【怪しいおやぢ】です。

 『類聚世話百川合海』

(るいじゅ せは ひゃくせん かっかい)から……


 「ぬ」の字の部。

 

『滑利繰利と脱出言葉』
(ぬらりくらりと  ぬけことば)


 滑利繰利は音をあてた字ですが、語感がよく出ている気がします。

 ぬるぬるしたり、絡まったりして、結局捕まえられない。

 耳で聞くことばの音が持っている意味と、目で見る言葉の形が持っている意味とを、意図的に結びつけられる。


 ふりがなという日本語の表記の特性と、同音異義語の多い日本語の特性とが、うまく結びついたものと言えます。

 と言うと、「だから日本語は曖昧なんだ」と力説する方がいます。

 

 曖昧なのではなく豊かなのです。

 それに気づかないだけの話。


 脱出言葉(ぬけことば)も、現在では、言い抜ける言葉と言う意味で、抜け言葉と言うのが普通です。

 でも、視点が違うのです。


 【抜けことば】は、言う側、言い抜けようとする側が使うことば。

 【脱けことば】は、言われる側、脱け出された側が使うことば。

 厳密な違いではありませんが、そういう語感で受け止めておくと、間違いがないでしょう。


 そう考えて、「ぬらりくらりと、抜けことば」を見ると、

 上手く誤魔化してやったという気持ちが、

 「……脱出ことば」だと、してやられた無念さが、伝わってくるような気もしますが……。