を採って瘡腫打撲金傷に使うと、すぐに治るという。

 『卯花園漫録』 石上宣統(いそのかみ・のぶつぐ)