【怪しいおやぢ】です。
範疇に困る話……『江戸奇譚』
今回は、『野狐・天狐』
皆川淇園(みながわ・きえん)の有斐斎剳記(ゆうひさい・とうき)に、野狐はもっとも愚かだ、とある。
その次は気狐。その次が空狐。その次が天狐。気狐以上はみな既にその形はない。
しかも空孤はその霊は変わり、気狐よりも確かである。
天狐に至っては即ち神と化し、推し量ることさえできない。
人の中には、必要な用事のために刻限までに千里の道を行く者がある。
これは、みな天狐の仕業である。
たいてい、地から七丈五尺ほど離れた所に道があり、天狐はこの道を通って行くのだ。
天狐の如きに至っては、人に害をなすことはない。
この説は、幻術をよくする者の話だという。
『北窓瑣談』 橘春暉 より
皆川淇園(みながわ・きえん)(1735-1807年)は、京都の人。儒学者。別号に有斐斎がある。