【怪しいおやぢ】です。

 範疇に困る話……『江戸奇譚』

 今回は、『盗孤を縛る』


 丹波亀山の城主松平伊賀守殿が、ある時御仏殿を見ると、何者かがすっぽんを食い散らかした跡があった。

 いろいろと詮議した結果、狐の仕業だとわかった。


「如何に畜生の仕業と言っても、先祖代々の位牌の前で、このような仕業は到底許し難い。明日は早々に狐狩りをせよ」

 と伊賀守は怒り狂った。


 その夜、伊賀守の居間の前で物音がしたので訝しく思い、戸を開けてみた。

 と、一匹の狐を葛(かずら)で縛られており、その葛の端を二匹の狐が銜えたまま座っていた。


 伊賀守が、

「よく連れてきた。それを好きにしてよいぞ」

 と言うと、その場で噛み殺してしまったという。

 『新著聞集』 神谷養勇軒 より